煮えたぎる溶岩の巨人が、天を掴むかのように腕を掲げた。
焼けた鉄の匂いが鼻腔を突き刺し、その燃え盛る瞳が蓮姫を射抜く。
鎧の冷たさを指先で確かめながら、蓮姫は低く呟く。
「てめぇが、この時代を終わらせるってのかよ!」
変化の武具が光を放ち、剣、槍、鞭へと次々と姿を変え、蓮姫は猛然と攻撃を仕掛けた。
しかし、巨体は驚異的な素早さでかわし、反撃のマグマ弾が雨のように降り注ぐ。
「くっ……!」
防戦一方。鎧フォームへの切り替えに手間取っている間に暑さで肌が焼ける。
焦る蓮姫の胸を締め付ける灼熱の拳が迫る——その瞬間。
『あら、オムツが足りてないわね』
それは聞き覚えのある少女の声。
蓮姫の脳裏に直接響いたのは、あのペンダントをくれた、どこか人を小馬鹿にしたような声。
「だからオムツじゃねぇっつーの!
……って、あれ?
今、時間……止まってる?」
『やっと気づいたかしら?』
まるで世界から音と動きが消え去ったかのような静寂の中、少女の声だけが鮮明に響く。
「な、なんだ、これ……時間停止の力、なのか?」
少女の声は気だるそうに、しかしどこか楽しげに言った。
『ま、そういうことよ。
でね、あなたのその変化の武具の扱い、見ててハラハラするのよね』
『パチン!』
少女が優雅な仕草で指を鳴らす。
すると、蓮姫の意識は唐突に、深淵の闇へと引きずり込まれた――。
蓮姫がゆっくりと瞼を開けると、そこは先程までの灼熱の戦場とはまるで異なる、白一色の閉鎖空間だった。
どこまでも広がるように見える純白の空間の中は、足音すら聞こえない程静寂に包まれている。
その中央に、冷たい光を宿した瞳を持つ見覚えのある小麦色のミドルストレートヘアに白を基調としたゴスロリファッションの少女が立っていた。
現実離れした美貌だが、その表情には一切の感情が読み取れない。
「ゴスロリの服装!?
ちょ、あんたは確かあの時の……」
「あらあら。あなたの幼稚な武具の扱い、初心者のギタリストが楽器を初めて握ったみたいね!」
〔耳垢の溜まり過ぎた蓮姫の曲解〕
「あらあら。あなたの幼稚な武具の扱い、初心者のデュエリストがデッキを初めて握ったみたいね!」
「何!?」
蓮姫は食い下がる。
しかし……。
少女は自信満々にバトル理論を語り始める。
「あなたの
戦術、間違えるんじゃないのよ?」
ハッとした蓮姫。マグマの巨人の力を封じ、一気に勝負を決める策がひらめく。
「よし、メインフェイズ、開始だ!」
武具が眩く輝き、戦闘フェイズ突入!
「はっ!?まさか選択肢なし!?フン、受けてやるぜ!ドロー!!」
蓮姫は武具を構え——
「ずっと
剣!槍!盾!鞭!変幻自在の連続攻撃が炸裂!
「くっ!?無限コンボなの!?」
少女が一瞬、動揺する。
勝負は決まった——
「イテッ!」
「ちょっと、ふざけるのもいい加減にしなさいよ!」
少女のゲンコツで蓮姫の妄想は終わった。