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第38話 補給


 朝日を浴びながら、賢一たちは、市役所の敷地内を歩き、業務用バンに向かっていく。


 赤や黄色などの派手な外装が目立ち、店主らしき人物が、店を開いていたからだ。



 その隣は、コマンドウ装甲車が停車しており、ドラム缶や弾薬箱などが、周りに置いてある。


 また、それらを車内から何人かの兵士たちが、忙しそうに、運び出していた。



「よお? いらっしゃい? アンタら、こんな時だし、武器が必要なんじゃないか? 或いは道具とかさ」


「残念ながら土産物を買っている余裕はないぜ? 金だって、円もドルも無いんだからな」


 ニューギニア系の店主は、笑顔を見せながら、賢一を呼んだが、彼は品物を見てから呟く。



「はぁ? 観光客へのボッタクリから、生存者に対してのボッタクリ販売に転業したのね…………呆れるわ、中東でも見てきたから分かるわ」


「失礼なことを言わないでくれよ~~? 値段は上げているが、こっちも命懸けで物資を運んでるんだぜ? それに、もっと必需品を値上げしてる悪徳商人も居やがる」


 戦場ジャーナリストとして、色々な場所に行って、エリーゼは様々な闇を見てきた。


 そのため、商人に対して、冷ややかな視線を送るとともに、彼を怪しんだ。



「アンタは違うのか?」


「もちろんだよ、俺は観光客相手の地元の全うな商人だぞ」


「どうかしらねぇ…………」


「観光客を相手にすると、値段を吊り上げる連中が存在すると聞くぞ」


 賢一も、疑いの目を向けたが、商人は両腕を組ながら堂々と答える。


 モイラは怪しみながらも、品物を眺め、眉間にシワを寄せながら、ジャンは睨む。



「ち、違うよ? 俺は本当に、ただの商人さ? ボッタクリ販売はしてないっての」


「それより、この髑髏ベルトは良いな? 格好良いし、俺には似合うだろう?」


「あと、この紐やベルトは使えるんじゃないですか? 少しなら、ギャングやゾンビから取り上げた紙幣もありますし」


 商人は、慌てながら両手を振るうが、どう見ても怪しさが、百点満点である。


 細かい事を気にせず、ふざけながら、ダニエルはベルトを指差しながら笑う。



 メイスーは、品物を手に取りながら、様々なアクセサリーを手に取りながら、良く観察する。


 汎用ストラップ、カメラ用スリングベイル、小型バック等は、確かに使える品物だ。



 こう言った品物は、彼等が背負っている銃器や武器を背負うのに便利だからだ。



「まあ、買うのは良いだろう? ストラップ、スリングベイルは銃や刀剣に巻き付ければ、持ち運びが楽になる」


「じゃあ、私が紙幣を出すよ」


「私も、出しますね?」


「毎度あり、スリングベイルを、もっと買ってくれるなら、ストラップの分は、オマケしておくよ?」


 賢一は、死体から拾っていた、AR15に合うストラップ等を探す。


 その間、モイラとメイスー達は、紙幣を財布やポケットから取り出して、商人に手渡した。



「今後、さらに武器が手に入った場合を考えて、ストラップや布、ヒモや糸などを多めに買いましょう? 止血帯の代わりにも成るからね」


「そうだな? 何かの時には、以外と必要に成るからな、我々の救出任務に使えるだろう」


「分かった…………じゃあ、そうさせて貰う」


「交渉成立、じゃあ、他にも必要な物があったら、遠慮なく言ってくれ」


 モイラの提案により、ストラップやスリングベイル等は、多数購入された。


 ジャンも、入手したばかりの品物を、モスバーグ500に巻き付けていく。



 買い物を終えて、賢一も早速、AR15のストックや銃身に取り付ける。


 商品が売れたため、商人は気分がよくなり、笑顔で、紙幣を数えた。



「じゃあ、後は…………いや、今はいい、じゃあな」


「そうかい? 達者でな」


 賢一は、腰に下げているゴボウ銃剣を見たが、昨日の戦闘で、鞘などは死体から拾っている。


 そのため、商人から買う物がなくなったため、店を後にして、コマンドウ装甲車に向かった。



「さて、今度は武器の調達に来たが? 話しは聞いてると思うが、弾薬の補充がしたいんだけど」


「それなら、上に言ってくれ? 今、忙しいんだ」


「俺たちは、作業中だ」


 今度は、弾薬補給を受けるべく、補給部隊の兵士たちに、賢一は声をかけた。


 東アジア系の兵士と黒人兵士たちは、弾薬箱を両手に持ちながら、何処かへと運んでいく。



「あ、君たちはっ!?」


