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第44話 レストランから工場へ


 賢一たちは、ゾンビの大集団から逃れたあと、一時的な休憩所として、レストランに入っていた。



「ここは、小さな店だが、中は涼しいな」


「冷房が動いてなくても、日陰で暑く成らないんだわ」


 賢一とモイラ達は、僅かな紙幣や硬貨などを、カウンターに置いた。


 もちろん、それから冷凍庫を漁り、紅茶やアイスコーヒーなどを取り出していた。



「外よりかは、マシな温度だぜっ! しかし、よく略奪者に荒らされてなかったな」


「全くです」


「そのお陰で、こうして休めたんだけどね」


「お前ら、呑気に飲んでばかりは居られないぞっ!」


 ダニエル、メイスー、エリーゼ達が、レストランの丸テーブルを囲む。


 明るい声が響く中、グレープジュースを飲みながら、ジャンだけは裏口を開けて、外を警戒する。



 すると、いきなり外から刃物が、壁に当たった金属音が聞こえた。


 静まり返る瞬間、彼らの視線は、裏側にある道路へと向いていた。



「おいっ! 他のギャングだっ! 俺たちの食糧を盗む気だぞっ!」


「殺してやるわ、ザコ野郎どもがっ!」


「く、くそ、泥棒たちだっ!」


「負けるワケには行かないわっ! 戦うのよっ!」


 何が起こったのか、心拍数が上がる中、外からは、声が聞こえてきた。


 どうやら、ギャングと生存者たちが、左右から出会い頭の戦闘をはじめたらしい。



「奴ら、始めやがったぞっ! 銃声を鳴らさないでくれると良いが?」


「ジャン、音が鳴ったらドアを閉めろっ! 民間人を救う前に、ゾンビが来てしまうっ!」


 ドアの隙間から、ジャンが戦いを見守る中、賢一は直ぐに、カウンターを飛びこえる。


 こうして、椅子に座って、安心しきっていた仲間たちに、緊張感が一気に広がった。



「くっ! 賢一…………それはっ!」


「分かっているっ! だが、ゾンビの大集団は相手にできないぞっ!」


「それより、私たちも狙われるかも知れない、店に入ってきたら殺るよ」


「うう、また戦闘ですか?」


 ジャンは、かならず民間人を救出しようとする熱血漢だが、それでも今の状況は不味い。


 もし、銃撃が始まったら、周りからゾンビの大集団が現れるだろう。



 それを心配して、賢一は何時でも、ドアを閉められるように待機する。



 狭い店内に、大量のゾンビ達が押し寄せてくることを想定して、モイラは多用途銃剣をにぎる。


 メイスーは、顔を青くさせながらも、中華包丁を握りしめながら、敵がくるのを待ち構える。



「うらああ~~!? 斬られろっ!」


「死ね、死ね、お前らは死ぬんだわっ!」


「殺られて、たまるかっ!」


「私たちは、死なないわっ!!」


 よく見ると、ギャングと生存者たちは、双方とも銃器を使っておらず、金属音だけが木霊する。


 どうやら、飛び道具などは、弓矢や投擲武器だけしか使ってないようだ。



 大柄な白人ギャングは、鉄パイプを振り回して、暴れながら突進する。


 細身の黒人女性ギャングも、ペティナイフを、すばやく何度も投げる。



 黒人生存者は、金属バットを両手で掲げながら、攻撃を受け止め、後ろに下がる。


 ゴミバケツ蓋を構えながら、白人女性の生存者は、投擲武器による連撃を耐えていた。



「敵は、銃器は使っていないっ! 派手な音が鳴るから使えないようだなっ! なら、加勢するか」


「ああっ!! 民間人を助けようっ!! それが、俺たちの仕事だっ!!」


「うわっ! どこから出てきたんだっ! グエッ!」


「お前ら、何もんだっ! グ…………うう」


 そう言いながら、賢一は飛び出ていき、右側の車に隠れているギャング達に向かっていく。


 ジャンも、少し出遅れたが、勢いよく同じ方向に突進していった。



 二人が走っていく方向には、何台かの自動車があり、そこにギャング達は、身を隠していた。



 白人ギャングは、ミニボウから矢を放ったあと、賢一のゴボウ銃剣に胸を貫かれた。



 それを見て、東南アジア系のギャングは、クロスボウを射とうとしたが、逆に自分が刺された。


