〔※美嗣の回想〕
冷たい鉄が背中に張り付く。意識が覚醒したのは、狭苦しい空間の中だった。
両手両足を縛られ、私はトランクに閉じ込められていた。
(クソッ……なぜこんなことに?)
朦朧とする意識の中で、記憶を辿る。
最後に覚えているのは、父の狂気に歪んだ顔、そして首筋を襲った激痛――。
クロロホルム……!
父は私を気絶させるためにクロロホルムを使った。
しかし、なぜだか私には長くは効かなかったらしい。
意識を取り戻した今、脱出の機会を逃すわけにはいかない。
幸い、私は事前に準備をしていた。
トランクの中で、両手両足を繋ぐロープにカッターナイフで切れ目を入れていたのだ。
父さん……一体何が目的なの?
怒りと悲しみがない交ぜになった感情が胸を締め付ける。
それでも、私は生き延びなければならない。
慎重に体を動かし、切れ目に指をかける。
そして――。
ガバッ!
突然、トランクルームのドアが勢いよく開く。
私は咄嗟に受け身を取るが、目隠しのせいで前が見えない。
音で状況を探ろうとするが――。
ドスッ!
激しい衝撃が頭部に走る。
視界が揺らぎ、意識が暗闇に沈んでいった。
*美嗣の回想は続きます。