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第40話 能力限界とは

 グロウフェレスとの戦いの後、何とか立ち上がり歩くことが出来るようになったカエデと隠れていたサリアとトキの三人と合流して領主の館に向かっているけど……


「カエデ、まだ顔色が悪いけど大丈夫?」

「大丈夫、です……、ごめんなさいレースさん、私だけ足手まといになってしまって……」

「いや、今回は相手が悪かったよ、あんな強敵が出て来るなんて思わなかったしさ」

「ですが、今回はグロウフェレスと戦闘面で相性の良いシンさんがいなければ全滅していてもおかしくありませんでした……、それに私の頭の中にあるグロウフェレスの能力と実際に見た物が違い過ぎて……、あの能力はAでは無くSランク冒険者として扱っても良いレベルです、レースさんとダートお姉様が戦ってる間に鑑定した彼の能力を書きだすので皆様ご確認ください」


 カエデが心器のガラスペンを出現させると空中に文字を書き始める。

その能力は【魔力適正 肉体強化9 魔術適正10 治癒術適正10】と書いてあるけどそれが何なのかが分からない。

特にその下に書いてある【能力値 力6 魔力10 体力6 敏捷8 器用10 賢さ10】という数値も見せられただけでは何も分からないままだ。


「カエデ、これって何の数値なの?」

「あ……、レースさんは冒険者じゃないからご存知無いのですね、その数値は魔力の特徴を表します、最低値が0で最高値が10ですが、最低値の場合は魔術等を使用する事が実質的に不可能となりますね、逆に最高値の場合は適正限界能力者となり何らかの方法で自身の能力を極めた者のみが至れます……、ですが本来ならこの能力適正は0から9の範囲で生まれた時に決まってしまうので変化する事は無いです」

「じゃあ……どうやって10に至るの?」

「それは人それぞれ条件が違うらしいので詳しくは分かりませんが、現在のSランク冒険者達の特徴として誰に教わる分けも無く心器の顕現が可能であった事が共通していますね、ただこれは訓練さえすれば誰でも使える為あくまで共通している部分です、栄花騎士団最高幹部の中にも数名限界に至った者はいますが……」

「あたいやランの嬢ちゃんの事だね……、まぁあたい等の場合は説明しても参考にならないんじゃないかな」


 参考にならないとしてもダートやダリアを守る為には力が必要だから、どんな情報でも今は頭に入れておきたい。


「参考にならなかったとしても聞きたいかな」

「そうかい?それならあたいの場合だけど自身の魔力特性を制御出来るようになった結果だと思う、それまでは戦いになる度に頭に血が上って暴れる事しか出来なかったんだけど、心器が使えるようになって得た能力のおかげで向き合えたんだと思う、ランの事は姫ちゃんが知ってるんじゃない?」

「えっと、ランちゃんは自身の属性が余りにも危険過ぎ扱いを間違えると周囲を巻き込んで死んでしまうのですが、自身の特性【制御】のおかげでそのような悲劇が起きずに人として生きる事が許されています……、本来なら生存が確認された瞬間に討伐されてもおかしくない属性なので幸運としかいいようが無いですけど、魔術と肉体強化を使った身体能力の異常な上昇を扱う事が出来るようになった結果限界に至ったと言ってましたね」

「……あたい等の場合参考にならないって言うのはそういう事だよ」

「でも聞けて分かった事があるから助かったよ、ありがとう」


 つまりぼくが限界に至る場合は、心器の能力である【怪力】を使いこなすようになるしかないのかもしれない。

ただそうなるとぼくの魔力適正的にどうなるのだろうか……


「カエデ、ぼくの能力も鑑定して欲しいんだけどいいかな」

「分かりました……、少しお待ちください」


 カエデがぼくの方を見ながら空中に文字を書いて行く【魔力適正 肉体強化3 魔術適正8 治癒術適正8】と出たけど……


「肉体強化の値が低いね……」

「こればっかりは生まれ持ったものなのでしょうがないと思います」

「でも魔術と治癒術が高くて良かったよ……、能力の方はどんな感じなのかな」

「ちょっと待ってくださいね?」


 【能力値 力5 魔力8 体力6 敏捷4 器用5 賢さ8】という文字が浮かび上がるけど、確か昨日の実験で怪力の効果を見た時に【一時的限界到達】という内容があった筈。

