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第50話 最大のリスクが突如現れた




「にしても澄美怜すみれちゃん、スゴくキレイになってて驚いちゃった。も~あの頃から本当の妹みたいに思ってたけど、増々可愛いねっ!」


 昔から何故か澄美怜すみれにだけは凄く親しげで優しくしてくれた。それは今も変わってない様だ。


 ……ああ、相変わらず何の屈託もなく私のこと全面肯定してくれる。あの日のままだな……


「いや、そんなぁ。お姉ちゃんこそ!」


 ……増々可愛いのはそちらですよ。何ですか、その笑顔の眩しさは。もう反則ですっ!!


「お姉ちゃん! ああ、その響き最高。私、一人っ子でずっと妹欲しくて澄美怜ちゃんといつも一緒だったから本っ当にうちに養子に来て欲しいくらい! ああ、可愛いなぁ―」


 澄美怜すみれの背に手を回し肩を寄せて距離を縮めてくる。一瞬、花の香りに包まれた。


 って……妖精みたいな笑顔でそんな風に言われると……本当憎めない人。結局私も大好きです。こんな無条件で愛されたら……う―、蘭ちゃんの気持ち、分かっちゃったかも……


「でもこの前はとつしてしまって本当にゴメンね。しかも取り乱しちゃって……。深優人くん、歓迎してくれて、しかも会いたがってくれてた様な気がしたけど私、気が動転してて……ねえ、彼は実のところ今、彼女さん……とかっているのかな?」


 ……さあ、もう核心をついて来ましたね。やっぱりこの人もきっといつもお兄ちゃんの事ばかり考えてるんだね。


「気になりますぅ? ますよねー 」


 ……うんうん。再会で泣いちゃう程だもんね


 百合愛ゆりあは少し困ったような笑顔となって俯いてから澄美怜へとニコリと返した。色々知りたいんだろうと悟る澄美怜すみれはその辺りを話す事にした。


「実は百合愛お姉ちゃんが渡米してからすぐにあの家を借りていた人のが、お兄ちゃんと同学年で……1ヶ月くらい前迄の3年問ずっと一緒で、特に最後の1年くらいは……いわゆるそう言う存在でした。それはもうガチでピッタリ憑依されてました」


「憑依?」


「はい! ほぼ朝から下校するまで凄かったです……」 


 ……そしてゴメンナサイ、その前後の時間帯は私が憑依してまして。しかも今でも、テヘヘ


「そう……」と、少し顔が曇る百合愛ゆりあ


「あ、でも今は別れて、その子は九州へ行ってしまって。だからフリーの身かと」


 最も一緒に居たかった時期を逃した事に……深い仲だったのかな……と少し嫉妬の表情を垣間見させる百合愛。察した澄美怜すみれは、


「仲は良かったみたいです。ただどちらかと言えばちょっと友達的なカンジで」


「そっか。じゃあこれから近づいても迷惑じゃないって事かナ」


「……多分……」 と、少し俯いて、瞳と言葉を濁す澄美怜。


 ……薊さんがいなくなったら今度は最強最愛の人物登場とか……ああ私、前途多難だな。何か行いでも悪いんだろ―か?

 だって薊さんはお兄ちゃんをある意味シェアする提案をしてくれた。昔の百合愛お姉ちゃんは共有させてくれた。でも今この年頃の関係でそれはきっと無理。だからこの先はほぼ結果が見えてる。


 高校に入ったら新しい友達を作ってもっと世界を広げて~等と考えた事などすっかり飛んでしまっている澄美怜すみれ


 それもそのはず、最大のリスクが突如現れたのだ。結局兄を失う事に抗えない。もはや本能がそうさせているレベルで。



 故に―――



「あ、でも私達も仲いいんです。(って私、急に何を?! 張り合っちゃダメでしょ?)」


「え? 知ってるよ?」


 ……って、平然とそう言われるとちょっと……


「えっとぉ、思ってる以上に仲良くなって。(兄に恋してるとは言えないけど)」


「フフッ、いや、凄く仲いいって分かってるつもりなのだけど?」


「えと、そう言う事じゃなくて、多分百合愛ゆりあお姉ちゃんの想像をずっと越えてて。(誰か~っ、私を止めて下さい!)」


「そ―かな―、昔から澄美怜すみれちゃんて、それはそれはお兄ちゃん命だったから、それ以上って言われても想像つかないなぁ……クスッ、例えばどんな?」


 いでよ、インパクトあるネタよ! えっとあれ、無いかも。いや、負けるな私!


「そうそう、二人だけで何時間もカラオケ行ったり」


「それは想像越えないかな―」


 う―っ、他にも何か……何かしらあるハズッ!!


「最近も休日、『一日中』お兄ちゃんの部屋に居たし」


「うん、前もそうだったね」ニコッ


 え? そうなの? 自覚無かったし。うぐー……ハッタリでもいいから何か……


「じゃ、じゃあ一緒におフロも入るんです!(ヤバっ、つい気張り過ぎた! )」


「クスッ……さすがにそれは昔話では?」


 全然笑顔で余裕だ~、なんでぇ~?!


「いえ、そ、そうでもないですよ! ついこないだも仲良く! (だから誰か止めてーっ……ああ墓穴。一緒に入ったなんていつ? 3、4年前?)」


「ホントー?」


 あ、かかった……


「はい。最近です! (私なに突っ張ってるの~!)」


「ホントに~? うーん、でも確かにこんな妹がいたら私も一緒に入ったりしちゃうかも」


「え?……(お姉ちゃん話しが斜め上です~)」


 やっぱ天然だー。うー私の事なんて全くライバル対象外だし……まあそうだよね。


「きっと深優人くんも同じ気持ちなんだろうな。うん、今度聞いてみよぅ!」


 しまった!……この人マジ天然だから本当に聞かれかねない……どうしよう……










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