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69.聞こえなかった筈の音声

========= この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

南部[江角]総子(ふさこ)・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。暫く米軍に研修に行っていた。

大前[白井]紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。

芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。

用賀[芦屋]二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。

芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。


小柳圭祐警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。大阪府警テロ対策室勤務。通称佐々ヤン

指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。

デビッド・ジョンソン・・・アメリカ空軍軍曹。EITO大阪支部専従パイロット。

幸田哲夫・・・南部興信所所員。

倉持悦司・・・南部興信所所員。

花菱綾人・・・南部興信所所員。

横山鞭撻・・・南部興信所所員。

松本悦司・・東京の天童に同じく、かつて大文字伝子と闘った。EITO大阪支部武術顧問。元大阪府警巡査。


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= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


※手話通訳士は、聴覚障害者と健聴者の間で手話を介してコミュニケーションを円滑にする役割を担う公的資格です。手話通訳士の仕事は、聴覚障害者が社会参加するあらゆる場面でサポートすることです。

※四天王寺は、推古天皇元年(593)に建立されました。今から1400年以上も前のことです。『日本書紀』の伝えるところでは、物部守屋と蘇我馬子の合戦の折り、崇仏派の蘇我氏についた聖徳太子が形勢の不利を打開するために、自ら四天王像を彫りもし、この戦いに勝利したら、四天王を安置する寺院を建立しこの世の全ての人々を救済する」と誓願され、勝利の後その誓いを果すために、建立されました。

たび重なる戦火や災害に見舞われ、多くが焼失しましたが、現在の建物は創建当時(飛鳥時代)の様式を忠実に再現しており、古代の建築様式が今に残るのは貴重といえます。

中門にある五重塔は七回再建されています。

※大阪市日本橋にある黒門市場は、大阪の台所として魚市場として発展していました。明治には、約90店舗で営業していましたが、2018年時点では、約130店舗と店舗数が増えて、大阪の地域に根づいている市場でした。だが、外国人が多くなって、「地元の人は行かない」という悪評の口コミが出回っています。

※昭和33年(1958年)の開場以降、長きにわたって大阪の人々に愛されてきた「大阪・新歌舞伎座」。その跡地に2019年12月、あるホテルがグランドオープンした。


午前9時。EITO大阪支部。会議室。

マルチディスプレイに映ると、小柳警視正は、いきなり言った。

「神代。確か通訳の資格だけでなく、手話通訳士の資格も持ってたな。」

「被疑者の女性が聴覚障害者なんですか?」

「いや、被疑者でなく、目撃者だ。警察で保護・・・女性って言ったかな?」

「山勘です。すぐ準備します。」

小柳が消えると。「小町。凄い勘やな。」と大前が言った。

「チーフ。真壁が睨んでましたよね?」と小町は総子に尋ねた。

「うん。それでか。行ってらっしゃい。」小町は走って行った。

恐らく、バイク移動だな、と大前は思った。

前回の事件で、真壁と一美が、小柳と『二股不倫』していたことがばれてしまった。

居心地が悪いが、仕事は仕事、というところか。

「やっぱり、才女なんやな。コマンダー。いつかEITO辞めて京都に戻って、出世するんですか?」

「そうらしいな、ぎん。まあ、仲良くやってくれ。」

数分後、マルチディスプレイに一美が映った。

「新歌舞伎座後のホテルによじ登ろうとしている男がいます。正確には、ヘリで『命綱』着けて、新歌舞伎座を上っている映像を撮影しようとしています。道を塞いでクレーン車が駐まっています。ホテル側も大阪府庁も認可していません。大阪府庁から、緊急事態に備えて、府警を通じてEITOに出動を要請してきています。」

「了解。また、阿寒国の連中かな?勝手やな。」

「コマンダー。まだあります。」

「何や、一美。」「『四天王寺さん』の『五重塔』でロープを背負ってロッククライミングしようとしている、いや、正確に言うと、ロープを伝って降りようとしている外国人がいます。こちらは、欧米人ですね。これは、『四天王寺さん』からの、府警を通じての要請です。」

「了解。総子。二手に分かれて、人混み整理。」

「了解。」

総子達が出て行って、1時間も経たない内に通信が入り、ヘレンがマルチディスプレイに映した。今度は南部興信所だ。先日、南部興信所とも回線が繋がったばかりだ。

「大前さん。幸田から連絡で、黒門市場で正月早々、電動キックボードで走り回る連中がいるらしい。市場には、店だけでなく住んでいる商売人も多い。恐くて外に出られへん、って言ってるが、どうにかならんかな?」

