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第13話 【追憶】想定外の人質

 マッラの戦士達はカムラの言う事にはまるで聞く耳はもたない。

 私が事態の先行きを不安に感じていると、

パパがまた何かを話始めた。


『不可触の民よよく聞きなさい。

我々は人質、いいや、生贄を用意している』


生贄? 一体どういうこと?


『そこの泥棒猫ちゃん?

君はこの子ゾウに見覚えがあるかな?』


 パパはカムラに向けてそう言うと、

カムラの大切な家族の脚を縄で縛り、自由を奪うと、目の前へと運んできた。


え、確か彼女って……カムラちゃんの!!


「くそっ、卑怯だぞ、てめーらー!!」


『いいんですか隊長?

あの泥棒猫、物凄い剣幕で走ってこっち向かって来ますぜ』


「構わん、早くれ!!」


「はっ!」


 すると、子ゾウめがけ戦士の二本の重い槍が襲い掛かる。

『ドスー!、ドスー!!』



「…………」



 ほんの刹那の出来事に対し、

両陣営の戦士達はみな会話を辞め、

ただ黙って飛び散ったその血しぶきの先をみつめている。


「キャャャー!!!」

 目の前の残酷な惨状に対して、私には怒りよりも先に本能的な恐怖が襲いかかる。

しかし、その時の無力な私には、反射的に両手で視界を塞ぎ

ただ悲鳴を上げることくらいしかできなかった。



「パーラ〜!!!!!!!!!!」

※カムラの声

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