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第18話 ヒジリとアン ダート視点

 診療所でこれから働く事になるかもしれないから、二人について色々と聞いていると色んな事が聴けた。

特にヒジリさんは実家がお寺という物らしくて巫女という役職に就く筈だったけどお金にならないからと断り栄花騎士団に入団後、自身の属性である聖属性という光属性から派生した、希少な属性と得意な治癒術を使って頑張って来た事や、アンさんからはどれくらいアキラさんの事を愛しているのかという惚気話を淡々と聞かせて貰ったと思う。

その過程で思ったんだけど、アンさんからは私とどこか同じ匂いを感じたから仲良くなれるかもしれない、ヒジリさんの方は正直初対面が強烈過ぎてよくわからないかなぁ……。

ただお金を貰えるならしっかりとやる事をやるタイプらしいから、信用は出来る人だと思うけど、見た目が凄い綺麗な人だからレースを取られないか心配になる。

……万が一って言う事があるから極力彼には近づけさせないようにしないとね。


「という事で私はヒジリさん達と一緒に報告書の件を纏めてきますので少しだけ待っていてくださいね?、本当は栄花騎士団本部の中を自由に見せてあげたいんですが、さすがに約束も無しに連れて来た人に中を見せる訳には行かないので……」

「うん、大丈夫だよー、それなら待ってるよりもレース達の事が心配だから先に家の方に帰って大丈夫かな?」

「はい、それで大丈夫です、お帰りの際はドアの真ん中にあるボタンを二回押してからドアノブをひねると帰れますよー、あ、そうだ!ダートお姉様、心器の使用許可の方も取って置きますね」

「何やら何まで色々とありがとうカエデちゃん、じゃあ私は先に帰るね?、あ、後ヒジリさん、アンさんこれから宜しくお願いしますっ」

「ダートちゃんこれから宜しくねー、後あたいの事はヒーちゃんって呼んでいいよー、アンちゃんも好きに呼んじゃっていいからね」


 ヒジリさんがそういうと、アンさんが『あなたまた勝手にっ!』と言って彼女の肩を掴んで体を前後に振る。

本当にこの人達仲が良いんだなぁ……。


「あ、そうだ姫ちゃん、さっき私達と話したように報告書の内容は、許可を得た後に心器を出そうとしたら二つ出ちゃったっ!どうしよーっ!って感じにしなきゃダメだよ?」

「えぇ、それは勿論分かっていますけど……、上手くできているのか分からないんで後で見て貰ってもいいですか?」

「んー、それならアキちゃんが丁度トレーディアスの首都から戻って来てるから三人で一緒に見てあげるねー」

「……私はパスさせて貰うわ?ダートさんと一緒にこれから働く場所の下見に行きたいし」

「んー?そう?、それなら二人で見とくねー、じゃあねダートちゃんまた今度ねーって事でカエデちゃんいこー」

「は、はいっ!ダートお姉様、多分このまま今日はそちらに帰らないと思うのでまた明日お会いしましょう……あ、そういえば、ごめんなさい忘れてた事があるので帰るのはちょっと待ってください」


 カエデちゃんはそういうと部屋にある机の前に行くと引き出しを開けて、中からレースが持っているのと同じ形をした通信端末を五つ取り出して持ってくる。


「この新しい通信端末を渡しておきますね?、確かアキラさんからの報告だとレースさんを入れて新たに四人、そしてダートお姉様を入れて五人分です。この端末は心器を使えるようになった方達を管理する為に渡す決まりになってるのでお受け取りください、これがあればどこにいても私達栄花騎士団の幹部以上の団員がダートお姉様達の居場所を常に把握出来ますし、団長、副団長と最高幹部の皆さんと連絡が取れるようになりますが、一から十三番に割り振られた数字の内一番だけは絶対に押さないでくださいね?、団長である父上に繋がりますが大変お忙しい人なのでもし連絡を入れる場合は、一度二番を押して私に話を通すようにしてください」

「……姫ちゃん、そんな一気に説明しても理解が難しいと思うから少しずつ私が教えるわ?」

「確かにそうですね、ダートお姉様、後はアンちゃんが教えてくれると思うので分からない事があったら何でも聞いてください」

「うん、何から何までありがとうカエデちゃん、じゃあ私はアンさんと一緒に行くね?」

「はいっ!お引き止めして申し訳ございませんでした、ではまた明日お会いしましょうね」


 カエデちゃんから貰った通信端末を空間収納にしまうと、笑顔で手を振る彼女に手を振り返してアンさんと一緒にドアを開けて診療所へと戻るけど、扉を閉める最中に背後からヒジリさんの声で『姫ちゃん説明頑張ったねっ!少しずつ副団長っぽくなって来て偉いよー!』って言う声が聞こえて思わず笑みが零れてしまう。

本当に周りに愛されてるんだなぁって思うけど、確かにあんなにかわいい子だったら当然だと思う。

だって私も凄い可愛がりたくなるし、もし妹がいたらこんな感じなのかなって気持ちになる。


「ふふ、何だか騒がしくしちゃって悪いわね」

「いえ、気にしないでください、カエデちゃんかわいいですもんね」

「……えぇ、私達の自慢のかわいい副団長ちゃんだから当然ね、頑張り屋さんだからついつい世話を焼いてしまうの」

「何かそれ分かる気がします……」

「……でしょ?ふふ、あなたとは仲良くなれそうだわ」

「私もですっ!っていつまでも物置部屋の中で話すのも良くないですから、診療所から二階の居住スペースに移動しましょうか」


……私はそういうと物置部屋のドアを開けて、診療所に入ると階段を上がる。

レースともう一人の私を待たせちゃったけど仲良くしてるかなって思いつつ居住スペースに入ると、荒らされた部屋に何かで突き破ったかのような形で穴を空けられた玄関のドアがあった。

何事かと思い彼がいる筈のリビングに行くと置手紙が置いてあって、何が書かれているか確認する為に内容を確認すると『ダートっていうガキがいねぇから治癒術士のクソ野郎を人質として連れて行く、解放して欲しいならてめぇらの前の家まで来い』と書いてあった……、それを見た私は咄嗟に家を出て行こうとするけどその肩をアンさんが掴んで止めると不敵な笑みを浮かべて口を開く『……面白い事になってるじゃない、これは診療所のオーナーに顔を売る良い機会かもしれないわね、ダートさん力を貸してあげるわ……、ポルトゥス!』

、その言葉と共に黒い外套を着て、鎖に繋がれた棺を担いだスケルトンが姿を現したのだった。


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