全てを知ってしまった
張り裂けそうな想いは、もう押し留める事を赦さなかった。
……このまま問題を先送りにすればいつかは二人結ばれて、私はあの力の庇護を受けられなくなってしまう。そして暴走したら今度こそ大変な事に……
そんな事に成るくらいなら……
だからこれ迄の恩に感謝して思いのたけを伝えられたら、後は兄さんを自由にしてあげたい。そしたら思い残す事は無いはず。
この闇を抱えた人生でも、兄さんのおかげで十分幸せだったのだから。
―――そう、やっと成すべきことが見えた。
*
両親から聞いた衝撃の真実から数日考えつくした澄美怜。今迄の自分を見つめ直し、やがて気持ちの臨界点を迎え、覚悟を決めた。
血の繋がりの真実を伝え、あの『告白へのリベンジ』をすることを。そう、『リベンジで告白』するのではなく……。
私の恋とあの日の約束の行方はもう見えた……。
きっと長びかせるほど回りの人達の傷を大きくするだけ。
だから……
……全て悔いなく伝え終わったら約束はもう……そして……消えて行きます……許してね……
自室の机の引き出しには大量の睡眠薬が用意されていた。
***
そうして
短い前置きの後、まず両親から聞いた真実を余す所なく伝えた―――
……普段はおどけてるけど真剣な時は強くて冷静な兄さんが内心相当驚いている。でも私が何の為にわざわざ血縁のない事実を伝えようとしているのかは十分予測が付いている。けど、むしろその方が話が早い……
「私は……あの日の告白をやり直したい。妹としてではなく。だってあんなに卑屈になって伝えた……あんなの告白じゃないって思ってた。
私は兄妹でない事を……他人である事を知って自分の気持ちが何なのか見つめ直して、そして分かった。だから本当の気持ちを伝えるから聞いて欲しい……」
目線を合わせず耳を澄ます
「兄さんは私が生来感じていた『ここに居てはいけない』という心の闇からその力で守る約束と生きる勇気をくれた。そして実際守り続けてくれた……」
「……」
「兄さんは『私が存在しなければ絶対イヤだ』 そうも言ってくれた。生きてく理由と希望を私に与えてくれた………」
静かに床へと目線を落とす
「……
そこに生まれた私の想い。私が生きることを願ってくれたこの人の為に存在したい、そしてこの人に想われ続けたい、そして全てを捧げたいと。
―――その想いこそが私の全て。
それは約束の日に既にもう最大で、そこから1ミリも減ってない。
それを私は最近恋心が育って来たなんて勘違いしてた。恋の季節になって、それが奪い合いだと知って、失う怖さからこの最初の掛け替えのない想いに段々と気付かされていっただけだった。
だから……私の想いは最初から全部兄さんがくれたんだよ!」
「―――俺は……あたり前の事をしただけだよ」
「当たり前なんかじゃないっっっっ!! 」
その今までにない魂の叫びにも似た何か。
気圧され目を丸くする
「
「小学生になってからは自発的に見守り続けたって父さんから聞いたっ! だからどの発作でも対処出来た。
偶然近くにいて癒してくれてたんじゃないって初めて知った」
「いや、偶々《たまたま》…」
「嘘っっっ!!!」
誤魔化される筈もない。全てを知らされたのだから。
「……何時も陰から見守ってくれてた。……ううん、それどころか、その力で癒したあと、もの凄く消耗するって聞いた……。
そんなの知らなかったよっっっ!!!……。
そのせいで入院寸前まで行ったなんてことも……全部ひた隠しにして堪えてくれてた……。そうやってどんな時も無償の愛で支え続けてくれてた!」
「……」
「でもね、知らなくても感じてた。どれだけ私の為を思ってくれてたかを……感じてた。 ……その分だけ兄さんを想う気持ちが、どうしようもなく掛け替えのないものになっていった……」
ゴクリと生唾を飲み込み、口調を緩めた
「……けどね、そんなに想っていてもね……うっ……好きと言うことも、言われる事も許されない『妹』という立場を後から知って……ずっと、ずうぅっと我慢してきた。それでも時々我慢しきれずあふれてしまって何度も迷惑をかけた……ズズッ……」
……そう、私が7才の時、兄さんが自害を阻止して約束してくれた日、この人は私の全てとなった。そしてそれは生涯続くと……
でも後から知らされた。兄妹は
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もしも身近に一生を誓い合った唯一無二の人が居たとして。
当然結ばれると信じて生きて来て。
それがある日、意識した時に……
そう、例えば今この瞬間、兄妹だったと知ったら……
―――その時、あなたはその想いを諦められますか?
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