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第31話 市役所防衛戦


 パンッパンッと乾いた発砲音が鳴り響き、ヘスコ防壁に乗ったばかりの三人を、銃弾が襲う。



「撃つなっ! 味方だっ! アダムス二等兵だっ!」


「あ、本当だっ! 撃つなっ! いや、ゾンビを撃てっ!」


「ゾンビが来るぞっ! とにかく、撃ちまくってくれっ!」


 アダムス二等兵が、市役所に向かって叫ぶと、向こう側からも声が帰ってくる。


 二階の窓からは、兵士が自動小銃M16A2を撃ちまくり、威力が強いM14も銃火を放つ。



 一階では、警備員たちが、グロック17を発砲して、ゾンビ達を足止めしようとする。


 また、生存者たちが、鉄パイプ槍を振るって、前線が崩れないように支えていた。



「早く、彼を中に連れてくんだっ! ここは、俺たちに任せろっ!」


「やるしかないですよね、やるしか…………」


「アチコチから入って来てるねっ? こりゃあ、まさに戦争だねっ!」


「援護するわ」


 軽トラの荷台に上がってきた、釘バットを握るゾンビを、賢一は蹴っ飛ばして落とす。


 メイスーは、パイプガンに散弾を込めると、道路から、近づいてきたばかりのゾンビを撃ち倒す。



 多用途銃剣を右手に、市役所の敷地内に降りたあと、周囲を走るゾンビ達を、モイラは睨む。


 スカンジウムを構えて、エリーゼは窓を目指す、フレッシャー達に、背後から銃撃を加える。



「アダムスは任せろ、コイツは噛まれてないっ! 足をくじいているだけだっ! 誰か、中に居れてやってくれっ!」


「退け、退けぇっ!! 救急部隊の到着だっ!! 俺たちを通せ」


「た、頼むっ! 助けてくれっ!」


「早くしろっ! 中に運ぶんだっ!」


「救護班は? 本当に噛まれてないんだよな?」


 ジャンが右肩に、アダムス二等兵を乗せながら、玄関を目指して、ひたすら走っていく。


 それに付き添いながら、ダニエルは四方八方から迫る、フレッシャー達を、トカレフで撃ちまくる。



 白いシャツを着ている警備員みたいな服装の市役所員は、モスバーグM500から散弾を放つ。


 白人生存者は、竹竿たけざおを振り回しながら、ゾンビ達を蹴散らしつつ近寄ってくる。



 彼等は、負傷者に肩を貸すと、玄関から中に連れていこうとする。



「敷地内まで、入られているっ! 敵を撃退しなければっ!」


「急げっ! 相手を押し留めないと、家族が殺られるぞっ!」


「武器を持つゾンビが来るわっ! 気をつけて」


「走るのと、ジャンプする奴も来るぞっ!」


「ギャアアアア」


「グルアアアアアアッ!?」


 M16A2を撃ちながら、白人兵士は走ってくるゾンビやフレッシャー達を射殺していく。


 鉄パイプ槍に穂先として、取り付けた包丁で、黒人生存者は、作業員ゾンビの顔面を貫く。



 アジア系女性の生存者は、コルト45で、ヘスコ防壁が崩れた場所から来る敵を迎撃する。


 南太平洋系の生存者は、鉄管を両手で振るい、ジャンピンガーを叩いた。



 三十を超える兵士や生存者たちが、建物の内部と外部を問わず、必死で抵抗していた。



「何人か、兵士たちや民間人も戦ってくれているな? 俺たちも、前線で戦うぞっ! ゾンビの群れを撃退するっ!」


「私も、お供しますっ! ゾンビは怖いけど…………戦わなければ、皆が死んじゃうっ!」


「グアッ!」


「グエッ!」


 賢一は、再び特殊警棒を手にすると、向かってくるフレッシャーの頭を思いっきり、どつく。


 その側で、メイスーは険しい表情で、中華包丁を振り回しながら、近寄るゾンビ達を斬りまくる。



「賢一、ガンに連絡するよっ!」


「ああ、頼むっ! この」


「ギュエーー!!」


 モイラは、コルト45を撃っていたが、ゾンビ達から離れると、無線機を取り出した。


 飛びかってくる、ジャンピンガーの体を掴み、賢一は、右横に投げ捨てる。



「早く連絡を頼む、援軍が来ないと、包囲されながら殺られちまうっ!」


「これで、最後ですっ! もう終わりよっ!」


