朝食を待っている間に眠くなってしまってしまいソファーの上でついつい横になってしまい気付いたら寝てしまっていた。
それはまだ良いんだけど問題が一つあって……
「……これが
めおとが何か分からないけど、そんな事を言いながらぼくとダートの事を見て眼を輝ているカエデさんがいた。
多分栄花の方言か何かなんだろうなぁ……
「カエデちゃん!?……まだ気が早いよっ!?」
「気が早いっていつかなるんですね、楽しみですっ!」
いったい何が早くて何が楽しみなのか分からないけど、ここで『いったい何の話をしてるの?』って言ったら面倒な事が起きる気がする。
そんな事を思いながら朝ご飯を食べていると……カエデさんが何かを思い出したかのように口を開いた。
「そういえばご飯を食べている間にカルディア様が下から来ると思ったのですが、来ないですね」
「あぁ、それならぼく達の前の家の方に用事があって行くからカエデさんとのお話しが終わったら来てって書き置きがあったよ」
「レース、それって直ぐ行った方がいいんじゃない?」
「待たせるのは良くないと思うけど、師匠が言うようにぼく達の用事を済ませてから行こう」
ぼくがそういうとダートは立ち上がりぼくの事を見る。
いったい今度はどうしたというのか……、
「……食事中に急に立ち上がってどうしたの?」
「カエデちゃんなら信頼出来る子だって私が保証するから大丈夫だよっ!だからご飯を直ぐ食べて行くよレースっ!」
「そんな信頼出来るまで言ってくれる何て……お姉様、カエデは、カエデは嬉しいです!」
……ぼくが寝ている間にいったい何があったというのか。
本当に何があったのか気になるから聞いてみよう。
「えっと、ぼくが寝ている間に何があったの?」
「それは女の子同士の秘密ですぅっ!ね、カエデちゃん?」
「はいっ!だからレースさんには言えませんっ!」
秘密というなら聞かないでおこうと思う。
それに必要な時が来たらダートから話してくれるだろうから待てばいい。
「とりあえず朝ご飯を作っている間にダートが信頼出来る子だって思ったならぼくはそれでいいよ」
「ほんとですかっ!?」
「うん、彼女が大丈夫だと言うんだから信じてあげないとねって事で詳しい話は師匠の件が終わったらしよう」
「はいっ!宜しくお願い致します!」
カエデさんの後ろに花が咲いたと錯覚をしてしまう程に良い笑顔をして返事をする。
その後は特にこれと言った話もなく急いで朝ご飯を食べて食器を片付けた後に、必要な荷物をダートの空間収納に入れて貰うと家を出て向かう事にした。
「今更何だけどいいかな……」
「どうしたの?」
「……ぼく達ってあの距離を以前は往復してたと思うと不便な生活してたんだね」
昔の家に着いたのは良いけど、思った以上に距離があって驚いてしまう。
行き来するだけで徒歩で半刻程掛かってしまうのは確かに患者さん達に以前は遠くて通い辛かったと言われた理由が今では理解出来る。
「ほんと、良くあの距離移動してたよね……、カエデちゃんは大丈夫?疲れてない?」
「はい、これ位なら全然大丈夫です」
「ならいいけど、もし立ってるのがしんどくなったらレースに背負って貰うから言ってね?」
「……殿方に密着するのは恥ずかしいのでその時はお姉様がいいです」
「んー、その時は頑張ろうかな」
こういう時どんな反応をすればいいのか分からないから適当に聞き流しておこう。
それにしても師匠は何処にいるんだろう、ここにいるって言ってたのにおかしいな……、その時だった森の方から凄まじい魔力の波が全身を包み込んだと思うと、数秒遅れて爆発音が遠くから聞こえた。
「ダートっ!カエデさんっ!ぼくの後ろに隠れてっ!」
「わかったっ!」
「え?何でですか?」
「いいから早くっ!【雪壁展開っ!スノーウォール!】」
カエデさんの腕を強引に掴んでぼくの後ろに移動させると魔術で雪の壁を作ったと同時に衝撃が周囲を襲う。
それと同時に目の前の壁が弾け飛んだけどぼく等は無傷で済んだ。
とは言え間一髪だった……後少し対処が送れていたらぼく達の命が危なかったかもしれない。
「レースっ!今のはっ!?」
「あの魔力の波長は師匠だ……、多分何かと戦ってる」
「それなら早く行かないとっ!」
師匠が戦う程の相手となるとぼく達が行っても邪魔になるだけな気がするけど……、ぼくもアキラさんとの訓練である程度は戦えるようになった。
今のぼくならもしかしたら力になれるかもしれない
「……わかった、カエデさんは安全な場所で待機しててっ!」
「いえ、私もいきますっ!」
「カエデちゃんの事は何かあったら私が守るから大丈夫っ!」
「お姉様、ありがとうございますっ!」
……正直カエデさんが戦えるか分からないけどダートがいるなら大丈夫だろう。
ぼく等は音のした方向に急いで向かったけど、その先にあったのは少しでも力になれるかもと思ったのが間違えだと理解するのには充分な光景だった。
左右の手に鉄扇を持ち五つの魔術を空中に展開している師匠と、濃紺の髪にエルフを表す長い耳、そして眼鏡をかけた白衣の男がおり彼の後ろにはそこにある筈の無い魔導工房が存在しており数えきれない数の兵器を製造し続けている異様な光景がそこに存在している。
ただ……ぼくやダートはこの男が誰か知っている、師匠と同じSランク冒険者であり【黎明】の二つ名を持つ魔科学者【マスカレイド・ハルサー】だと、彼はぼく達の姿を眼鏡越しに瞳に映すと不敵な笑みを浮かべるのだった。