「何でも屋のEITOやな。俺が行きますわ。」

午前10時半。中央区。黒門市場。

大前が、EITOガーディアンズの格好でバイクで到着すると、あちこちでうめき声がしていた。

そして、EITO大阪支部の武術顧問の松本が立っていた。

「遅かったみたいですな。」と、大前が言うと、所轄の警察官達がやって来た。

明らかに新米だ。恐らく、新歌舞伎座後のホテルの整理に向かっているのだろう。

「あんた、ヘルメットは?」「内蔵です。」

「EITOガーディアンズさん、ここは任せて、『新歌舞伎』の方に行ってやって下さい。

大前は頷くと、後は松本に任せて、難波に向かった。

見ると、クレーン車には、『ニセ』の許可証が貼ってある。

命綱は、『安物』らしく、危なっかしい。

ぎんの機転で、弥生といずみがホバーバイクに乗って待機していた。

ホバーバイクとは、『宙に浮くバイク』で、民間会社が開発、EITOが採用して改造、戦闘や運搬に使用している。

午前10時半。天王寺区。四天王寺。

こちらも、用賀と二美が、万一の際に備えて、ホバーバイクで待機していた。

総子は、稽古、あゆみ、みゆきを野次馬整理に当たらせた。

幸田、倉持、花ヤン、横ヤンが、声をからして野次馬を押し出していた。

佐々ヤンこと佐々刑事は、『張本人達』を説得しようと躍起になっているが、英語で罵っている声が理解出来ない。

午前11時半。大阪府警。ある会議室。

取り調べ室だと緊張するので、被疑者以外は取り調べ室を利用しない。

漸く、大筋が掴めた小町は、真壁に小柳を呼びにやらせた。

「元下町商会が、反社と取引するようです。時間は本日正午。会話を偶然通りかかった、二条小百合さんが『聞いてしまった』けど、そこの社員が確認し、耳が聞こえないと分かって、見逃してくれたようです。しかし、日頃『読唇術』で読んでいるので、内容を理解した小百合さんは、電動アシスト自転車で府警に飛び込んで、女性警察官にメモで伝えた、という訳です。電動アシスト自転車に乗ると罪になるか?と尋ねたので、今の所、ヘルメット以外に努力義務はない、と伝えました。本人所有ですし。」

「分かった。元下町商会には、ガサ入れしよう。」

小町は、府警屋上から、一美が操縦するヘリに乗って、四天王寺に向かった。

正午。西区。立売堀。

元下町商会には、大勢の警察官がやって来て、捜索令状を示して、所謂『ガサ入れ』が始まった。

正午。歌舞伎座後のホテル前。

クレーンから男を吊り下げているロープの一部が切れた。

時間の問題だな、と様子を見に来た大前は思った。

知人の家で着替えた大前は、群衆の中にいた。

ロープが切れた。その瞬間、ホバーバイク2台から放たれたネットは絡み合った状態で男をキャッチした。群衆から拍手が起ったが、指導していた監督は、ぎんが呼んだ警察官の1人に手錠をかけられた。

正午。四天王寺。

こちらは、ロープは切れなかったが、男は『宙吊り』になった。

用賀と二美がネットを放った。このネットは、以前の事件以来、二美が芦屋グループに発注した特殊なネットである。二台のホバーバイクから放って、空中で『合体』する。

息の合った操縦者同士でないと上手く行かない。歌舞伎座後ホテルも、ここも『初使用』である。

ネットが下方に待機した時点で、総子はブーメランを放った。

ブーメランは、従姉の大文字伝子とEITO東京本部の金森隊員からコツを教わっている。

ブーメランはロープを切って、男を下に落した。

野次馬から拍手が起った。

だが、仲間は逃げようとした。

佐々が注意しようとすると、"This is Your Sin!!" (これが、あなたの罪よ。)と佐々の後ろから言う者がいた。小町である。

小町は、小百合から事情を聞き出している間、小柳に用意させたプリントだった。

英語の文章で、法律用語(警察用語)もあるのだが、『名誉挽回』したくないのか?と小町に言われ、必死に作ったものだった。勿論、『逮捕令状』ではない。

小町は英語で連中を説諭し、佐々は合図されたので、部下と共に手錠をかけ、連行した。

午後3時。EITO大阪支部。食堂。

隊員達と、南部興信所の面々が集まっていた。

紀子と一美と真壁と二美が、芦屋グループから届いた『おせち』を配膳した。

「今日は、みんな頑張ったね。オーナーとして、『お年玉』替わりの贈り物よ。『お代わり』していいわよ。デビッド。少しは『日本のお正月』を味わって。」

三美の言葉に、デビッドは、柏手を打って、三美に拝んだ。

「私は神様じゃないわよ。」「いえ、神様です。ね、コマンダー、チーフ。」

「そうやな。」大前も三美を拝んだ。

皆も、それに習って拝み、笑いの渦が起った。

―完―



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