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第46話 マグナの切り札

蓮姫は、変光の武具ルミナス・トランザーの真髄を解き放つ。

剣、槍、盾——その全てを瞬時に切り替え、攻撃と防御、そして高速回避を縦横無尽に繰り返す。


「さあ、行くぜ——!!」


蓮姫の武具が輝きを増し、鋭い閃光とともに槍形態へと変化。

目にも止まらぬ速さで突き出される槍撃——だがマグナは巨腕で受け止め、地を震わせながら反撃の拳を叩きつける!


しかし蓮姫は、すでに盾モードへと変形させ、強大な一撃を受け流す。


——ここからが本領発揮。


蓮姫は武具を高速回転させ、鞭のようにしならせることで、マグナの死角へと滑り込む。地面を蹴り、閃光の如く舞う——まるで流星。


マグナの拳が振り下ろされる——だがその瞬間、蓮姫は武具を足元へと滑り込ませ、瞬間的な加速を発動。


爆風のような速度で跳躍し、空中へと駆け上がる。


「お前の力任せな攻撃は——通用しない!!」


蓮姫は剣モードへと切り替え、一閃。

鋭い斬撃が炸裂し、マグナの巨躯に閃光の軌跡が刻まれる。


——圧倒的な速度、変幻自在の武具。


蓮姫は一瞬の間に次なる攻撃へと移行する。

鞭へと変形させ、マグナの腕を絡め取る。

そのまま勢いを利用し、槍へと変形——狙うは、マグナの膝!


「終幕だぁ——!!」


鋭い突きが炸裂し、マグナの巨躯がぐらつく。


その変幻自在の力が、確実に戦場を支配し始めていた——!





蓮姫の荒い息遣いが鼓膜を叩く。

それは、まるで戦場の鼓動そのもののように乱れ、焦燥とともに熱気が彼女の全身を包んでいた。


「はぁ……はぁっ……!

さあ、どうする?」


しかし……。


「それで終わりか?」

マグナの低く響く声には、どこか楽しげな色が滲んでいた。

嘲るような笑みを浮かべながら、その両腕をゆっくりと広げる。


「ここからが本番だ——アースクエイク!」


——瞬間。


地面が裂け、怒涛の岩が隆起する。

無数の鋭利な剣岩が、蓮姫の目の前にそびえ立つ!


「くっ……!」


瞬時の判断。

蓮姫は地を蹴り、跳躍して剣岩の嵐を回避する。

しかし——衝撃の余波が、彼女の体勢を大きく揺るがす。


踏み締めた足元が不安定だ。

崩れた岩が足場を奪い、重心が大きくブレる。


次の瞬間——。


「まだまだいくぞ——アースドリル!」


轟音とともに、新たな地獄が牙を剥く。

地磁気を操り、地中の岩を砕きながら槍のごとく突き上げる魔の技!


蓮姫は反射的に変光の武具ルミナス・トランザーを握り締めた。

瞬時に剣へと変形し、迫りくる岩槍を振り払い——!


ゴッ!!


剣の刃が岩を弾き、破片が空間に飛び散る。


「……何がしたいんだ?」


荒い息を整えながら、蓮姫は目を細めた。


(マグナは、なぜこの技を執拗に繰り返している?)


(ただの力任せの攻撃ではない——何か意図があるのか……?)


その疑問が答えへと繋がるのは——数秒後だった。


「アース檻!」


不穏な気配とともに、蓮姫の周囲に大量の岩石が浮かび上がる。


「なっ——!?」


刹那——!

偶然、身を翻した蓮姫の目の前——

ミサイルの一斉射撃のように、細かな岩塊が次々と集まり、巨大な牢獄を形成していく。

完全なる閉塞——逃げ場なき罠!

蓮姫は安堵しようとした……。

しかし——


シュッ!!


背後から、蓮姫の耳元をかすめる岩塊の一部。


(まさか、こっちが本命!?——回避が間に合わない!)


蓮姫は咄嗟に武具を鞭へと変化させ、振りかざす。


しかし——細かな岩塊のミサイルは、鞭の防御を巻き込み砕け散っても、なお止むことはなく……。


鋭い衝撃音とともに、無数の岩塊のミサイルが蓮姫の周囲に押し寄せた。

逃れる間もなく、岩はまるで生き物のように彼女の全身を隙間なく取り囲み、瞬く間に厚い壁となって四方を塞ぐ。


鈍い衝撃が走る——。

数えきれない無数の岩塊に容赦なく体に打ち付けられ、骨の奥まで響く痛みが弾ける。

肩に食い込む鋭い岩角、腹をえぐる衝撃、脚を押し潰す圧迫感。

息をするたび、痛みが波のように広がる。

砕けた破片が肌を裂き、乾いた砂の匂いが鼻をつく。

息苦しさがじわじわと迫る——。

岩の隙間から漏れるわずかな光が、閉じ込められた現実を残酷に突きつける。


さらに——。


「アースブレイク!」


休む間もなく突きつけられる絶望——!


轟音とともに崩れ落ちる岩檻。

それと同時に、蓮姫の身体を圧する圧倒的な衝撃——!


岩塊が砕かれ、皮膚の至る所に裂傷が走る。

血が迸り、激痛が脳を焼いた。


「っ……あぐッ!!」


最悪の負のスパイラル——。


武器モードの一時ガードは、岩塊ミサイルの初撃で解除されてしまった。

高速回避も発動できず——身動きが取れない。


「くっ……このままじゃ——!」


盾モードでは死角が生じ、防ぎきれない。

シェルターモードでは、身動きすら許されない。

鎧モード——代償として大量のスタミナが削られ続ける。


荒い息遣い。

肩で呼吸を繰り返す蓮姫。


そして、その呼吸に重なるのは——マグナの嘲笑。


「どうした?終わりか?」


マグナが歩み寄る。

地が揺れ、蓮姫の視界が揺らぐ。


「……っ!」


歯を食いしばる。


(負けたくない——でも、この状況からどう抜け出せば……? )


結界が薄れ——防御が限界に近づく。


(万事休すか——)


——その瞬間。


視界の端で、岩塊の破片が凶弾のように飛ぶ。

避ける間もなく——ゴッ!!


「っ……!!」


鈍い衝撃が蓮姫の後頭部を激しく打つ。

骨に響く痛み。脳が揺れ、視界に星が瞬く——。


呼吸が乱れ、喉が詰まる。

何かを掴もうと手を伸ばすも、力が入らない。


地に膝をつく——。


(まずい……このままじゃ——)


鼓動が異常に遅くなる。

足元が遠ざかり、身体が宙に浮くような錯覚。

戦場の喧騒が水の中のように歪んでいく——。


まぶたが重くなる。

沈む……暗闇の底へ——。


蓮姫は……意識を失った。



時間の感覚が歪んでいる——。



どれほど経ったのか、分からない。

肌を撫でる風はなく、ただ虚無がそこにあるだけ。


『……ちゃん』



(……誰かの声……?)



『カムラちゃん?』



(この声……)


——遠い記憶が微かに震える。


頭の奥で響く音。

囁きなのか、呼びかけなのか、それすら定かではない。


『諦めないで——!!』


その瞬間、蓮姫の中で何かが弾けた。

鼓動が跳ねる。

忘れられない声が、暗闇を裂く——!


蓮姫の瞳に、再び光が宿る——!

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