朝日を浴びながら、賢一たちは、市役所の敷地内を歩き、業務用バンに向かっていく。
赤や黄色などの派手な外装が目立ち、店主らしき人物が、店を開いていたからだ。
その隣は、コマンドウ装甲車が停車しており、ドラム缶や弾薬箱などが、周りに置いてある。
また、それらを車内から何人かの兵士たちが、忙しそうに、運び出していた。
「よお? いらっしゃい? アンタら、こんな時だし、武器が必要なんじゃないか? 或いは道具とかさ」
「残念ながら土産物を買っている余裕はないぜ? 金だって、円もドルも無いんだからな」
ニューギニア系の店主は、笑顔を見せながら、賢一を呼んだが、彼は品物を見てから呟く。
「はぁ? 観光客へのボッタクリから、生存者に対してのボッタクリ販売に転業したのね…………呆れるわ、中東でも見てきたから分かるわ」
「失礼なことを言わないでくれよ~~? 値段は上げているが、こっちも命懸けで物資を運んでるんだぜ? それに、もっと必需品を値上げしてる悪徳商人も居やがる」
戦場ジャーナリストとして、色々な場所に行って、エリーゼは様々な闇を見てきた。
そのため、商人に対して、冷ややかな視線を送るとともに、彼を怪しんだ。
「アンタは違うのか?」
「もちろんだよ、俺は観光客相手の地元の全うな商人だぞ」
「どうかしらねぇ…………」
「観光客を相手にすると、値段を吊り上げる連中が存在すると聞くぞ」
賢一も、疑いの目を向けたが、商人は両腕を組ながら堂々と答える。
モイラは怪しみながらも、品物を眺め、眉間に
「ち、違うよ? 俺は本当に、ただの商人さ? ボッタクリ販売はしてないっての」
「それより、この髑髏ベルトは良いな? 格好良いし、俺には似合うだろう?」
「あと、この紐やベルトは使えるんじゃないですか? 少しなら、ギャングやゾンビから取り上げた紙幣もありますし」
商人は、慌てながら両手を振るうが、どう見ても怪しさが、百点満点である。
細かい事を気にせず、ふざけながら、ダニエルはベルトを指差しながら笑う。
メイスーは、品物を手に取りながら、様々なアクセサリーを手に取りながら、良く観察する。
汎用ストラップ、カメラ用スリングベイル、小型バック等は、確かに使える品物だ。
こう言った品物は、彼等が背負っている銃器や武器を背負うのに便利だからだ。
「まあ、買うのは良いだろう? ストラップ、スリングベイルは銃や刀剣に巻き付ければ、持ち運びが楽になる」
「じゃあ、私が紙幣を出すよ」
「私も、出しますね?」
「毎度あり、スリングベイルを、もっと買ってくれるなら、ストラップの分は、オマケしておくよ?」
賢一は、死体から拾っていた、AR15に合うストラップ等を探す。
その間、モイラとメイスー達は、紙幣を財布やポケットから取り出して、商人に手渡した。
「今後、さらに武器が手に入った場合を考えて、ストラップや布、
「そうだな? 何かの時には、以外と必要に成るからな、我々の救出任務に使えるだろう」
「分かった…………じゃあ、そうさせて貰う」
「交渉成立、じゃあ、他にも必要な物があったら、遠慮なく言ってくれ」
モイラの提案により、ストラップやスリングベイル等は、多数購入された。
ジャンも、入手したばかりの品物を、モスバーグ500に巻き付けていく。
買い物を終えて、賢一も早速、AR15のストックや銃身に取り付ける。
商品が売れたため、商人は気分がよくなり、笑顔で、紙幣を数えた。
「じゃあ、後は…………いや、今はいい、じゃあな」
「そうかい? 達者でな」
賢一は、腰に下げているゴボウ銃剣を見たが、昨日の戦闘で、鞘などは死体から拾っている。
そのため、商人から買う物がなくなったため、店を後にして、コマンドウ装甲車に向かった。
「さて、今度は武器の調達に来たが? 話しは聞いてると思うが、弾薬の補充がしたいんだけど」
「それなら、上に言ってくれ? 今、忙しいんだ」
「俺たちは、作業中だ」
今度は、弾薬補給を受けるべく、補給部隊の兵士たちに、賢一は声をかけた。
東アジア系の兵士と黒人兵士たちは、弾薬箱を両手に持ちながら、何処かへと運んでいく。
「あ、君たちはっ!?」
コマンドウ装甲車の上から、アダムス二等兵が現れると、彼は地面に飛び降りた。