 奴よりも早く、ジャンが素早く、ペティナイフを投擲したからだ。



「ふぅっ! 当たるかと思ったぜ…………」


「本当に危なかったな…………」


 賢一とジャン達は、敵よりも早く、無鉄砲に走っていたため、攻撃された後から恐怖を感じた。



「後ろが殺られたぞっ!」


「構うか、この勢いのまま、殺るんだっ!」


「危ないっ! ぐふっ!?」


「キャッ! ダニー!!」


 白人ギャングは、めちゃくちゃに鉄パイプを振るいながら、大声で怒鳴る。


 黒人ギャングも、ロングナイフを真っ直ぐに突きだしながら叫ぶ。



 奴の刺突を受けて、黒人生存者は、腹に一撃を喰らったため、金属バットを落としながら倒れる。


 ゴミバケツを構え、バールを振り回していた、白人女性の生存者は、悲鳴を上げる。



「やれやれ、女だろうと殺してしまえっ!」


「このまま、私たちが勝つんだよっ!」


「後ろの連中は、任せろっ! やってやるぜっ!」


「うおおーー!! 殺してやるっ!!」


 大柄な白人ギャングは、相変わらず、鉄パイプを振り回していた。


 細身の黒人女性ギャングも、ダイバーナイフを抜き取り、闇雲に振るいまくる。



 竹槍を持ち、怒り狂う、東アジア系ギャングは、乱れ突きを繰り出しながら走ってきた。


 太平洋系のギャングも、二刀流で握りしめるマチェットで斬りかかるべく、向かってきた。



「うわっ! 連中、来やがったっ! なら、戦うしかないっ!」


「ああ、二刀流の奴は、俺に任せろっ!」


「その前に、私が相手に成るわっ!」


「これでも、喰らええっ!!」


 ゴボウ銃剣を片手に、賢一は向かってくるギャング達と、交戦しようと身構える。


 ジャンは、素早くペティナイフを投げようとして、手を勢いよく振るわんとした。



 しかし、それよりも早く、モイラが前に出てきて、二人に襲いかかるギャング達を奇襲した。


 また、その背後から、丸ノコを投げつけて、メイスーは突撃してくる敵を攻撃した。



「うぐっ? し、死ぬのは…………がはっ!」


「グエエエエッ!?」


「やったわ、次は誰が相手してくれるんだい?」


「ひぃぃっ! 血、血がっ! ゾンビより出てる? まだ、あんなに敵も…………」


 竹槍を両手から落とし、アジア系のギャングは、腹を、マチェットに裂かれて倒れてしまった。


 太平洋系のギャングも、丸ノコを喉元に受けて、口から血を撒き散らしながら、後ろに転んだ。



 敵を倒したばかりのモイラは、次なる敵に狙いを定めると、路上を爆走する。


 その背後から、メイスーは中華包丁を構えつつ、戦闘自体を怖がりながらも、なんとか彼女を追う。



「クソがっ! 後ろの連中も殺るぞっ!」


「殺られないわよっ!!」


「野郎、ぶっ殺してやるっ!」


「死ぬのは、お前たちだっ! この略奪者めっ!」


「こっちも、まだ戦えるわよっ!」


「そうだ、負けるワケには行かないっ!?」


 ギャングと生存者たちも、双方が乱戦で、つばぜり合いに突入する。



 大柄な白人ギャングは、鉄パイプを両手で頭上に掲げ、そこから一気に振り下ろす。


 細身の黒人女性ギャングも、ダイバーナイフで、鋭い突きを何度も放つ。


 ラテン系のギャングは、木槍を構えながら走りだし、敵を串刺しにしようとする。



 白人生存者は、振り下ろしを避けると、鉄筋を両手で握り、反撃に移ろうとした。


 ゴミバケツ蓋を構え、白人女性の生存者は、攻撃を受けつつも、逆に突進する。


 東アジア系の生存者は、自らに向かってくる鋭い細木を、ヌンチャクで叩き弾く。



「俺たちも忘れるなよっ!」


「狭い路地から、こんにちは」


 乱戦で、両者が武器を振るっている中、右側の狭い路地から、いきなり二人組が現れた。


 それは、ボロナイフを握るダニエルであり、険しい顔の彼は、まっすぐに突っ込んできた。



 ハチェットを肩に担ぐ、エリーゼも敵を蹴散らすべく、高くジャンプしながら相手を睨んだ。


 その表情は冷たく、やがて彼女は、落下しながら強烈な攻撃を放った。

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