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第14話 一時加入

 その後様々な試験を受けた結果、無事に我は冒険者になることに成功した。というか、全員合格だった。ろくに走れず、すぐにへたり込んでる者も多かったのだがな……それでも講習さえちゃんと聞いていれば、問題ないようであった。ランク1ならそんなものなのかもしれぬ。


 しかしこれほど容易にライセンスが取れるなら、もっと手を抜けばよかったかもしれん。少々目立ち過ぎた。


 我は一番にならぬように手を抜いたわけだが、我が参考にしたその一番の奴は、どうも人類最強クラスだったらしいのだ。


 なんでも、勇者候補の一人であったとか。


 我は勇者候補を参考に走ったり武器を振るったりしたものだから、良い結果を出し過ぎてしまったのである。


 なんでこんなところで勇者候補が冒険者になろうとしてるのだ? そんなの我は想定しておらぬぞ。


 そのせいで、我も勇者に立候補しないかと声をかけられてしまったほどだ。


 それにしてもこの世界の勇者って、立候補するものなのか? よくわからんな。勇者も魔王も、複数いるという事だけは知っているのだが。




 まあとにかく我は無事に冒険者になれたので、さっそく働き始める事にした。


 冒険者とは、なんでもかんでもとにかく魔物を狩ればいいというわけではない。ギルドの討伐対象になっていない魔物は、狩っても意味がない。


 誰もいない山奥に住む熊を、わざわざ殺す必要があるか? と考えればわかりやすいだろう。ギルドにも、無意味な討伐に報酬を払う余裕もないしな。


 そんなわけで、冒険者が狩ることを求められている魔物には二パターンある。常時討伐が推奨されている魔物か、今すぐ緊急で倒してほしい魔物だ。


 緊急は報酬の割が良いのだが、なかなかない。あるいは、あってもランク1では討伐を任せてもらえない。街道沿いに出没している魔物とか、町の近くに出没している魔物などが、危険度に応じて緊急討伐対象になったりする事があるようだ。


 この緊急討伐対象が多いと冒険者としては稼ぎ時なのだが、それは町が危険にさらされているということでもある。緊急討伐があまりないのは町が安全な証拠だ。


 この町はかなり安全で、今は緊急討伐などないようだ。仕方ないので常時討伐が求められている魔物たちを狩ることにする。


 魔物を討伐しなければいけない理由は様々だ。まあ基本は危険だからなのだが、そのほかに魔物の素材が必要だからという場合もある。


 まあぶっちゃけ我ほぼ最強だし? 町周辺の討伐対象の魔物をすべて殲滅してしまおうか。そうすればそこそこの儲けになるだろう。


 我が本気を出せば辺り一帯を焦土にして、何もかもすべてを討伐するという方法もある。が、そうすると討伐した証明ができないし、素材も消し炭になってしまう。しかたないので、地道に一体ずつたおしていかなければならんようだ。


 これでまとまった金額を得るのは結構大変かもしれん。しかし、これが真面目に働くということでもある。仕方あるまい。


 面倒だから、金持ってて殺しても心が痛まぬ悪人がどこかにおらぬかな、なんて考えも少しよぎったが……コツコツ稼ごう。




 そんなわけで一人で爆速で魔物を狩っていたわけなのだが、そうしたらある日、ギルドからとあるパーティに加入しないかと提案を受けた。


 なんでも、訳あってパーティメンバーが減ってしまっていて、困っているパーティーがあるのだとか。


 我はソロがいいと言い張ったのだが、一時的にでもいいのでどうしてもお願いできないかと言われてしまった。我とそのパーティに、急ぎでやってほしい仕事があるようだ。それはダンジョン調査だ。


 ダンジョン調査と聞いて、まさか我のダンジョンか? と、よぎったが、どうも違うダンジョンのようだ。しかし、油断はできない。我がダンジョンにもいずれ調査が入る可能性もある。


 どのような調査が行われるのかも気になるので、我はその調査に参加してみることにした。収入も良いようだしな。


 本来ダンジョンの調査は、ギルドランク1ではできない。しかしまあ、裏技というか抜け道があるようだ。それがパーティ加入というわけだ。


 ギルドランクの高いメンバーのいるパーティに加入すると、そのメンバーと同等の仕事をランクが低くてもパーティでなら受けられるという。


 早めにダンジョンの調査を行ってもらいたいが、今調査にいけるパーティは人数が減ったばかりで戦闘力に不安が残る。


 そこで、最近魔物狩りで大暴れしている新人の我に、白羽の矢が立ったのだとか。


 人間のパーティに混ざってやっていけるかどうかは少し不安だが、まあ何とかなるだろう。


 そんなわけで、ギルドが我に加入を勧めているそのパーティのメンバーたちに合ってみる事になった。

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