「うおっ! アダムスだな? 他と連絡が取れたから、コイツらを呼んだのか?」
「そうだ、今は物質の運び込みや、周辺の建物にも、監視所を作るのに忙しいんだ」
「それより、物質を分けて貰えるはず何だけど? 上官から何か聞いてないかしら?」
賢一の問いに、アダムスは答えながら、右手に握る弾薬箱を、そっと地面に置く。
そんな彼に、モイラは自分たちが受け取れるはずの補給を求めた。
「ああ、そうだったな? ライフル弾や拳銃弾の補給をさせようって、話だったな? 散弾も僅かだがあるぞ」
「なら、遠慮なく貰っていこうか? 軽トラは? 何処だ? アレがないと、俺たちは移動できないんだが…………」
好きなだけ持っていけと言った感じで、アダムス二等兵は、弾薬箱や木箱を指差す。
そして、賢一は彼から別けて貰った弾丸を受けとるべく、歩きだしながら質問した。
「済まん、車両はバリケードを作るのに使ってしまったんだ? 他のを探すか、徒歩で移動してくれ」
「分かったぜ、他に車は無いから、歩いていくしかないか? まっ! 徒歩行軍は慣れているから構わんが」
「ええ~~だりぃぜ」
「文句を言うな? 助けを求める人々のために、俺たちは、歩いてでも行かねばならんのだから」
アダムス二等兵の話を聞きながら、賢一は木箱の中から、マガジンを取りだす。
愚痴る、ダニエルに対して、ジャンは説教しながら、散弾が入った紙箱に手をのばした。
「メイスー? 貴方のパイプガンも、散弾が込められたはずよ? 弾を貰っておきなさい」
「は、はい? そうですよね? また、私も使うだろうし」
「45口径なら、私とダニエルのトンプソンも装填できるね」
「ああ、そうだな? 入れておくか」
エリーゼは、アドバイスしながら、ハチェットを握りしめて、冒険に向かうために気合いを入れる。
彼女から言われた通り、メイスーは散弾を、サマーコートの裏ポケットに入れていく。
モイラは、45口径弾を弾倉に込めたり、すでに弾が入っている物を手にとる。
四個あるトンプソンの弾倉に、ダニエルは一発ずつ弾を装填していく。
「よし、終わったな」
賢一は、AR15の弾倉を入手でき、メイスーとジャン達は、それぞれ散弾が補充できた。
モイラは、コルト拳銃、ダニエルはトンプソン短機関銃の弾丸を補充できた。
「これから、どこに向かうんだ? リゾート地域に行くとは聞いてるが」
アダムス二等兵は、これから危険な任務に向かう、賢一たちを心配した。
「その途中、連絡の取れない部隊を調査しに行くんだ? あと、お使いもあるからな? そろそろ、出発するか」
「私たちも、一応は兵士だからね? やるべき事をやるだけさっ! もう時間だし行くわ」
そう答えながら、賢一とモイラ達は歩きだし、正門の方へと向かおうとした。
「達者でなっ! 無事を祈っているぞ」
彼等が、自分を助けてくれたため、アダムス二等兵は、感謝の意を伝える。
「アンタも無事でね」
「そっちも気をつけるんだぜ」
モイラと賢一たちは、返事をするとともに、正門を抜けでていく。
そこを過ぎると、様々な車両が、右側の道路を封鎖するために使われているさまが見えた。
ピックアップやトラック等の上には、兵士や警備員たちが立っている。
「さて、ここからは冒険に行かなければ成らない? みんな覚悟できてるな?」
車両が並び、検問所のようになっている隙間を前にして、賢一は後ろに振り返る。
「大丈夫さっ? マチェットも、コルトも使えるからねっ! それに、いざとなれば、マーシャルアーツで敵は何とかするさ」
「私は無事だわ、カメラで、スクープを撮る準備もできてる」
「救出任務に行くためなら、ゾンビやギャングも怖くはない…………人々が困っているのに、黙っていられるか」
「喧嘩や戦争は、本当にやりたくないが、行くしかねえなら、行くよ」
「私も怖いですけど、行くしかないなら、街に出ますっ!!」
モイラとエリーゼは、賢一よりも、先に歩いて、車両の向こう側に向かう。
ジャンは、瞳の奥に闘志を燃やし、ダニエルとメイスー達も、あとに続く。
兵士たちは、出歩いていく彼等よりも、外からの攻撃を警戒している。
そんな中、足早に彼等は近くにある薬局まで、向かっていった。