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第31話 ねえハル? ホントはもうとっくに(私の存在に)気付いてるんでしょ?

事故をきっかけに、まるで別人のように変わってしまった少女"蘭"。

彼女と家族は今、医師に紹介された脳科学者から個室で途中経過の説明を受けている。


"蘭さんの難病、進行型記憶破損を元に戻す方法は一つしかありません"


脳科学者のその一言を受け、今現在蘭の治療は始まっていた。

それには先ず、箱庭の地球に生きるある特定の適合者と記憶を入れ替えること。

そして、人間の記憶を移しかえることが出来ると言われる古代科学遺産アーテーファクトを入手する。

最後に、適合者の脳に収まっている蘭の記憶を適合者の記憶が収まっている蘭の脳に移し上書きする。


因みに現在は適合者との記憶の入れ替えまでは完了していた。


蘭は記憶の器になる適合者の日常を観察していた。

箱庭の地球の人たちがパニックにならないように、

対象者は自動車事故で記憶喪失ということにされたらしい。


(人工知能と科学者達が創り上げた箱庭の地球に生きる)

はそれが自分の生きる道だと頑なに思い込んでいるだけだよ。


 ねえハル?

ホントはもうとっくに

気付いてるんでしょ?


 それなら尚更。


どうして?


 どうしてあんたはそんな風に命の炎を燃やしながら、

みんなの為にそんな風に泥臭く一生懸命尽くすことができるの?


 私はそんなあんたの人生の幕を都合よく終わらせようとしているのよ?


ねえ、それなのにどうして?


 どうしてがもてるの?

どうしてそんな風に、世界が終わる最期の瞬間まで、あんたは笑顔でひたむきにいられるの?



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