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第47話 鈴の後悔

テクノロジーが高度に発達した近未来の日本。

ある四人家族の長女に鈴という少女がいた。


鈴の両親は再婚で、妹の蘭は今の両親から生まれた子供だった。


しかし、鈴は母が昔離婚した父の連れ子で、

鈴自身、いつも家の片隅にいるような気がしていた。

家族の笑い声が響いても、鈴自身も家族に心配かけまいと明るく振る舞うが、自分だけがその輪の外側にいる。そんな気がしていた。


母親に大切にされる妹の蘭は、無邪気な笑顔で「お姉ちゃん!」と鈴に抱きついてくる。

でも、そのたびに鈴の胸に鋭い棘が刺さる。


(私は本当にこの家族の一員なの?)

——そんな疑問が、心の奥深くに沈んでいた。



ある日の夜。蘭が鈴の部屋に入ってきた。

「ねえ、今日ね!ママが新しい髪飾りをくれたの!すごく可愛いの!」

蘭は嬉しそうに話し、手のひらに収まるほど小さな花の髪飾りを見せた。

その声は澄んでいて、何の疑いもなく、ただ幸せを分かち合いたいという気持ちで溢れていた。


だが、その無邪気な幸せが鈴には眩しすぎた。

「そんなもの、どうでもいいじゃない!!」

鈴は蘭の掌の上の髪飾りを激しく払い除けた。

鈴の声は冷たく、硬かった。


蘭の笑顔が一瞬揺らぐ。

「どうして……?

ねえ、どうして……こんなひどいことするの…?」


その問いかけに、鈴の胸の奥に溜まっていた黒い感情が爆発した。

「あなたなんて、いなくなればいいのに!」


言った瞬間、鈴自身が息を呑んだ。

蘭の目が揺れ、大きく開かれた瞳には、信じられないという気持ちと……深い悲しみがあった。


「わかった……」

何かを言いかけた蘭は、何も言わずに踵を返し、走り去った。


夜の闇の中へ、蘭の小さな影が消えていく——


その間、鈴はドアの前で体を丸めて部屋に閉じこもっていた。

蘭の姿が目の前から消えたことに、ほんの少しの安堵を感じた。


「蘭はいいよね……。どうせ、すぐに戻ってくるんでしょ?」


しかし……。


キャー!!!

夜の静寂を切り裂く悲鳴——鈴は嫌な予感がした。


鈴は硬直した。外からの叫びは、ただの騒音ではなかった。

胸の奥で何かがひどくざわつく。息が詰まり、手のひらがじっとりと汗ばむ。


「何……?」


不吉な予感に駆られ、鈴は玄関の外へ走った。

そこに広がる光景は——想像を絶するものだった。


冷たい街灯の下。車のライトがぼんやりと路上を照らし、

地面に横たわる小さな影を浮かび上がらせていた。


「嘘……」


視線の先、血の気の引いた顔。動かない身体。

蘭が……そこにいた。


鈴の足元から世界が崩れ落ちる。

心臓が激しく鼓動を打ち、耳鳴りが全身を支配した。


「蘭ッ!」


鈴は何も考えずに駆け出した。

道を飛び越え、転びそうになりながらも、

鈴はただ蘭の元へと走った。


近づくほどに、現実が冷たい刃となって突き刺さる。

蘭の服は埃にまみれ、頬には切り傷ができていた。


「どうして……」


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