『わたしたち、しばらく距離を置いた方がいいと思うの』
恋人の
『おれが悪かった。
冷蔵庫のプリンを勝手に食べた。
なんて身勝手なことをしたのだろう。
雅美がいちばん大好きな食べものだってことを知っていたくせに。どんなに後悔してもし足りない。だから今回だけは許してほしい』
するとほどなくして雅美から返信が届いた。
『勘違いです。わたし、そんなことでは怒りません』
なんと、そうだったのか・・・・・・。
やっぱり雅美の歯ブラシで歯を磨いたことに腹を立てているのに違いない。
こっそり使ったからバレていないと確信していたおれがバカだった。
ぼくはすかさずメールした。
『だよね。
雅美がそんなことで怒るわけないよな。
きみの歯ブラシを使ったことは本当に悪かったと思っている。
だけどあの日は早朝会議があったから仕方なかったんだ。
ぼくの歯ブラシが見当たらなかったんだよ。今度もっといい歯ブラシ(馬の毛とか)買って返すから許してくれ』
するとすかさず雅美からメールが戻ってきた。
『ええ!わたしの歯ブラシ使ったの?
知らなかった。
でも替えがあるから買ってくれなくていいよ。
さようなら、お元気で』
ちょっと待ってくれ!歯ブラシの件じゃないのか!
すると、やはり彼女の親友と浮気したのがバレていたんだな。くそう、あんなに注意を払ったのに!
おれはメールを返した。
『ごめんよ。最初から分かっていたんだ。
砂子のことだよね。あれは本当に事故だったんだ。
そんな気まったくなかったのだけれど、なんかそういう雰囲気になってしまって・・・・・・いや、もちろん最後までは行ってないよ。
だからおれを信じてほしい。おれの愛する女は雅美、お前だけなんだ。
だから別れるなんて言わないでくれ。お願いだ』
『さっきからなに言ってんの。
もう我慢できないわ。
ここはイタリアでもなければフランスでもないのよ。
そして今はジメジメした湿気の多い日本の夏なの。
革靴を素足で
臭くてもう死にそうなのよ!』