「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎――
「分かりましたわ――【
お師匠様とノティアが勝手に話を進めていって、気がつけば目に前に
「わっ、わわわ……【
果たして今度は、生きたまま【収納】するのに成功した!
「や、やった……ついに!」
「ああ、大したものさね」
「Sランク冒険者誕生の瞬間がこんなにも呆気ないだなんて、笑えてきますわね」
見ればノティアが引きつり笑いをしている。
「……って、Sランク冒険者?」
「Aランク冒険者のわたくしでも生きたまま捕獲はできない
「そ、そんな……この僕が!?」
信じられない――…
「ほら、呆けてないで次に行くよ!」
■ ◆ ■ ◆
次のターゲットは、空を飛んでいる5体の集団。
「集団、かつ遠距離だ。だがいまのお前さんならきっと行けるはずさね」
「お師匠様がそう仰るなら……」
僕は両手を掲げ、5体の
「――【
丹田からずるずると魔力が吸い上げられていき、そして
「や、やれました!!」
「ああ。よくやったさね。体調はどうさね?」
「それが……頭とお腹が痛いです」
「【
■ ◆ ■ ◆
カランカランカラン……
城塞都市の冒険者ギルドホールに入る。
中でたむろしている冒険者たちの視線が僕とお師匠様とノティアに一斉に集まって、
「ヒッ……」
思わず小さな悲鳴を上げる僕と、
「「「「「ヒッ……」」」」」
同じく悲鳴を上げる冒険者たち。
……前にもあったな、こんなこと。
「く、クリス様! 本日はどのようなご用件で!?」
そして、奥から飛び出してくるギルド職員さん。
「あー……
「「「「「
「し、失礼ながら、『
ギルド職員さんの問いに対して、
「は、はい。あと、生きたままの奴も6体いるんですけど、生きたまま納品とかってできるんでしょうか……? 無理なら〆てから出しますけど」
「生きたままって……」
「し、〆るって、魚か何かかよ!」
「なんてこった……あの、雑魚冒険者だったのクリスが、ドラゴンスレイヤーとはなぁ!」
「
と、僕のことを知る冒険者たちが口々に僕を褒めてくれる。
ただ、
■ ◆ ■ ◆
「話は聞いたぜ英雄様!」
ギルドマスターの部屋で、ギルドマスターに肩をバンバン叩かれる。
「Aランクは確実! Sをやるには国への照会が必要になるから何日か待ってもらうが……先王アリソン様に次ぐ、新たな伝説の誕生だな!!」
「で、伝説だなんてそんな!」
「ははっ! 一ヵ月前にドブさらいのことでここで話したころから、お前は何も変わらねぇなぁ。もっと堂々としてもいいと思うんだが」
「いやぁ……結局全部、お師匠様とノティアが居てくれればこそなので」
――こうして僕は、Aランク冒険者になった。
■ ◆ ■ ◆
数日かけて山中で竜狩りを行い、合計で752体の
そして、
「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎――
山の頂で、お師匠様が空一面を覆う真っ赤な魔方陣を展開させる。
たっぷり1分ほどもかけて入念に索敵し、
「
お師匠様に頭を撫でられる。
「お、お師匠様、なんか盛り上がってるところ悪いんですけど……終わったなら帰りましょう。ここ、寒いし空気も薄いしで頭が痛くなってきました……」
「軟弱さねぇ」
「【
ノティアもつらそうだ。
「では戻りますわね――【
■ ◆ ■ ◆
「おう、Sランク冒険者!」
屋敷に戻ると、居間に魔王様がいらっしゃった。
バフォメット様も一緒だ。
よくいらっしゃるんだよね……この方々。
「アリソン~!! 逢いたかったぞ!!」
「儂は逢いたくなかったさね……」
そう言って、僕の背中に隠れるお師匠様。可愛い。
「それはそうと、クリス」
と魔王様が1枚のカードを投げて寄越す。
「わわっ、何でしょうか!?」
「Sランク冒険者証だ」
なんてこった、まさか魔王様から直々に冒険者証を下賜される日が来るとは!