パンッパンッと乾いた発砲音が鳴り響き、ヘスコ防壁に乗ったばかりの三人を、銃弾が襲う。
「撃つなっ! 味方だっ! アダムス二等兵だっ!」
「あ、本当だっ! 撃つなっ! いや、ゾンビを撃てっ!」
「ゾンビが来るぞっ! とにかく、撃ちまくってくれっ!」
アダムス二等兵が、市役所に向かって叫ぶと、向こう側からも声が帰ってくる。
二階の窓からは、兵士が自動小銃M16A2を撃ちまくり、威力が強いM14も銃火を放つ。
一階では、警備員たちが、グロック17を発砲して、ゾンビ達を足止めしようとする。
また、生存者たちが、鉄パイプ槍を振るって、前線が崩れないように支えていた。
「早く、彼を中に連れてくんだっ! ここは、俺たちに任せろっ!」
「やるしかないですよね、やるしか…………」
「アチコチから入って来てるねっ? こりゃあ、まさに戦争だねっ!」
「援護するわ」
軽トラの荷台に上がってきた、釘バットを握るゾンビを、賢一は蹴っ飛ばして落とす。
メイスーは、パイプガンに散弾を込めると、道路から、近づいてきたばかりのゾンビを撃ち倒す。
多用途銃剣を右手に、市役所の敷地内に降りたあと、周囲を走るゾンビ達を、モイラは睨む。
スカンジウムを構えて、エリーゼは窓を目指す、フレッシャー達に、背後から銃撃を加える。
「アダムスは任せろ、コイツは噛まれてないっ! 足を
「退け、退けぇっ!! 救急部隊の到着だっ!! 俺たちを通せ」
「た、頼むっ! 助けてくれっ!」
「早くしろっ! 中に運ぶんだっ!」
「救護班は? 本当に噛まれてないんだよな?」
ジャンが右肩に、アダムス二等兵を乗せながら、玄関を目指して、ひたすら走っていく。
それに付き添いながら、ダニエルは四方八方から迫る、フレッシャー達を、トカレフで撃ちまくる。
白いシャツを着ている警備員みたいな服装の市役所員は、モスバーグM500から散弾を放つ。
白人生存者は、
彼等は、負傷者に肩を貸すと、玄関から中に連れていこうとする。
「敷地内まで、入られているっ! 敵を撃退しなければっ!」
「急げっ! 相手を押し留めないと、家族が殺られるぞっ!」
「武器を持つゾンビが来るわっ! 気をつけて」
「走るのと、ジャンプする奴も来るぞっ!」
「ギャアアアア」
「グルアアアアアアッ!?」
M16A2を撃ちながら、白人兵士は走ってくるゾンビやフレッシャー達を射殺していく。
鉄パイプ槍に穂先として、取り付けた包丁で、黒人生存者は、作業員ゾンビの顔面を貫く。
アジア系女性の生存者は、コルト45で、ヘスコ防壁が崩れた場所から来る敵を迎撃する。
南太平洋系の生存者は、鉄管を両手で振るい、ジャンピンガーを叩いた。
三十を超える兵士や生存者たちが、建物の内部と外部を問わず、必死で抵抗していた。
「何人か、兵士たちや民間人も戦ってくれているな? 俺たちも、前線で戦うぞっ! ゾンビの群れを撃退するっ!」
「私も、お供しますっ! ゾンビは怖いけど…………戦わなければ、皆が死んじゃうっ!」
「グアッ!」
「グエッ!」
賢一は、再び特殊警棒を手にすると、向かってくるフレッシャーの頭を思いっきり、どつく。
その側で、メイスーは険しい表情で、中華包丁を振り回しながら、近寄るゾンビ達を斬りまくる。
「賢一、
「ああ、頼むっ! この」
「ギュエーー!!」
モイラは、コルト45を撃っていたが、ゾンビ達から離れると、無線機を取り出した。
飛びかってくる、ジャンピンガーの体を掴み、賢一は、右横に投げ捨てる。
「早く連絡を頼む、援軍が来ないと、包囲されながら殺られちまうっ!」
「これで、最後ですっ! もう終わりよっ!」
「甘、援軍を寄越してくれっ! 市役所が敵の攻撃を受けたんだっ!」
