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第30話 明日"せかい"が終わるんだって①

空は赤く染まり、火山の噴煙が太陽を飲み込む。

森は灰に埋もれ、オイロス、アキア、ハルキ――仲間たちの笑顔が、絶滅の波に消えていく。


「みんな……待て、行くな……!」


蓮姫の声は風に掻き消される。

彼女の頬を、キラキラと光る涙が伝う。

その一滴は、まるで星の欠片のように輝き……そして……、



——時を越える——。


〔蓮姫→ハル〕


病室の白い壁。頬にひと筋の涙が落ちる。窓から差し込む夕陽が、涙を金色に染める。

ハルの瞳は遠くを見ているようで、何も見えていないようだった。


"明日には、君の記憶はすべて消える"



医師の言葉が、まるで突然背中に氷を押し付けられたかのように、ハルの心を震わせる。


「そんな……嘘……?」


ハルは呟くが、声は自分の耳にも届かない。


すると突然、ガチャリと病室のドアが勢いよく開いた。

革ジャンの裾を揺らし、職場の上司聡子が現れる。

職場では陰で「※口裂けBAA」と呼ばれる彼女は、ハルのミスにいつも厳しい上司だ。

※ハル調べ


でも、今の聡子の瞳には、どこか柔らかい光が宿っている。

「バカ、ハル! いつまでもこんなとこでじっとしてるつもり?」


聡子の声は、いつもの鋭さを抑え、その朗らかな表情にハルは目を丸くする。


「え……聡子主任? なんでここに……?」


「なんでって、あんたがそんなしけた顔してたら放っとけないでしょ」


聡子はそう答えると、ハルの手を掴み、強引にベッドから引き上げる。

「今から病院抜け出すよ。文句は後で聞くから、さっさと、30秒で支度しな!」


(全く、せっかちな女海賊だな)

ハルはそう思いつつも別の疑問がわく。


「え?でも……あたし、明日には——」


そんなハルの言葉を、聡子は遮る。


「明日の事は今は考え無くていいの!

とにかく今は動くよ、ハル!」


彼女の力強い声に、ハルはなぜか逆らえず、フラフラと立ち上がる。



聡子の黒光りするバイクの後ろに、ハルはぎこちなく腰を下ろす。


「ほら、予備のヘルメット持ってきたからコレ被って」


「は、はい……」

ハルはまだ理解が追いつかず

半信半疑になりつつ答える。


聡子が予備のヘルメットを放り投げ、ハルは慌てて受け止める。


「あの……あたしバイクは初めて乗るんですけど……」



「ハル。あんたもしかしてビビってんの? 」


「別にそんなんじゃないですけど……」

ハルはやや不満げに目を細め口を3の字ににする。


「振り落とされないようにしっかり掴まっててよ!」


ブォンブォン!


聡子が笑い、エンジンを唸らせる。

風が頬を撫で、ハルの心を少しだけ軽くする。


ブォブォブォブォーン!


ハルはゆっくりと目を閉じる。

すると、たくさんの記憶の欠片がキラキラと浮かんできた。



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