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第41話 マグナ

赤黒く染まった夕焼けが、空全体を覆い尽くしていた。

足元の大地は脈打つように揺れ、立っているのがやっとだ。


「ふざけるな……! これがペルム紀の終わりだっていうのか!」

蓮姫は荒い息をつきながら叫んだ。

まさか、天変地異の渦中に放り込まれるなんて――。


轟音が天地を切り裂き、黒い亀裂が無限に広がる。

その深淵から煮えたぎるマグマが牙を剥き出し、咆哮するように噴き上がった。

灼熱の風が肌を焦がし、周囲の草木は瞬く間に黒い灰へと姿を変える。


「あちっ!」

蓮姫の尻に火がついた。彼女は慌てて飛び上がり、パタパタと手で払う。

不死の呪いのおかげで致命傷にはならないが、熱さは容赦なく襲い来る。


(ったく、とんだ災難だ……)


今、足元の世界を激しく揺るがす、この圧倒的な力。噴き出すマグマの奔流。

そして、どこからともなく低く重い男の声が響く。


『……来たか、異邦の魂よ』


蓮姫は、巨大なマグマの柱を紙一重でかわしながら問いかけた。


「お前は誰だ? この時代の時の主なのか?」


『私はマグナだ。時の主? 知らんな』


「そうか……」


『私の記憶は断片的に封印されている』


「誰に封印された?」


『わからない。ただ……高貴なるお方としか……』


「なるほど。じゃあ、お前が時の主だとしても、一劫年のサイコロを出す方法も、時間を進める方法も知らないんだな?」


『サイコロ……? 時を進める……?知らんな』


「わかった……。邪魔して悪かったな。他を当たる」

そう言い残し、蓮姫は声のした方へ背を向け、静かにその場を去ろうと歩き出した。


――その瞬間。


ゴゴゴゴゴ!


蓮姫のすぐ目の前に、天を衝くほど巨大なマグマの柱が噴き上がる。


「貴様、これはどういうつもりだ……?」

蓮姫は振り返り、声の主に鋭い視線を向けた。


『まだ、話は終わっていない』


「なんだ、私はもうお前には用はないんだが……?」


『私の僅かに残された記憶には、高貴なるお方から二つの伝言が残されている。

一つはこの世界を滅ぼせと……。

そしてもう一つは……、

私の声が聞こえる者がいたら、迷わず始末するようにとな……』

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