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第15話 対面

 我はギルドの二階で、とあるパーティのメンバーたちと顔合わせをすることになった。


 そこにいたのは三人の人物だ。全身を覆う鎧を着た背の高い人物と、それから黒いローブを着て大きな杖を持つ魔導士のような姿の、背の低い赤髪の女性。そして、どこか見覚えのある、金髪ショートヘアの碧眼の美女だ。


「なるほど、ギルドが紹介したいのは君か。たしかに、君ならば私たちについてこれるかもしれん」

「知ってるの?」


 見覚えのある女性と、魔導士のような女性が言う。


「いや、ギルドの試験を一緒に受けただけで、私も良くは知らん。しかし、試験結果は私とほぼ同等。少なくとも私たちの足を引っ張ることはないだろう」

「うそ!? 勇者候補のミライと!? 信じられない」


 魔導士のような女は、驚きながら我をまじまじと見つめる。


 見覚えのある人物は、そういえばこの前ギルドのライセンスを取るときに一緒だった女性か。たしか、勇者候補の。


「初めまして。私はミライ・ディ・ユーシャ。ミライと呼んでくれ。試験以来だな、私の事は覚えているか?」

「もちろんだ。他の有象無象はさておき、君は目立っていたからな」


 正直我は、いい尻をしていたことぐらいしか覚えていなかったがな。


「サタンだ、よろしく」


 我はそういうと、手を出し出した。握手だ。


「ああ、よろしく」


 こうして、我とミライは手を握った。


「さて、本題に入ろう。君は私たちのパーティに加入する意思はあるか?」

「ふむ、一時的になら加入しよう。だがダンジョン調査の間だけだ」

「それはなぜ?」

「我は集団行動は好まんのだ」


 それに、常に一緒に行動すると、何かのきっかけで我が魔族であることがバレてしまうかもしれんしな。


「なるほど……本来なら一時加入など認めないが、私たちだけでダンジョン調査を行うのは不安なのも確かだ。メンバーが減ったばかりで、安全な探索ができるとは言い難い。――わかった、ひとまずそれでいい」

「ちょっと、勝手に決めないでよ! こんな奴いなくても、私たちだけでもなんとかなるわ! どうしてもというなら、私に実力を見せてみなさいよ」


 魔導士のような少女が我らの会話に割って入ってくる。


「すまないな、マホがこういっているのでつきあえってもらえないか? それに、お互いの実力を確認することは、連携するうえでも重要だろう?」

「いいだろう」




 そんなわけで我らはギルド傍の広いスペースにやってきた。試験の時に使われた場所だ。そこで我は魔導士の少女と向かい合っていた。少女の名はマホというらしい。


 どうもマホは、我と模擬戦がしたいらしい。


 さて、我が本気を出せばすぐにでもマホの首元に剣を突き付けて降参を迫ることも容易だ。しかしあまり実力を出しすぎるわけにもいかんだろう。試験で手を抜いていたこともバレてしまうしな。


 かといって手を抜きすぎるとパーティ加入を認めてもらえんだろう。なかなか難しいが、マホよりほんの少し上の実力を見せるのがいいか。


「武器も構えていないようだけど、もう始めてもいいの?」

「うむ、いつでもよい」

「舐めてくれちゃって、後悔しても知らないわよ。それじゃミライ、開始の合図を」

「――開始!」


 ミライの合図と同時に、マホはなにやら魔法の準備を始めた。マホの頭上に炎の塊が浮かび上がる。それは徐々に大きくなっていく。


 ううーむ、魔法の発動おっそいなー。我ならあれが発動する前に、間の距離を三往復してから剣を突き付けることも可能だ。まあ、これでも人間の中では上澄みなのかもしれんが。


 剣で切りかかってもいいが、それでは実力差が分かりにくいであろう。そこで、我は相手と同じ土俵、つまり同じ魔法で勝負することにした。我も同じく魔法の準備を始める。我の頭上に炎の塊が浮かぶ。それは、マホのものより若干大きなものだ。


「う、うそ!? 魔法使えるの!? ふん、でも魔法で私と勝負しようなんてバカね。魔法学園でトップだった私に勝てるわけないわ! いっけー!」


 マホの魔法が飛んできたので、我はその魔法に自分の魔法をぶつける。二つの魔法はぶつかる……そして、マホの魔法だけ弾けとんだ。我の魔法はそのままマホのところへ向かっていく。このままだとマホを消し炭にしてしまうので、我は魔法が当たる寸前で魔法をかき消す。


「そ、そんな……」

「我の実力はこんなところだ。加入してもよいか?」

「い、インチキよ! なにかイカサマしたんでしょ!」

「マホ、落ち着け。イカサマで魔法が撃てるわけない事は、君が一番よくわかっているだろう?」

「だって、だって、うぅ……」


 な、泣いてる!? 我、やりすぎた!?


 少女を泣かせてしまうというのは、心が痛むな。

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