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第32話 市役所に援軍到着


 あの大柄なゾンビが、ヘスコ防壁が崩れた隙間から現れると、賢一たちを獲物と見なした。


 奴は、胴体にライフル弾を喰らっても、一向に止まる気配はなく、早歩きで向かってくる。



「グオオオオオオッ!!」


「マジかよ…………」


「また、奴ですね」


 賢一とメイスー達は、フレッシャー&ゾンビ達に混じり、現れた大柄なゾンビに驚く。


 他の仲間たちも、一瞬だけは呆気に取られたが、直ぐに、向かってくる敵と対峙する。



「奴は、まだ遠いっ! まずは他のゾンビ達から排除しようっ!」


「グルアア」


「はいっ! 取り敢えず、走ってくる者から倒しましょうっ!」


「ギャーー」


 襲いくる、武器持ちゾンビのゴボウ銃剣を、避けた賢一は、特殊警棒で、額を叩いて反撃する。


 竹槍を握るゾンビの突撃を回避して、メイスーは周りを囲む敵に中華包丁を振るう。



「このっ! マチェット何か、振るうんじゃないよっ! 危ないだろうってのっ!」


「グギャギャ」


「おいっ! 武器持ちゾンビが、さっきら増えてきてないか? コイツは不味いぜ、ますます俺たちが不利になっちまうっ!」


「ギョエエ~~~~」


 元は、ギャングだったのか、厳つい風貌をした武器持ちゾンビが、マチェットを闇雲に振るう。


 モイラは、奴のひざを蹴って、動きを止めてから、喉を多用途銃剣で切り裂いた。



 ダニエルは、武器持ちゾンビ達が振るう、トレンチメイスを避けると、今度は刺身包丁を回避する。



「みんな、奴が来たら迎え討つぞっ!!」


「ゴアアアアア」


 皆、必死で戦う中、賢一は中央に立って、自身に敵の注意を向けようとした。


 今、彼の心に恐怖はなく、ただ強敵を倒さんと、特殊警棒を握る手に、強い力が込められる。



「グギャアッ!!」


「コイツら? 倒しても、キリがないっ! 次々と現れてくるっ!」


「グ…………」


「銃声が、呼び寄せてしまうのかしら? それとも、いつかは数が減っていくかしら?」


 レミントンM870で、撃たれてしまった、フレッシャーは、後ろに吹き飛んだ。


 スカンジウムで、エリーゼは狙い射ちすると、ジャンピンガーは頭を吹き飛ばされる。



 二人は、皆の少し後方へと下がり、まだ弾が残っている銃器で、左右から迫る敵を迎撃していた。


 そんな中、見た事がない腹が膨らんだ新たなゾンビが、ヘスコ防壁の上に飛び立った。



 まるで、B級海獣映画に登場するような敵を見た人々は、注目と銃口を、奴へと同時に向けた。



「グロロ、ゲロロロロッ!」


「何だ? あのカエル見たいな不気味な奴はっ!」


「見た事が、ない奴だぞ?」


 そう呟きながら、二階の窓から、白人兵士や黒人兵士たちが、M16A1を撃とうとした。


 何発ものライフル弾が、カエル型ゾンビを射ち殺さんと放たれる中、向こうも口を開いた。



「ゲロロッ! ゲロロ~~~~!」


「ぐわああああ、熱い~~!?」


 汚い吐瀉物が、放物線を描いて、窓の方へと向かっていき、白人生存者に当たった。



「新手だっ! アイツのゲロには気をつけろっ! 俺たちでも、顔に当たると不味いからなっ!」


「そんな事より、あの大柄なのが来ますっ! あっ!」


「ウゴオオオオ」


「ギャアア~~~~!!」


「グルオーー!!」


 特殊警棒を構えながら、賢一は後ろに下がりだし、向かってくる敵と対峙する。


 同時に、メイスーは中華包丁で、小走りするゾンビの右腕を切りつけた。



 カエル型ゾンビに、皆の視線が注目する中、大柄なゾンビも向かってくる。


 さらに、ツルハシや日本刀を握る武器持ちゾンビ&フレッシャー達が、勢いよく突撃してきた。



「グアアアア~~~~!?」


「グルアアーーーー!!」


「うわあっ! 凄い数だっ! 建物の中まで、撤退するぞっ!」


「クレイモアの設置は、完了したぞっ!」


「ヤバイわ…………もう、私達だけじゃあ、耐えきれないわっ!」


「援護するっ! 先に走れっ!」


 ゾンビ達は、跳び跳ねたり、真っ直ぐ走りながら、四方八方から襲いかかってくる。


 それを目にした防衛隊は、段々と下がりはじめ、市役所の中へと逃げ込もうとする。



 アラブ系の生存者は、スコップを抱えながら、窓に向かって、ひたすら走っていく。


 クレイモア地雷を設置したあと、アジア系の兵士は、立ち上がると同時に走りだす。



