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第9話 【追憶】族長 ②

「その料理屋さんがいったいどうしたの?」


「おばちゃんの店の壁には曜日ごとに日替りメニューの札がかけてあんだけどさ……。


月曜日 カレー

火曜日 カレー

水曜日 カレー

木曜日 カレー

金肉マソ。


な!?」


「な!?

って、そこで私に振られても……」


「日替りとは……ってイミフに思わねえ?

そこはもういっそのことくね?

なあ、ガンガもそう思うよな?」


「知らんがなー!!

それに、もっと他にツッコんであげるべきところあるよね!?」


(おばちゃん一文字、惜しい!)

私は心の中でそうツッコミを入れた。


「他にツッコんであげるべきところかぁ?

う〜ん、わからんぞ〜?

あっ、わかった! 牛丼! 

答えは牛丼だな?」


「ぷっww」


「ふぅ〜」


「な、何よっ」


「ふふふふふひひひ、ぷはっーwww」


「ちょっと何よー!

これ以上不自然に思うなんて、

それ頭おかしいんちゃいますかー

って思って 笑いを我慢しているような

そのバカにした顔ー!

キィ〜、ムカつくー!

もういいわ」


やっぱりこの娘は天然……?、

いいえ、むしろさらに上位の特殊ジョブ"ざんねん"にまで昇格してるわ。



「さて、カムラとガンガよ。お前たちが話している間に、占いをしてみたぞ」


「え!? じいじ、いつの間に!?」

カムラが驚きの声を上げる。


「そこのガンガ嬢ちゃんを故郷に帰す方法じゃな?」


「そう! じいじ、どうして分かったの?」


ガンガも目を丸くして族長を見つめる。

「さすが族長さん……、すごいですね!」


『蛇の神様のお告げによれば、家族の迎えが来るそうじゃ。それも近いうちにな。』


「本当に!?よかったね、ガンガ!」

カムラが満面の笑みを浮かべる。私も少し安心した様子で微笑んだ。

「うん。ずっと不安だったけど、そんな風に言われたら自信が湧いてきた。

ありがとう、族長さん。カムラちゃんもありがとう!」


「それでは、カムラよ。そろそろ日が暮れるぞ。家に戻らんと叔母に叱られるぞ」


「え、もうそんな時間!?

ガンガ、今日はここでお開きにしよう。

また明日ね!」


「うん、また明日!」


二人は族長のテントを後にし、それぞれの帰る道を歩き出す。



 私はこれからある人の住居に向かう。

 カムラちゃんが言うには、

このアジトまでのキャラバンの道中に私が両親と再会できるまでの間という条件で

ある一人暮しの高齢女性が私を家に泊めててくれることになったらしい。


 私が今晩からお世話になるその女性の住居と

カムラちゃんの住んでいる方向は途中で道が別れていて、

今日カムラちゃんとさよならした場所がちょうど別れ道らしい。


 今日からお世話になる女性の住居まで迷わなくてすむようにと、カムラちゃんは私の為に地図を描いてくれた。

だけど、地図を見てもなかなかみつからない。


全然みつからない。


私の不安を他所に、無情にも辺りは真っ暗になった。


私はカムラちゃんに借りたロウソクに火を灯し、

その明かりを頼りにもう一度地図を確認する。


みつからない。

と言うか、全然みつかる気がしない。


カムラちゃん、私のために地図までありがとう。だけど……。


うーん、ごめん。

なーにこの地図?

上に3歩、右に6歩とか書いてくれてるけど、

そもそも上ってどっちよー!?

 幼稚園児が描いてくれた方がまだマシと言うか、

デザインが前衛的シュール過ぎて私にはムリかも。

 え〜と何々?

次は……え〜と?


300

byどやっ(笑)


「…………。

すぅ〜、はぁー。


タヒね!!

チン・de・しまえー!!!」


ガンガは地図を手に歩き続けていた。

しかし、進めば進むほど、周囲はどんどん暗くなり、心細さが募っていく。


何度も地図を見直しながら進むも、目的地が見つかる気配はない。

手にしたロウソクの明かりが心許ない光を放つ中、ガンガの心には焦りと不安が広がっていく。


こんな暗い場所で迷子になるなんて……。

大丈夫よガンガ。あなたは出来る子。

だから落ち着いて……きっと大丈夫!


そんな時、不意に遠くから男性の声が聞こえてきた。


『アガン、ジハー!』


大声にハッとしたガンガは立ち止まり、耳を澄ませる。

声の方向を探ると、それは近くの建物の中から聞こえてくるようだった。

好奇心と恐怖が交錯する中、ガンガはそっと建物の入り口付近まで足を運ぶ。


中からは、二人の男性が熱く議論している様子がうかがえた。

声の中に何度も聞こえる単語に、ガンガの心はざわつく。


今の……"マッラ"って……?

それに"ガンダク・ラージャン"

?まさか……!


驚きと期待が入り混じった気持ちで、ガンガはその建物の外壁に耳を押し当てた。

彼らの話している内容がさらに気になり、じっと聞き耳を立てる。


間違いない!パパの名前だわ!


※蓮姫の母ガンガがマガダ国に嫁ぐ前は

マッラ国9地域の内一つガンダク川周辺を統治するラージャンの娘でした。

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