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0613第37話 メメさん

一方その頃──ハルの暮らした世界。


てろめ屋のカウンター越しに、店内を照らす温かな光と共に、メメさんがひょっこりと現れた。愛嬌のある微笑みを浮かべたその姿に、聡子は少しだけ気が緩む。


「聡子さん」

メメさんは優しく、けれど力強く言った。

「あの娘は、きっと大丈夫よ。信じてあげて」


その言葉は、心の奥深くに残る暗闇をそっと照らす明かりのようだった。

聡子の胸に小さな希望の芽が生まれるのを感じる。

窓の外に広がる街並みが、ふと優しい色彩を帯びたような気がした。


「……ありがとうございます。」

聡子は少しだけうわずった声で答えた。

両手でぎゅっとエプロンの裾を握りしめながら。


ハルの記憶が戻るその日を。

そして、あの笑顔を再び見ることができる日を──聡子は心から願っていた。



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