 コマンドウ装甲車の上から、アダムス二等兵が現れると、彼は地面に飛び降りた。



「うおっ! アダムスだな? 他と連絡が取れたから、コイツらを呼んだのか?」


「そうだ、今は物質の運び込みや、周辺の建物にも、監視所を作るのに忙しいんだ」


「それより、物質を分けて貰えるはず何だけど? 上官から何か聞いてないかしら?」


 賢一の問いに、アダムスは答えながら、右手に握る弾薬箱を、そっと地面に置く。


 そんな彼に、モイラは自分たちが受け取れるはずの補給を求めた。



「ああ、そうだったな? ライフル弾や拳銃弾の補給をさせようって、話だったな? 散弾も僅かだがあるぞ」


「なら、遠慮なく貰っていこうか? 軽トラは? 何処だ? アレがないと、俺たちは移動できないんだが…………」


 好きなだけ持っていけと言った感じで、アダムス二等兵は、弾薬箱や木箱を指差す。


 そして、賢一は彼から別けて貰った弾丸を受けとるべく、歩きだしながら質問した。



「済まん、車両はバリケードを作るのに使ってしまったんだ? 他のを探すか、徒歩で移動してくれ」


「分かったぜ、他に車は無いから、歩いていくしかないか? まっ! 徒歩行軍は慣れているから構わんが」


「ええ~~だりぃぜ」


「文句を言うな? 助けを求める人々のために、俺たちは、歩いてでも行かねばならんのだから」


 アダムス二等兵の話を聞きながら、賢一は木箱の中から、マガジンを取りだす。


 愚痴る、ダニエルに対して、ジャンは説教しながら、散弾が入った紙箱に手をのばした。



「メイスー? 貴方のパイプガンも、散弾が込められたはずよ? 弾を貰っておきなさい」


「は、はい? そうですよね? また、私も使うだろうし」


「45口径なら、私とダニエルのトンプソンも装填できるね」


「ああ、そうだな? 入れておくか」


 エリーゼは、アドバイスしながら、ハチェットを握りしめて、冒険に向かうために気合いを入れる。


 彼女から言われた通り、メイスーは散弾を、サマーコートの裏ポケットに入れていく。



 モイラは、45口径弾を弾倉に込めたり、すでに弾が入っている物を手にとる。


 四個あるトンプソンの弾倉に、ダニエルは一発ずつ弾を装填していく。



「よし、終わったな」


 賢一は、AR15の弾倉を入手でき、メイスーとジャン達は、それぞれ散弾が補充できた。


 モイラは、コルト拳銃、ダニエルはトンプソン短機関銃の弾丸を補充できた。



「これから、どこに向かうんだ? リゾート地域に行くとは聞いてるが」


 アダムス二等兵は、これから危険な任務に向かう、賢一たちを心配した。



「その途中、連絡の取れない部隊を調査しに行くんだ? あと、お使いもあるからな? そろそろ、出発するか」


「私たちも、一応は兵士だからね? やるべき事をやるだけさっ! もう時間だし行くわ」


 そう答えながら、賢一とモイラ達は歩きだし、正門の方へと向かおうとした。



「達者でなっ! 無事を祈っているぞ」


 彼等が、自分を助けてくれたため、アダムス二等兵は、感謝の意を伝える。



「アンタも無事でね」


「そっちも気をつけるんだぜ」


 モイラと賢一たちは、返事をするとともに、正門を抜けでていく。


 そこを過ぎると、様々な車両が、右側の道路を封鎖するために使われているさまが見えた。


 ピックアップやトラック等の上には、兵士や警備員たちが立っている。



「さて、ここからは冒険に行かなければ成らない? みんな覚悟できてるな?」


 車両が並び、検問所のようになっている隙間を前にして、賢一は後ろに振り返る。



「大丈夫さっ? マチェットも、コルトも使えるからねっ! それに、いざとなれば、マーシャルアーツで敵は何とかするさ」


「私は無事だわ、カメラで、スクープを撮る準備もできてる」


「救出任務に行くためなら、ゾンビやギャングも怖くはない…………人々が困っているのに、黙っていられるか」


「喧嘩や戦争は、本当にやりたくないが、行くしかねえなら、行くよ」


「私も怖いですけど、行くしかないなら、街に出ますっ!!」


 モイラとエリーゼは、賢一よりも、先に歩いて、車両の向こう側に向かう。


 ジャンは、瞳の奥に闘志を燃やし、ダニエルとメイスー達も、あとに続く。



 兵士たちは、出歩いていく彼等よりも、外からの攻撃を警戒している。


 そんな中、足早に彼等は近くにある薬局まで、向かっていった。

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