 M1カービンを連射していた、黒人女性の生存者は、弾切れになると、後ろに振り返った。


 白人兵士は、ゾンビに狙いを定めて、M16A2から、三発ずつ射撃を繰り返していた。



「みんな、逃げていくっ! 俺たちも下がるぞっ!」


「下がるっても、私たちは中央に位置するんだよ? 下がるに、下がれないじゃないかっ!」


「退路は、すでに塞がれたわ? ゾンビが後ろからも来ている…………」


「だったら、やるっきゃ、ねえだろっ! 連続パンチを喰らえ」


 賢一は、安全を考慮して、今すぐにでも逃げ出したかったが、モイラに止められた。


 彼等が、勇敢に戦いながら、他の生存者たちを逃がしているうちに、敵に囲まれてしまったからだ。



 スカンジウムを撃ちながら、エリーゼは自身に向かってくる、ゾンビ達を倒し続ける。


 その背後を守るようにして、ダニエルも右手に握るボロナイフと、重たい左拳を振るい続けた。



「退路を開いてやるっ! みんな、下がれっ! 俺が盾になってやるから」


「私も、付き合いますっ!」


「ウゴオオオオオオッ!!」


「ギャアアアア」


「はぁ…………これは、不味いな? だが、俺だけ逃げるワケには行かないもんな」


 ゾンビの頭頂部に、タガネを叩き込み、ジャンは次なる敵を迎え撃とうとする。


 メイスーは、武器持ちゾンビの刺身包丁が振るわれると、それを中華包丁で受けとめた。



 次から次へと、ゾンビ達が迫る中、彼等は大群を食い止めるべく、必死で抵抗する。


 賢一は、終わらない襲撃に恐怖したが、仲間の絆が、何とか彼を支えていた。



「グオオッ! グワアッ!」


「グッ! グヘーー!」


「地雷を踏んだんだねっ! 間抜けな奴らだっ!」


「他にも、罠があるなら良かったんだがなっ!」


 クレイモア地雷を踏んでしまったらしく、フレッシャーや武器持ちゾンビ達が、吹き飛ぶ。


 モイラと賢一たちは、その合間を抜けてくる連中に狙いを定めて、白兵戦を挑む。



「グアッ! グフ?」


「ギャッ!?」


「やったねっ!」


「だが、まだ来やがる? しかも、コイツが来たか? 厄介だな」


「ウオオオオッ!!」


 モイラの多用途銃剣により、手足を斬られてしまい、ゾンビは体勢を崩す。


 ジャンピンガーの飛び込みを、サイドステップで避けてから、賢一は後頭部に特殊警棒を叩き込む。



 そんな中、いよいよ大柄なゾンビが、ドシドシと足音を立てながら迫ってくる。


 奴は、両手を振り回しつつ、ラリアットの姿勢を取ると、いきなり突っ込んできた。



「ウゴオオーーーー!!」


「うわっ! 不味いぞ、散開しろっ!」


「みんな、ヤバイよっ!」


 ラリアットを回避するべく、賢一は頭を下げつつ、腕の下へと潜り込む。


 モイラは、奴から距離を取りながらも、多用途銃剣で、左脇を切り裂く。



「ガウウ? グオオッ!」


「死ねっ!」


「うらあっ! ヘビーパンチだっ!」


 大柄なゾンビの胸に、エリーゼが握るスカンジウムから放たれた弾丸が、小さな穴を開ける。


 背中に、ボロナイフを握る重たい右拳による一撃のあと、刃が二回目に繰り出された。



「ウガアアアアッ!!」


 しかし、半端な攻撃では、大柄なゾンビは怯まず、奴は咆哮を上げた。



「チッ! 何て、奴だっ! こっちの攻撃が効いてない」


「全くだね…………」


「そろそろ、援軍が来ても、良い頃なんですが?」


「メイスー、それは諦めた方が良さそうだ…………アレを見ろ」


 賢一とモイラ達は、大柄なゾンビを、左右から挟むように立ち、奴の出方を伺う。


 そんな中、援軍を来たいするメイスーに対して、ジャンはヘスコ防壁の隙間を睨んで呟く。



「おいっ! 味方が来たぞっ! 警備会社の援軍だっ!」


「連中、遅かったじゃないか」


 M14を窓から構えながら、黒人兵士は喜び、白人兵士は手榴弾を投げながら、ため息を吐いた。


 駐車場で、爆発が木霊する中、援軍に来た連中が走ってきたが、彼等は衣服が血塗れだった。



「ギエエエエーー!!」


「グルアアアアッ!!」


「ジャン、援軍は…………ゾンビ化してるぞ」


「ああ、それも武器持ちゾンビになっ!」


 賢一とジャン達は、警備員ゾンビ達の赤黒く濡れた服装を見ながら、額から汗を垂らす。


 こうして、彼等は再び現れた脅威に、たった六人だけで、対応するしかなかった。

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