「……お姉ちゃん……」
「なぁに?」 〈ニコニコッ〉
「好きですっ!! (はっ、いや……浮気ゴメン兄さん!)」
「私もよ、フフ」
……ついうっかり告ってしまった……けど、天然だから意に介してなくてよかった~。
でももしお兄ちゃんという人がいなければこの人に本気でアタックしてしまっていたかも知れない自分が怖い……てゆうかほぼしてたけど!
『――やっぱり妹ってのは恋愛における不可能性そのものなんだね。 絶対的ムリゲーだね。』
……そっそうだ! あの事を聞くんだった……
―――他愛もない話のあと、昨日の作戦を実行に移す。
「ところでお姉ちゃん、お兄ちゃんの事、どう思います?」
「大好きよ」
いやいや、何の躊躇も臆面もなく大胆な! でも先日の移り香……きっともう二人は……
「ですよね―。もうお姉ちゃんは彼女……という事かな……」
「澄美怜ちゃん的に、どこからがそうなのかな」
「まぁ、やっぱりキス……とか?」
「なるほどー」
「……って、で、どうなんですかっ(もう私、ここまで自虐的になってる……)」
ん―、とアゴ先に人指し指。少し間を置き、それは私だけのプライバシーではないからノ―コメント、と言って、クスッ と悪戯っぽく笑う。
「あ―、もう……、じゃ、話を変えますね。妹という立場についてはどう思います? たとえば羨ましいとかってありますか?」
「うん。やっぱり何時も一緒に居れたり、部屋にだって入りたい放題でしょ。勉強だって教えてもらえる。それに飾っていない本来の姿も見れたり。それ出来るのってもう、あとは夫婦ぐらいだよね―」
「幻滅とかするかも知れませんよ」
「あと人生相談とかも、し放題だしね」
もしもーし、幻滅のコト、聞いてましたか―? 眼中無いですね、幻滅なんて。確かにそうでしょうね、心が通じちゃう位なんだし。
「友達以上に仲良くする事だって出来るし。澄美怜ちゃんいいよね~」
く~、なんなら交代しましょうよ! ―――でもそうか、やっぱ端からみたらいい事だらけなんだ……
「そうだっ! あと誰かさんみたいに一緒にオフロとか入れるし!」
そう言いながら流し目でちょっとからかう様に微笑む
……うっ、これは天然? それともイジワル?……だったら!
「入りたいですか? ニヤリ……(アリバイ作ったから一応堂々と言えるし!! )」
「何聞いてんのー?! フフフ」
「アハハ~…………………」
一瞬、妙な間が開いたあと、
「……じゃあ……。……もし……もしその友達以上の先に恋愛感情を持ってしまったとしたらどうですか?」
「……それは苦しいわね。 キスやその先もないし、辛いな。本当に真剣ならそれは……傍にいるだけむしろ『お預け地獄』 だね」
思わず心の頷きが表に出そうになるも堪える
……はいっ、正にそうなんです! 私は恋愛界最大のハンデを負ってるのです。その点、お姉ちゃんはいいですよね!
そう思いつつ、羨ましそうに横目でみる
「……でもね、
―――百合愛……お姉……ちゃん……?
「え……だって両想いなら出来ちゃえば良いじゃないですか……?」
「大人ならね。でも精神は大人で経済的、物理的に不可能で心だけ変えられなかったら?」
「そしたら両想いの分だけさっき以上の、それこそ究極のお預け地獄ですね(はっ!)」
―――それってまさか……この人は……それを……3年間も出口も見えず……私はたったこの1年足らずで死にそうに滅入ってきたのに……
それは想像を絶する苦痛。……そしてそれに堪えてきた……
『向こうで骨と皮のようになってしまって………』
風の便りで聞いた渡米後の百合愛。
「あ、ゴメン、質問から外れちゃった、えっと、そうなったら、やっぱり諦めるのが不可能なら、自分が消えるか、懇願でも何でもして駆け落ちとかしてもらうかしかないかもね」
「ナルホドー、確かにそうですね」
きっと……この人は何度もそんな風に考えたに違いない……私は自分が一番悲劇のヒロインの様な気でいたかも知れないけど違う。
この人は兄から愛される特別を持ち、全て恵まれた外見も有って何一つ不自由ないと思ってた。
でも私以上に苦しんで来た……上には上がいる………
―――だけど今はそれを取り返せる立場なんだ……
**
その夜、
「お兄ちゃん、少し時間あるかな?」
「うん、いいよ。どした……?」
「……ちょっと人生相談とか……」
進学の事やら人生観とか、それっぽい話題をしたついでを装っていざ本題ヘ。
「……前に恋心は持つなって言われたけど、でも兄妹として愛してるって言ってくれたよね? 守ってくれるって。……じゃ、例えばもし私が何か事情が出来て駆け落ちしたいって言ったらどうする?」
「かけ……?!」