「なんで…どうして…」
布団に顔をうずめて、聡子は何度も呟いた。
昨日の出来事が、まるで悪夢のようだ。
いつも明るく、ちょっぴりドジなハルが、あの事故の後、まるで別人みたいになってしまった。
ハルとの出会いは、この寝具店「てろめ屋」だった。
ハルの採用面接を担当したのは聡子だった。
「ねえ、ハルさん。どうしても気になってることがあって、最後に一つだけいいですか?」
「はい、どうぞ」
「えーと、さっきから眠たそうな顔で堂々と耳の穴ほじくってるけど大丈夫?」
「大丈夫ですよ。
ほら!私、ちゃんと耳かきとウエットテッシュ持ってきてますから」
「そこじゃネー!!
寧ろ、この状況でドラえもんみたいなノリで躊躇無く耳かきを出してきたメンタルが逆にスゲーよ!」
ハルは、聡子がちょっと厳しすぎるかと思うくらい注意する子だったけど、困っている人がいたら誰よりも早く助けに行こうとする心の優しい子でもあった。
そんなハルの成長を見守るうちに、ハルはいつの間にか聡子にとって大切な仲間になっていた。
それが、今は…。
冷静沈着で、ミスひとつしないハル。
それはそれで素晴らしいことなのかもしれない。でも、聡子は心に、どこか物足りなさを感じていた。
次の日も聡子は布団から出られずにいた。
窓から差し込む朝の光が、部屋をぼんやりと照らしている。
「ハル…会いたいな」
自室のベッドに横になりながら、聡子はハルとの写真を何度も見返した。特に、新入社員歓迎会の時の写真。みんなで笑顔で写っている。
あの時のハルは、こんなに楽しそうで…
「一体、どこに行ってしまったんだろう…」
考えれば考えるほど、気持ちはモヤモヤとしてくる。聡子は、ベッドにくるまって、眠りについた。
そして、いつからか彼女は不思議な夢を見始めた。