一方その頃——。
空を切り裂く烈風が、戦場に荒々しい旋律を刻む。
意識もろとも翠嵐の姫と化した蓮姫は、疾風のごとく舞いながら、マグナの圧倒的な地の力に立ち向かっていた。
「甘い……そんな鈍重な攻撃じゃ、私には届かない!」
まるで別人のような彼女の冷たい声が響くと同時に、風が渦巻き、マグナの巨大な岩塊が砕け散る。
彼女はただ回避するのではなく、風の力を利用して攻撃を分散・拡散——ダメージを最小限に抑えつつ、追撃の機会を見出していた。
——轟音。
地面を叩きつけるように、マグナが岩の拳を振り下ろす。
その一撃は、大地を削り取り、爆風となって戦場を覆った。
しかし——
「遅いわよ。」
姫はすでにそこにはいない。
風とともに舞い上がり、上空からマグナを見下ろしていた。
「さあ、こっちの番よ。」
風がうねり、彼女の手元に集う。
瞬間——彼女の指先から放たれるのは、無数の刃となったかまいたち。
シュッ——ズバッ!!
鋭い風刃がマグナの岩の鎧を切り裂き、抉っていく。
だが、それでもマグナは揺るがない。
「フン、まだ生ぬるいな。」
次の瞬間、彼女は足元に強烈な気配を感じた。
「——ッ!」
地面が隆起する——岩の柱が無数に立ち上がり、彼女を囲い込む!
瞬時に後方へ跳躍するが、マグナの狙いは別にあった。
「そこだッ!!」
ゴゴゴゴゴ——ッ!!
岩の檻のような構造が閉じ、逃げ場を塞ぐ。
マグナの狙いは、彼女の動きを封じることだった。
だが——
「その手には乗らないわ!」
姫は息を整え、静かに目を閉じる。
風が、彼女の意識と一つになる。
「——嵐よ、私に応えなさい。」
瞬間——!!
轟音とともに、突風が巻き起こる。
風の圧力が岩の檻を粉砕し、姫の体を疾風のように押し出した。
マグナの予測を超える動き——風に乗る彼女の戦術は、もはや規格外だった。
「いいわ、その覚悟、見せてもらう……!」
姫の周囲に新たな風が旋回する。
それは力を増し、次なる攻撃の狼煙となる——!!
しかし、その時——
マグナの全身に亀裂が走り、異様な気配が漂い始めた。
「フン……ようやく面白くなってきたな。」
大地が揺れる。
岩の表面が砕け、そこから溢れ出る赤黒い闘気。
「お前の風……確かに厄介だ。だがな——」
ゴゴゴゴゴ——ッ!!
咆哮とともに、マグナが変容する。
硬質だった岩の鎧がひび割れ、真紅の輝きが彼を包み込んだ——。
そして——
「ここからが本番だ!」
マグナ、第二形態——覚醒。
戦場に、新たなる嵐が巻き起こる——!!