蓮姫は、変光の
剣、槍、盾——その全てを瞬時に切り替え、攻撃と防御、そして高速回避を縦横無尽に繰り返す。
「さあ、行くぜ——!!」
蓮姫の武具が輝きを増し、鋭い閃光とともに槍形態へと変化。
目にも止まらぬ速さで突き出される槍撃——だがマグナは巨腕で受け止め、地を震わせながら反撃の拳を叩きつける!
しかし蓮姫は、すでに盾モードへと変形させ、強大な一撃を受け流す。
——ここからが本領発揮。
蓮姫は武具を高速回転させ、鞭のようにしならせることで、マグナの死角へと滑り込む。地面を蹴り、閃光の如く舞う——まるで流星。
マグナの拳が振り下ろされる——だがその瞬間、蓮姫は武具を足元へと滑り込ませ、瞬間的な加速を発動。
爆風のような速度で跳躍し、空中へと駆け上がる。
「お前の力任せな攻撃は——通用しない!!」
蓮姫は剣モードへと切り替え、一閃。
鋭い斬撃が炸裂し、マグナの巨躯に閃光の軌跡が刻まれる。
——圧倒的な速度、変幻自在の武具。
蓮姫は一瞬の間に次なる攻撃へと移行する。
鞭へと変形させ、マグナの腕を絡め取る。
そのまま勢いを利用し、槍へと変形——狙うは、マグナの膝!
「終幕だぁ——!!」
鋭い突きが炸裂し、マグナの巨躯がぐらつく。
その変幻自在の力が、確実に戦場を支配し始めていた——!
蓮姫の荒い息遣いが鼓膜を叩く。
それは、まるで戦場の鼓動そのもののように乱れ、焦燥とともに熱気が彼女の全身を包んでいた。
「はぁ……はぁっ……!
さあ、どうする?」
しかし……。
「それで終わりか?」
マグナの低く響く声には、どこか楽しげな色が滲んでいた。
嘲るような笑みを浮かべながら、その両腕をゆっくりと広げる。
「ここからが本番だ——アースクエイク!」
——瞬間。
地面が裂け、怒涛の岩が隆起する。
無数の鋭利な剣岩が、蓮姫の目の前にそびえ立つ!
「くっ……!」
瞬時の判断。
蓮姫は地を蹴り、跳躍して剣岩の嵐を回避する。
しかし——衝撃の余波が、彼女の体勢を大きく揺るがす。
踏み締めた足元が不安定だ。
崩れた岩が足場を奪い、重心が大きくブレる。
次の瞬間——。
「まだまだいくぞ——アースドリル!」
轟音とともに、新たな地獄が牙を剥く。
地磁気を操り、地中の岩を砕きながら槍のごとく突き上げる魔の技!
蓮姫は反射的に
瞬時に剣へと変形し、迫りくる岩槍を振り払い——!
ゴッ!!
剣の刃が岩を弾き、破片が空間に飛び散る。
「……何がしたいんだ?」
荒い息を整えながら、蓮姫は目を細めた。
(マグナは、なぜこの技を執拗に繰り返している?)
(ただの力任せの攻撃ではない——何か意図があるのか……?)
その疑問が答えへと繋がるのは——数秒後だった。
「アース檻!」
不穏な気配とともに、蓮姫の周囲に大量の岩石が浮かび上がる。
「なっ——!?」
刹那——!
偶然、身を翻した蓮姫の目の前——
ミサイルの一斉射撃のように、細かな岩塊が次々と集まり、巨大な牢獄を形成していく。
完全なる閉塞——逃げ場なき罠!
蓮姫は安堵しようとした……。
しかし——
シュッ!!
背後から、蓮姫の耳元をかすめる岩塊の一部。
(まさか、こっちが本命!?——回避が間に合わない!)
蓮姫は咄嗟に武具を鞭へと変化させ、振りかざす。
しかし——細かな岩塊のミサイルは、鞭の防御を巻き込み砕け散っても、なお止むことはなく……。
鋭い衝撃音とともに、無数の岩塊のミサイルが蓮姫の周囲に押し寄せた。
逃れる間もなく、岩はまるで生き物のように彼女の全身を隙間なく取り囲み、瞬く間に厚い壁となって四方を塞ぐ。
鈍い衝撃が走る——。
数えきれない無数の岩塊に容赦なく体に打ち付けられ、骨の奥まで響く痛みが弾ける。
肩に食い込む鋭い岩角、腹をえぐる衝撃、脚を押し潰す圧迫感。
息をするたび、痛みが波のように広がる。
砕けた破片が肌を裂き、乾いた砂の匂いが鼻をつく。
息苦しさがじわじわと迫る——。
岩の隙間から漏れるわずかな光が、閉じ込められた現実を残酷に突きつける。
さらに——。
「アースブレイク!」
休む間もなく突きつけられる絶望——!
轟音とともに崩れ落ちる岩檻。
それと同時に、蓮姫の身体を圧する圧倒的な衝撃——!
岩塊が砕かれ、皮膚の至る所に裂傷が走る。
血が迸り、激痛が脳を焼いた。
「っ……あぐッ!!」
最悪の負のスパイラル——。
武器モードの一時ガードは、岩塊ミサイルの初撃で解除されてしまった。
高速回避も発動できず——身動きが取れない。
「くっ……このままじゃ——!」
盾モードでは死角が生じ、防ぎきれない。
シェルターモードでは、身動きすら許されない。
鎧モード——代償として大量のスタミナが削られ続ける。
荒い息遣い。
肩で呼吸を繰り返す蓮姫。
そして、その呼吸に重なるのは——マグナの嘲笑。
「どうした?終わりか?」
マグナが歩み寄る。
地が揺れ、蓮姫の視界が揺らぐ。
「……っ!」
歯を食いしばる。
(負けたくない——でも、この状況からどう抜け出せば……? )
結界が薄れ——防御が限界に近づく。
(万事休すか——)
——その瞬間。
視界の端で、岩塊の破片が凶弾のように飛ぶ。
避ける間もなく——ゴッ!!
「っ……!!」
鈍い衝撃が蓮姫の後頭部を激しく打つ。
骨に響く痛み。脳が揺れ、視界に星が瞬く——。
呼吸が乱れ、喉が詰まる。
何かを掴もうと手を伸ばすも、力が入らない。
地に膝をつく——。
(まずい……このままじゃ——)
鼓動が異常に遅くなる。
足元が遠ざかり、身体が宙に浮くような錯覚。
戦場の喧騒が水の中のように歪んでいく——。
まぶたが重くなる。
沈む……暗闇の底へ——。
蓮姫は……意識を失った。
時間の感覚が歪んでいる——。
どれほど経ったのか、分からない。
肌を撫でる風はなく、ただ虚無がそこにあるだけ。
『……ちゃん』
(……誰かの声……?)
『カムラちゃん?』
(この声……)
——遠い記憶が微かに震える。
頭の奥で響く音。
囁きなのか、呼びかけなのか、それすら定かではない。
『諦めないで——!!』
その瞬間、蓮姫の中で何かが弾けた。
鼓動が跳ねる。
忘れられない声が、暗闇を裂く——!
蓮姫の瞳に、再び光が宿る——!