『何だって? ビーチ方面は、他も襲撃を受けているから、今すぐには無理だっ! こちらから援軍を回すから、それまで待っていろっ!』
賢一は、手にした特殊警棒を、高々と振り上げて、ゾンビの頭部を狙う。
鈍い音とともに、敵は怯み、メイスーが中華包丁で、その隙に刃を首へと叩きつけた。
モイラは、通信機を左手に持ち、右手のコルト45からは、弾丸を放ち続ける。
その向こうでは、甘が応答するが、どうやら状況は良くないようだ。
「分かったよっ! ダメだね? 私たちで、何とか状況をひっくり返すしかないわっ!」
「はあ? しかも、弾切れかよ…………コイツは、いよいよ腹を
「ゾンビの数が減らないが、病院と同じく、波が来なくなるまで戦うしかないっ!」
「グギャアッ!」
「そうね? こんなのイラクで、経験したから怖くはないわ」
「グエエッ!」
無線機を仕舞うと、モイラは多用途銃剣に持ちかえながら、小走りする警官ゾンビを蹴り飛ばす。
ダニエルも、トカレフを仕舞うと、ボロナイフを片手に、群れを退けるために前へと飛び出す。
ジャンは、レミントンM870から散弾を放ち、フレッシャーの上半身を撃ち抜く。
ハチェットで、ジャンピンガーが飛び上がろうとする隙を狙い、エリーゼは刃を振り下ろした。
「うりゃっ! やっぱり、数が多いわ? また、次の波が来る」
「波状攻撃だなっ! 何とかして、耐えなければっ!」
エリーゼは、敵の頭部を叩き割りながら、次なる相手を探して、周りを見渡す。
すると、他にも、多数のフレッシャー&ジャンピンガー達が、容赦なく襲いかかってくる。
賢一は、冷静さを保ちながら、仲間たちを守るために身を挺して、連中に立ち向かう。
一人、前に出ていった彼にも、武器持ちゾンビ達が、大勢で押し寄せてきた。
「この数じゃあ、惜しきられてしまうって、レベルじゃないぞっ!! まだ、増援は来ないのかっ!?」
「うう…………ウラアア~~」
「グルアアアアアア」
「ぎゃあっ! うあ…………」
「ぐふっ!」
ゾンビの増援部隊が、続々と到着する中、賢一は叫びながら、走ってくる連中を叩き殺す。
しかし、腹部を噛まれた黒人生存者は、ゾンビへと転化して、竹槍を構えながら襲いかかってきた。
さらに、フレッシャー達も、ヘスコ防壁を飛び越えて、ワラワラと現れる。
その数に押されて、白人兵士は首筋を噛まれてしまい、白人生存者は、マチェットで斬られる。
「アレは? …………武器を持った連中は、刃先が血濡れているから、ゾンビ毒に感染してしまうのかっ!」
何十発の弾丸が、二階から四方八方へと降り注ぎ、一階でも銃火が放たれ続ける。
ゾンビ達を押し留めるため、拳銃を撃ち、包丁やバールを振り回す人間たちも見える。
そんな中、敵に殺られてしまい、ゾンビへと転化してくる者も出始めた。
賢一は、彼等を見て、額から汗を滴しながら、これでは徐々に負けていくと思う。
「みんなっ! 気をつけろっ! 武器持ちゾンビの刃は血が付いているっ! 射撃班、連中を集中攻撃するんだっ!」
「下で、何か言っているぞ?」
「知るか、今は目の前の敵を撃ち続けろっ!」
押し寄せる波を前に、賢一の叫び声は、味方に届かず、とにかく右往左往しながら戦う他ない。
「クソッ! 指揮官は、何処に行ったんだ? これじゃ、マトモな連携すら取れないっ!」
「賢一、弱音を吐いている暇は、私たちに無いわよっ!」
「ウガアアアア~~~~」
賢一とモイラ達は、ゾンビを殴ったり、斬ったりしながら戦い続ける。
しかし、尽きる事なく、次から次へと、様々なゾンビ達が現れては、まっすぐ走ってくる。
さらに、最悪な事に、あの大柄なゾンビまで、ヘスコ防壁が崩れた隙間から現れた。
奴は、胸部や腹部に、何発か銃弾を喰らっても、臆することなく、早歩きで向かってきた。