つまり……、魔力適正の肉体強化と、能力値の力が限界まで上昇するという事だったのだろう。

という事は……、やっぱり怪力を自由に使えるようになれば間違いなくぼくは強くなれる筈だ。


「でも自分の能力を見たいなんてどうしたんですか?」

「ちょっと思う事があってさ……、グロウフェレスがぼくとダートを連れて行くと言ってた以上は、ダートを守れる位に強くならなきゃいけないと思って、今の強さを大体で良いから知っておきたかったんだ」

「……私がダートお姉様よりも早く出会っていたら同じように考えてくれましたか?」

「え?」

「あ、いえ、何でもないです……、聞かなかった事にしてください」


 突然何を言っているのって言いそうになったけど、ぼくにはダートがいるからその言葉に対して出せる答えをぼくは持っていない。

ぼくの隣で話を聞いていたダートも驚いたような顔をしているし、何ていうかカエデらしくないなぁって思う。


「カエデちゃんがそんな事言う何て珍しいね……、どうしたの?」

「いえ、ダートお姉様も気にしないでください、先程の戦いで不安になってしまっただけで……、私ってほら戦いになると全然皆の力になれないから……」

「そんな事無いから大丈夫だよ?カエデちゃんが作戦を考えてくれるから動きやすくなったりもしてるし、必ずしも戦えなければいけない訳じゃないでしょ?、それに何かあったら私とレースで守るから安心して?」

「……でも、いえ分かりました、それならお願いしますね?、あ、後サリアさんの能力も見たのですが、ここにいる四人で共有したいです」

「別にいいけど……」


 サリアは今、シンとミュラッカと共に先頭を歩いていて前方の索敵を行なってくれている。

何でも彼女曰く『反乱軍が全員逃げ出したという事は、そのまま盗賊になっている可能性があるので警戒した方がいい』という事らしいけど、戦いたくないと言っている彼女が自ら危険な役をするなんて大丈夫なのだろうか……


「あたいもいいけど、もしかしてあたいよりも強かったりするのかい?」

「トキさんより強いって、確かにグロウフェレスがこの中で一番強いって言ってたけど……」

「……ダートお姉様、グロウフェレスの言う事は事実で実際に強いです、取り合えず後でシンさん達にも共有しますが今は私達四人の秘密にしてください、レースさんも言わないようにしてくださいね」


 カエデの手により【魔力適正 肉体強化10 魔術適正10 治癒術適正9】と書かれた文章が浮かび上がる。

限界に到達した適正が二つあるのと同時に……【能力値 力10 魔力10 体力10 敏捷3 器用5 賢さ8】という数値に言葉が出なくなった。


「……こりゃ確かにあたいよりも強いね、能力値まで限界に到達しているのが3つもあるじゃないか」

「えぇ……、それにカーティス様の事をパパと呼ぶのを見ると、間違いなく親から優秀な能力を受け継いだんだと思います」

「ここまで強いなら戦ってくれたら良かったのに」

「私もそう思うけど……、本人が戦いたくないっていう以上は無理強い出来ないよ」

「ですね、こればっかりはしょうがないと思いますが、必要とあれば彼女にも戦って貰わなければならないので……、さて取り合えず私も一度先頭に行って様子を見てきますね」


……カエデが空中に書かれた文字を消して、先頭へと走って行く。

正直グロウフェレスとの戦いにサリアが参加さえしてくれればあんなに苦戦せずに済んだのにと思っていると、前方から焦った顔をしたサリアが走って来ると【領主の館から煙が上がってるっ!人質が危ないかもしれないから急いでっ!】と言ってぼく達の間に緊張が走るのだった。

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