「きみ。経済財政政策担当としてこの不景気をどう思うね」と、苦み走ったダンディーを絵に描いたような首相が大臣に尋ねた。
「いやあ、参りましたね」大臣が汗を拭う。「なにしろ物が売れない時代なのです」
この大臣、少々頼りなさそうに見えるところが愛嬌があってちょっとかわいい。
「なぜ売れないのかね?」
「値段が高いからです」
「安くすればいいじゃないか」首相が鼻で笑う。
「もちろん安くするように企業に働きかけました」
「それでどうなったのだ」
「その分、企業の儲けが減って、従業員の給料を下げざるを得ませんでした」
「そうすると・・・・・・」
「物が安くなっても消費者は買い控えをするようになりました」
「それじゃあもっと安く売ったらどうかね」
「首相。それでは切りがありません。それこそデフレ・スパイラルというものです。そうだ!」大臣が言った。「いつもの手で乗り切りましょう」
「減税か」
「あと、道路や橋をたくさん作って公共事業の支出を増やしましょう」
「日銀総裁に言って、金利を下げさせるとしよう。金利が下がれば企業が新しい事業を立ち上げられる。そうすれば仕事も増えるというものだ」
「首相。それだといつもとまったく同じ対策ですよね。またマスコミに叩かれませんか?」
「ううむ・・・・・・あとひとつ。妙案がある」
※※※※※※
「あとひとつ」大臣が人差し指を立てた。「首相からとっておきの対策提案がございます」
報道陣は
「ええ・・・・・・」首相が報道陣を見回した。「来年度より、女性のスカートの丈を膝より上にするという法案を国会で決議いたします」
報道陣からどよめきが起こった。
「首相!」メガネを掛けたグリーンアスパラのように細長い記者が手をあげる。「それはいったいどういう狙いがあるのでしょうか?」
「きみ。『ヘムライン指数』を知らないのかね。女性のスカートの丈が短くなるほど景気が良くなるんだよ」
「お言葉ですが」アスパラのような記者は声を上げた。「それは逆ではありませんか?景気が良くなったから女性のスカートが短くなった・・・・・・ですよね」
「いいかね。女性のスカートが短くなると、それを見た男性が元気になって子供の出生率が上がる。少子高齢化で減少し続けるわが国の生産年齢人口に歯止めがかかれば景気は良くなる・・・・・・どうだ!」
「首相。風が吹いたら