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第5話 【追憶】 故郷を奪われ追いやられた人達

隣国へのキャラバンにパパと一緒について行った私は、帰り道に差し掛かる深いジャングルの中で、パパたちとはぐれてしまった。


「ねぇ! パパー!」


『……』


「みんなー!? どこーなのー?」


『……』


気づけば、私はパパたちとは反対の方向に進んでしまっていた。

知らないうちにジャングルの奥深くまで迷い込んでいたようで、戻ろうにも、来た道がわからない。


「パパ〜! みんな〜! 誰か助けて〜! お願いだから!」


思いっきり声を張り上げて助けを求めたけど、誰も答えてはくれない。

そして……、何度もそうやって叫んでるうちに私の喉はかすれ、遂には声も出せなくなってしまった。


途方に暮れた私はふと辺りを見渡す。

すると、気づかないうちに辺りはもうすっかり暗くなっていた。


「みんな……」


私は弱々しい声でもう一度呼びかけてみる。

すると……。


『ホ?』


「え!?そ、そこに誰かいるの!?」


私は聞こえてきた声のあたりを探す。

すると……。


『バタバタバタ』

ジャングルの高い木の上から大きな鳥が飛び立つ音だった。


『ホー! ホー! ホー!』


「なんだ、鳥だったのね。

びっくりしたわ」


緊張が解け安心した私は深く息を吐いた。

そして、肩の力が抜けた次の瞬間だった……。


『ガサガサガサ!』


「えっ!?……誰!!?」


突然、藪の中から、何かがものすごい勢いでこっちに向かってきてる。


「キャア!!」


逃げる間もなく、私は思わず両腕で顔を覆った。

すると……。


『ビューン!!』

それは、弓矢が放たれる音だった。

この突然すぎる状況に、私は死を覚悟した。


『グワァー!!!』


「え、何!?」


闇夜の中を突き破るように響き渡る叫び声。

それは同時に、矢の標的が私ではなかったことを知らせてくれた。


「私……助かったの?

矢に当たったのは、さっきの鳥かな?」


『ドビダダビタダブ?』


「え?」


聞き慣れない言葉に戸惑いつつも、声の主にゆっくりと顔を向ける。


すると……。

藪の中から、手には弓矢や槍を握りしめ、

上半身裸で鮮やかなペイントをまとった男たちが姿を現した。



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