目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報

第75話 トランクルームの中 ※美嗣の回想

〔※美嗣の回想〕


冷たい鉄が背中に張り付く。意識が覚醒したのは、狭苦しい空間の中だった。

両手両足を縛られ、私はトランクに閉じ込められていた。


(クソッ……なぜこんなことに?)

朦朧とする意識の中で、記憶を辿る。

最後に覚えているのは、父の狂気に歪んだ顔、そして首筋を襲った激痛――。


クロロホルム……!


父は私を気絶させるためにクロロホルムを使った。

しかし、なぜだか私には長くは効かなかったらしい。

意識を取り戻した今、脱出の機会を逃すわけにはいかない。


幸い、私は事前に準備をしていた。

トランクの中で、両手両足を繋ぐロープにカッターナイフで切れ目を入れていたのだ。


父さん……一体何が目的なの?


怒りと悲しみがない交ぜになった感情が胸を締め付ける。

それでも、私は生き延びなければならない。


慎重に体を動かし、切れ目に指をかける。

そして――。


ガバッ!


突然、トランクルームのドアが勢いよく開く。

私は咄嗟に受け身を取るが、目隠しのせいで前が見えない。

音で状況を探ろうとするが――。


ドスッ!


激しい衝撃が頭部に走る。


視界が揺らぎ、意識が暗闇に沈んでいった。



*美嗣の回想は続きます。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?