一方その頃。
ハルは目が覚めると、自分が見知らぬ世界にいることに気づいた。
あたりを見回すと、目に飛び込んでくるのは光り輝く高層ビル群と、空を縦横無尽に駆け巡る無数の乗り物。
その光景は、自分の知る現実を大きく超えた未来都市そのものだった。
「ここ……どこ?」
ハルは喉から漏れるように呟いた。その声には困惑とわずかな恐れが混じっていた。
彼女の胸は鼓動の高まりを抑えることができない。
突然の環境変化に頭が追いつかないのだ。
そこへ、一人の少女が近づいてきた。
少女は艶やかな黒髪を背中まで伸ばし、どこか浮遊感のある笑顔を浮かべている。
「あなたがハルね?」
その声ははっきりとしていて、まるで確信に満ちたようだった。
「え、あんた……誰?」
ハルは思わず身を引きながら尋ねた。
少女は小さく微笑み、自己紹介を始めた。
「私は鈴。あなたは?」
「ハル……」
「ハルさんね?
ハルさん、こっちへ来て。
説明は後で」
ハルは彼女に言われるがまま後を追った。
目の前には見たこともない形状の乗り物が現れる。
乗り物の表面は滑らかで、未来感あふれる青い光が波打っている。
鈴に促され、ハルは恐る恐るそれに乗り込む。
すると……。
グイーン!
「わ、わぁ!!」
突然の事にハルは驚き尻餅をつく。
ドアが静かに閉まり、乗り物がほとんど無音で浮上すると、ハルは息を呑んだ。
「これ、どうなってるの??……」
ハルの頭の中にはたくさんのクエスチョンマークが浮かんだ。
彼女に問いかけるが、鈴は小さな笑みを浮かべたまま答えない。
その沈黙にはなぜだか妙な安心感があり、ハルは続けて質問する気力を失った。
そして、しばらく経つと不思議な乗り物が止まり、ドアが再びゆっくりと開くと、ハルは瞳に映る光景に目を丸くする。
そこは、まるで恐竜が闊歩していそうな古代の世界だった。
緑の絨毯のように広がる密林。
大きな水たまりのような湖。
空を悠々と舞う巨大な鳥。
すべてが現実離れしている。
「なに、これ……夢?」
ハルは思わず目を擦りながら呟いた。
鈴は驚いたハルの様子を楽しむように微笑み、こう言った。
「これは夢じゃないわ。
けど、ここで何が起きているのかは、これからあなたが知ることになる」
鈴の言葉には謎めいた響きがあり、ハルの胸には不安と期待が入り混じる。
しかし、この先に未知なる世界が待っている以上、ハルは前に進むしかなかった。