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72.暴れられない成人式

========= この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

南部[江角]総子(ふさこ)・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。暫く米軍に研修に行っていた。

大前[白井]紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。

芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。

用賀[芦屋]二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。

芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。


小柳圭祐警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。大阪府警テロ対策室勤務。通称佐々ヤン

指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。

デビッド・ジョンソン・・・アメリカ空軍軍曹。EITO大阪支部専従パイロット。

敷島徹・・・総子が、かつて「潜入捜査」に行った高校にいた高校生。今は介護士をしていて、宮田元准教授救出にも関わった。

友田知子・・・南部家の家政婦。実は芦屋グループ社員。

幸田仙太郎・・・南部興信所所員。


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= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


※成年式が初めて行われたのは、終戦の翌年、昭和21年(1946年)のことでした。当時は、国全体が敗戦による混乱と虚脱感で明日への希望が見いだせずにいました。そうしたなか、蕨町青年団が中心となり、次代を担う若者たちを勇気づけ、励まそうと、「青年祭」を企画。その催しの幕開けとして行われたのが、「成年式」でした〉(蕨市公式ウェブサイト「成人式発祥の地のまち蕨」より)

※1月13日の「成人の日」に合わせて、多くの自治体で12日、13日に「二十歳(はたち)の集い」が開催される。

かつては「成人式」として、「人生の節目を祝う晴れ舞台。華やかな晴れ着姿の若者たちはほほ笑ましい風景」だったが、「一生に一度の記念だから」「大人になったんだ」という高揚感からアルコールや周囲の雰囲気に飲まれ、羽目を外してしまう者も毎年出現している。

※2022年4月1日、民法改正によって成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたが、その後も多くの自治体では「成人式」を「二十歳の集い」などに名称変更し、対象年齢を20歳のままにしている。その背景には、これから成人となる高校生をはじめ、20歳での開催を望む住民の声の多さもあるようだ。 法律上は18歳で成人になるとはいえ、飲酒・喫煙が解禁される20歳を迎えれば、その解放感は格別だろう。今週末に「二十歳の集い」に参加する若者たちは、どうか羽目を外して晴れの日を台無しにすることのないようにしたいものだ。


1月12日。午後1時。EITO大阪支部。

マルチディスプレイには、例によって、小柳警視正が苦虫を潰したような顔をしている。

「『年初警戒警報2』ですか。なんで悪い習慣を、伝統のように引き継ぐんですかね?」と、大前は小柳に言った。

「成人解禁前から、タバコ吸うのも、半世紀以上の『伝統』だからな。実は、箕面市の『二十歳の集い』に爆破予告があった。府警宛てのメールだ。発信者に返信不能だ。大阪市内の案件では無いが、市長は去年補欠選挙で当選した大橋市長だ。不安がっている。万一のことがあっては、と吉本知事の肝いりだ。コマンダー、チーフ。EITOの功績所以だ。警護の応援に行ってくれ。場所は、阪大箕面キャンパス近くの『市立文化劇場』、式典は明日11時30分からだ。よろしく頼む。」

マルチディスプレイから小柳が消えると、小町が画面を睨み付けているのを大前は見た。流石にアカンベエはしなくなったが。まだ、『しこり』があるのか?

マルチディスプレイに南部興信所から入電した、とヘレンが隣の司令室から怒鳴った。

先日から、協力体制にある南部興信所ともネットが繋がっている。

画面には、所長と幸田と・・・もう1人いた。

敷島徹だ。

「敷島君は、紹介するまでもないだろう。敷島君、このPCに向かって話してくれ。隅に自分の顔が映る。」

所長に言われて、徹は言った。「大前さん、総子。中学の同級生を助けて欲しいんや。」

「何か事件に巻き込まれたのか?」総子が問うと、「名前は知本浩一。中学生の時は、陸上部で短距離選手やったけど、膝に水が貯まって手術してから、親が部活辞めさせ、阪大医学部に進んだけど、『自分の責任は果たした』って言って、ちっとも勉強していないらしい。それで、明日『二十歳の集い』で何か、やらかすらしい。知本のお母さんがメールを見てたんや。」

「爆弾関係か。」と、大前は言ってみた。「何で分かったんですか?」

「コマンダーやさかい。」と、紀子が割り込んだ。

「爆破予告があったらしい。どの道、EITOは警護に当たる。任しといてくれ。」

翌日。午前10時半。箕面市立文化劇場。

劇場の内外に、ぎん、祐子、悦子、真知子、今日子、稽古、あゆみ、みゆきを配置した総子は、ジュン、真美、美智子、真子、二美、小町と共に、阪大箕面キャンパスの出口で見張っていると、3台のトラックが出てきた。

バラバラっと、そのトラックの前に立ちはだかった、総子達。

トラックから20人位の若者が出てきた。リーダー格の男が言った。

「成人式のコスプレか?」

EITOエンジェルズ姿の美智子が口上を述べた。

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと我らを呼ぶ。参上!EITOエンジェルズ。満を持して。」

「何やと?いてまえ!!」

バットを持った一団が、EITOエンジェルズに向かって来た。

バットは持っているが、躊躇している男を、ホバーバイクでやって来た用賀が連れ去った。

ホバーバイクとは、民間会社が開発、EITOが採用し改造して、戦闘または運搬に使用している、『宙に浮くバイク』のことである。

総子達は、新型の武器『銀玉ガトリング砲』で、集団に向けて発射した。

銀玉ガトリング砲とは、昭和35年(1960年)頃流行った『銀玉鉄砲』の復刻版のオモチャをEITOがアレンジした、『急襲』用武器で、昔の銀玉が『珪藻土』であったのに対して、現在は『土に還る生分解性プラスチック樹脂』が使用されている。

彼らが怯んでいる内に、2台のホバーバイクからツインキャッチネットが発射され、集団は身動き出来なくなった。トラックには、大量の爆竹が積んであったが、EITOエンジェルズは使用する隙を与えなかった。

真子が長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、待機している警官隊に、「戦闘終了」の合図を送る、「聞こえない笛」である。

午前11時半。箕面市立文化劇場。

一美、真壁に付き添われて、徹と知本は式に出席した。

午後4時。

一美、真壁に付き添われて、知本は府警で事情聴取を受けた。


そして、午後6時半。総子のマンション。

「総子。徹君の弁護と、吉本知事の嘆願書で、知本君は『潜入捜査』していたことになった。佐々ヤンの話では、スラスラと事情を話し、勉学に勤しみ、立派な医者になることを誓ったそうや。お前、知事に手エ廻したやろ。」

「え?何のこと?」「総ちゃん、芝居、上手くなったねえ。」と、横から知子が言い、笑った。

夕食には、ぜんざいが添えられていた。

「少し早いけど、『鏡開き』しましたよ。」

「やっったあ!!あ、餅ちっさ。」

「喉詰まらせて、総子を未亡人にする訳にもいかないからね。」と、三美が入って来た。

「成程。ケチった訳やないんやな。嬉しいな。今夜、サービスしたるでえ。」

「おおきに。三美さん、腹上死したら頼むで。」

「あ、それなら遺言書、書いといてね。」

南部は、ぜんざいの餅を噛みしめた。

―完―


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