「ボウリングやろうぜ」とつぜん
「ボーリング?」
「
「ああそう。道彦、ボウリング得意なのかよ」
「まあね」
「ぼくあんまり運動神経よくないから・・・・・・」
「新しいボウリング場ができたんだってさ。人気なんだってよ。話のタネに行ってみようぜ」
「いいけど・・・・・・暇だし」ぼくたちはその駅前に出来た新しいボウリング場に行くことにした。
※※※※※※
広々としたレーンに、ボールに弾かれたピンの乾いた木の音が響き渡る。
ぼくたちはまず、フロントで靴とボールを借りることにした。裸足の道彦は靴下まで買わされてブスッとしている。ぼくは軽めのボールを捜した。
「男は重たいボールだろう」といいながら、道彦はずっしりと、一番重いボールを選んだ。道彦のボールは黒だ。軽めのボールだとカラフルな色になるらしい。ぼくのボールは緑色をしていた。
ぼくらの順番が来たので、レーンのベンチに腰をかけた。すると同時に隣のレーンに二人組の女子がプレーをはじめたのだった。道彦はぼくに目くばせを送った。(今日はついてる)そんな目だった。
道彦の第一投目。勢いよく後ろに振り上げたボールは、その重さに耐えきれず、無残にも道彦の後ろに落っこちて転がった。
「あれ?」
頭を掻いた道彦を見て隣の女子がクスクス笑った。
「ごめんなさい・・・・・・つい」そう言いつつ肩がひくついている。
道彦は頭をかきながらボールを交換しに行った。
隣のレーンの長い髪の女子がボールを投げる。美しいフォームだった。ボールはピンの手前で鮮やかなカーブを描くと、10本のピンを綺麗に薙ぎ倒した。ストライクである。もうひとりの短髪の女子は彼女ほどの腕ではなかったが、そこそこ上手かった。
新しいボールで気を取り直した道彦は、馴れた動作でボールを放った。本人はストライクのつもりだったのだろうが、右隅に2本のピンが残った。道彦は慎重に残ったピンを狙ったが、倒れたのは1本だけだった。
さて、次はぼくの番だ。
呼吸を整えて投球フォームに入る。歩幅が合えばいいのだが・・・・・・ちょうどその時、隣のレーンの短髪女子の投球とタイミングが被ってしまった。
ぼくは自分のモーションに急ブレーキをかけたが間に合わなかった。ぼくの投げたボールは惨めにも右側の側溝に飲み込まれて行った。
短髪の女子と目が合った。ちょっと気まずかった。
「あ~あ。
「武司。それを言うならガータ。ガーターって伸ばすと女子のストッキングを
それが聞こえたらしい。隣の女子がゲラゲラ大笑いしている。ぼくは恥かしさで真っ赤になりながらもゲームを続けた。
道彦はさすがにぼくをボウリングに誘っただけのことはある。スコアが170を超えた当たりから、ドヤ顔で席に戻ってくるようになった。
「ねえ、きみたち大学生。次のゲームで試合やらない?」
髪の長い女子が話しかけて来た。女優のだれかにちょっと似ている。
「いいけど、俺ら実力が違い過ぎるから」
道彦がぼくを見ながらそう言った。
「じゃあ、男女混合でやりましょうよ。わたしとあなたが別れれば、ちょうど良さそうじゃない」
なるほど。超ヘタクソなぼくと、まあまあ上手い道彦が別れれば平均が取れそうである。
「いいよ。じゃ、敗けた組が勝った組にジュースをおごるってことで」
試合が始まった。
髪の長い女子は
やはりボウリングは男女でやった方が断然楽しい娯楽だった。どちらかがストライクを取るたびにハイタッチができる。彼女たちの無邪気な笑顔をみるだけでも幸せな気分になれた。
時間が経つのがもったいなくて、道彦とぼくは意味もなく入念にボールをタオルで拭いたり、指を送風口にかざしてみたりした。試合は結局足を引っ張ったぼくのせいで道彦・美帆ペアの勝利に終わった。
「じゃあぼくがジュース買ってくるよ。なにがいい?」
「俺コーラ」と道彦が笑う。
「じゃあ、あたしはドクター・ペッパー」美帆も微笑む。
ぼくが瓶ジュースを4本持って帰ってきたところでタイムオーバーになってしまった。
「楽しかったわ。またやりましょうね」女子ふたりが笑顔を残して去って行ってしまった。
スコアが印字されて出て来る。道彦のスコアの隣にB、ぼくのスコアにはEの記号が入っていた。ぼくらは料金を支払うためにフロントに行った。
「いかがでしたでしょうか。当店自慢の“恋愛シミュレーションつきボウリングゲーム”は」
「あの」ぼくは言った。「Eは最低ランクですよね。もう一度リベンジお願いしたいんですが・・・・・・」
「あいにくですが、現在予約が詰まっておりまして・・・・・・“