「あなたたちは……誰?
って、言葉が通じないんだったわよね」
『フンッ!』
「え……?」
目が合ったのは、筋骨隆々の彼。どうやらこの集団のリーダーらしい。
彼はゆっくりと私に近づくと、小型動物の足……たぶん肉の一部らしきものを差し出してきた。
焦げ目がついた焼き肉――臭いがする。食べろと言いたいのだろうか。
「え? これを私に?」
困惑する私をよそに、彼は何も答えず、ただそれを押し付けてくる。
その時、私は驚きと拍子抜けが同時に押し寄せ、思わず腰が抜けそうになった。
一体どうすればいいのか……場の空気を読もうと、キョロキョロと辺りを見回す。
『ウガウガ』
すると、集団の後方から私と同年代くらいの少女がやってきて、リーダーの彼が私に差し出した肉をふり払った。代わりに、艶やかな赤い果物を私に差し出してきたのだ。
「これ、私に?」
少女はニコリと笑って頷いた。
『ウイ♪』
「あ、ありがとう!」
通じるとは思わないけれど、大げさに満面の笑みで応える。
そして――。
「カプカプ……。美味しい!」
口にした果物の甘酸っぱさに、思わず声をあげた。
『クスクス♪』
果物を夢中で頬張る私の姿が可笑しかったのか、少女は声を立てて笑っていた。
無理もない。その日、私は朝から何も口にしていなかったのだから――。
「本当にありがとう!生き返った気分!
あなたって、優しいのね!」
少女は表情を緩めながら、小さく頷いた。
「そうだ、自己紹介がまだだったわね。私はガンガ・クマール。よろしくね!」
『フンガツマル?』
「それ、ちょっと違うわ!ガンガよ!」
『ガンガ?』
「そう、正解!」
『フンガ〜♪』
「あはは、まあいいわ。ところで、あなたの名前は?」
『ウイ?』
私の質問に困惑した顔を見せた彼女は、一瞬考えた後、自ら地面に膝をつき、指で何やら描き始めた。
「その文字……確かインダス文明の象形文字じゃない?」
『ウウ!』
彼女は満面の笑みで頷き、こう教えてくれた。
『カムラ』
「そう!あなたの名前はカムラっていうのね!」
『ウウー♪♪』