「カムラちゃんは、私を責めないの?」
「え、なんで?」
「だって、私は嘘をついていたし、それに……」
私の声はだんだんか細くなっていく。
「ああな。つまりガンガはあたし等の部族が戦争してる相手国の人間だと知られるのが怖かったんだろ?」
カムラはまっすぐ私を見つめながら言った。
「うん……」
「まあ、確かに最初から正直に話してくれた方が良かったかもしれないけどさ。
でも、ガンガの気持ちもなんとなく分かるんだ。
元々あたしがガンガの故郷に対してあんな言い方をしたから、そりゃ言いづらくなるよな。
むしろ、あたしが悪い。ごめんな」
「カムラちゃんが謝ることなんてないよ!
私の方こそ本当にごめんなさい」
「いいってば。ガンガは最後にはちゃんと本当のことを話してくれたじゃん」
その言葉に、私は胸が温かくなった。
「カムラちゃん……ありがとう♪」
次の日。
私はカムラに協力してもらい、部族の人たちに自分の故郷がマッラ国であることを伝えた。
正直なところ、人質にされるかもしれないという不安に、私の心臓は終始ドキドキしっぱなしだった。
でも、それは杞憂に終わる。
部族の人々の反応は思ったよりも穏やかで、それまでと何も変わらなかった。
カムラの通訳
「お嬢ちゃんの故郷はマッラだったのか。
それなら故郷への行き方を知っている仲間がいるから、聞いてみてあげるよ」
「え?本当ですか?」
通訳
「なあ、俺思うんだが、戦の時にお嬢ちゃんを敵国に引き渡してあげるというのはどうだろうか?」
すると別の男の人が怒って言った。
「危険だろ!そんなこと考えるな」
「あの、ええ〜と……」
通訳
「二人ともお黙りー!!
お嬢ちゃんが困ってるでないか」
通訳
「は、はい」
「あ、このおばちゃんね、部族で一番強いんだ」
カムラが笑いながら教えてくれる。
通訳
「お嬢ちゃんはちゃんと故郷まで送り届ける。
もちろん、あんたがね」
通訳
「えっ、俺!?何で!?」
通訳
「あんたが狩りのリーダーやろがい?
あんたの判断でお嬢ちゃんをこのアジトまで連れてきたんだから最後まで責任取らんかい!」
その場は笑いに包まれ、私は少し肩の力を抜くことができた。
こんなに和やかな雰囲気になるなんて、想像してなかった……。
「ふぅ、疲れた!通訳するのって結構大変なんだな」
カムラが肩をすくめながら言う。
「無理させちゃってごめんね。ありがとう、カムラちゃん」
その後、私はカムラと協力して部族の人たちや族長に戦争を止めてもらえるよう何度も頼んで回ったが、賛同してくれたのはカムラ一人だけだった。
「ねえ、カムラちゃん。戦争を避ける方法を一生懸命お願いして回ったけど、なかなかみんなに理解してもらえないね……」
「うん、そうだな。あたし等の部族とマッラ国の確執は相当深いから、"正攻法"じゃ解決するのは難しいかもな」
「正攻法?」
「そう。だから、あたしは考えた。
そして、とっておきの"イタズラ"を思いついちゃった」
「え、イタズラ!?」