「甘、援軍を寄越してくれっ! 市役所が敵の攻撃を受けたんだっ!」


『何だって? ビーチ方面は、他も襲撃を受けているから、今すぐには無理だっ! こちらから援軍を回すから、それまで待っていろっ!』


 賢一は、手にした特殊警棒を、高々と振り上げて、ゾンビの頭部を狙う。


 鈍い音とともに、敵は怯み、メイスーが中華包丁で、その隙に刃を首へと叩きつけた。



 モイラは、通信機を左手に持ち、右手のコルト45からは、弾丸を放ち続ける。


 その向こうでは、甘が応答するが、どうやら状況は良くないようだ。



「分かったよっ! ダメだね? 私たちで、何とか状況をひっくり返すしかないわっ!」


「はあ? しかも、弾切れかよ…………コイツは、いよいよ腹をくくるしかないな」


「ゾンビの数が減らないが、病院と同じく、波が来なくなるまで戦うしかないっ!」


「グギャアッ!」


「そうね? こんなのイラクで、経験したから怖くはないわ」


「グエエッ!」


 無線機を仕舞うと、モイラは多用途銃剣に持ちかえながら、小走りする警官ゾンビを蹴り飛ばす。


 ダニエルも、トカレフを仕舞うと、ボロナイフを片手に、群れを退けるために前へと飛び出す。



 ジャンは、レミントンM870から散弾を放ち、フレッシャーの上半身を撃ち抜く。


 ハチェットで、ジャンピンガーが飛び上がろうとする隙を狙い、エリーゼは刃を振り下ろした。



「うりゃっ! やっぱり、数が多いわ? また、次の波が来る」


「波状攻撃だなっ! 何とかして、耐えなければっ!」


 エリーゼは、敵の頭部を叩き割りながら、次なる相手を探して、周りを見渡す。


 すると、他にも、多数のフレッシャー&ジャンピンガー達が、容赦なく襲いかかってくる。



 賢一は、冷静さを保ちながら、仲間たちを守るために身を挺して、連中に立ち向かう。


 一人、前に出ていった彼にも、武器持ちゾンビ達が、大勢で押し寄せてきた。



「この数じゃあ、惜しきられてしまうって、レベルじゃないぞっ!! まだ、増援は来ないのかっ!?」


「うう…………ウラアア~~」


「グルアアアアアア」


「ぎゃあっ! うあ…………」


「ぐふっ!」


 ゾンビの増援部隊が、続々と到着する中、賢一は叫びながら、走ってくる連中を叩き殺す。


 しかし、腹部を噛まれた黒人生存者は、ゾンビへと転化して、竹槍を構えながら襲いかかってきた。



 さらに、フレッシャー達も、ヘスコ防壁を飛び越えて、ワラワラと現れる。


 その数に押されて、白人兵士は首筋を噛まれてしまい、白人生存者は、マチェットで斬られる。



「アレは? …………武器を持った連中は、刃先が血濡れているから、ゾンビ毒に感染してしまうのかっ!」


 何十発の弾丸が、二階から四方八方へと降り注ぎ、一階でも銃火が放たれ続ける。


 ゾンビ達を押し留めるため、拳銃を撃ち、包丁やバールを振り回す人間たちも見える。



 そんな中、敵に殺られてしまい、ゾンビへと転化してくる者も出始めた。


 賢一は、彼等を見て、額から汗を滴しながら、これでは徐々に負けていくと思う。



「みんなっ! 気をつけろっ! 武器持ちゾンビの刃は血が付いているっ! 射撃班、連中を集中攻撃するんだっ!」


「下で、何か言っているぞ?」


「知るか、今は目の前の敵を撃ち続けろっ!」


 押し寄せる波を前に、賢一の叫び声は、味方に届かず、とにかく右往左往しながら戦う他ない。



「クソッ! 指揮官は、何処に行ったんだ? これじゃ、マトモな連携すら取れないっ!」


「賢一、弱音を吐いている暇は、私たちに無いわよっ!」


「ウガアアアア~~~~」


 賢一とモイラ達は、ゾンビを殴ったり、斬ったりしながら戦い続ける。


 しかし、尽きる事なく、次から次へと、様々なゾンビ達が現れては、まっすぐ走ってくる。



 さらに、最悪な事に、あの大柄なゾンビまで、ヘスコ防壁が崩れた隙間から現れた。


 奴は、胸部や腹部に、何発か銃弾を喰らっても、臆することなく、早歩きで向かってきた。

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