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12. 優越感

12. 優越感




 ギルドで一悶着あったけど、私たちは黒い霧の原因を探るために街の北にあるという古城に向かうことにする。


「ねぇロゼッタ様?その黒い霧ってこの前の洞窟にいた黒い魔物と何か関係しているのかな?」


「さぁね。それを調べにいくんでしょ?とりあえずルナとギル坊は気をつけなさいよ?」


「うん!わかった!」


「分かりましたロゼッタ様」


 黒い霧がこの前の黒い魔物と同じなら間違いなく危険だしね。というかまたあのくらいの魔法使わなくちゃダメなのかしら……結構疲れるから嫌なんだけどさ。面倒だし。


 しばらく歩くと大きな古城が見えてきた。外観は綺麗だけど、所々崩れている部分があったり、蔦が絡まっていたりと、かなり古い建物であることがわかった。そしてかなり大きい門がみえる。


「なんか不気味……ドラキュラとかがいそうだね?」


「ルナさんはボクの風魔法で守ります。血なんて吸わせませんから!」


「うん。ありがとうギル君!」


「ドラキュラなんていないわよ。そんなもんがいたらお伽噺の世界だわ」


「魔女のあなたがそれを言うんですね。」


 なによ?魔女とドラキュラを一緒にするんじゃないわよ。まったく。


「とにかく入るわよ。」


 私たちは中に入ると、そこにはボロボロになった鎧や剣が散乱していた。そして壁には傷跡のようなものもあり、戦闘の跡が残っていた。そしてあの時と同じ、魔女特有の魔力を感じた。間違いない。ここにいる。私は警戒しながら進む。


「ロゼッタさん。どうなんですか?」


「まだ分からないわ。でも感じる。確実に近くにいる」


「じゃあさ……!」


「ルナ。静かにしなさい。」


 私はルナの言葉を止める。するとどこからか声が聞こえてくる。


「そこにいるのは誰だ?私を呼んでいるのか?」


「っ!?」


「上ね!」


 私たちは一斉にその場から飛び退く。次の瞬間上から巨大な影が落ちてきて地面に突き刺さった。


「私の城を荒らすのはお前たちか?人間どもめ!今すぐここから立ち去れ!」


「ドラキュラ!?本当にいた!?」


「下がってなさい!ルナ、ギル坊!ディアナお願い!」


 私たちの前に姿を現したのは全身真っ黒な服を着て、見た目人間のように見えるが、コウモリの羽が生えた男だった。明らかに雰囲気が違う。そして……あの黒い魔力を身に纏っている。


「貴様らはなんだ?何故私の城にいる?」


「それはこっちのセリフよ。あんたのその魔力……一体どこで?」


「ふん!答える義理はない。私の城に無断で入ったことは許さないぞ!ここで死ね!」


「そう、なら遠慮はいらないわね!受けてみなさい!爆炎魔法・バーストジャベリン!」


 私は魔法陣を展開する。そして無数の火の槍を放つ。しかし相手はそれを軽々と避けた。


「くそ!ちょこまかと!」


「小娘が調子に乗るな!はぁぁぁ!!!」


 その男が手を振り下ろすと、地面が割れ、地響きとともに、いくつもの石柱が現れた。そして私たちを襲う。その魔法をディアナは防御魔法で防ぐ。


「ロゼッタさん。安心してください。私が守りますから」


「頼んだわよ。私はその間にあの男を叩く」


 男は黒い魔力を纏いながら笑っている。やはり、あの黒い魔力が関係してるみたいね。


「ふははははは!!!私の魔法を防ぐとはやるではないか!だがこれで終わりだ!喰らえぇえ!!」


「無駄です。防御魔法・ファランクス!」


 ディアナの防御壁が軽々と男の攻撃を阻む。


「チッ!ならばこれはどうだ!ダークネスボール!!」


 今度は闇の球体が現れ、ディアナに向かって放たれるが、それもディアナの防御魔法によって阻まれる。


「だから無駄です。私に魔法攻撃は意味ありませんよ?」


「ディアナ様凄い……」


「さすがディアナ様!でもこのままだとジリ貧になりますよ。ロゼッタ様どうにかしないと……」


 確かに、あのコウモリ男は動きが素早いし、魔法の詠唱も早い……一気にカタをつけた方が良さそうね……そんなことを思っていると、ディアナが私をジッと睨んでいる。


「なに睨んでんのよ?」


「……睨んでませんが?それよりロゼッタさん。これでも私も魔力を使ってます。あなたがギリギリの状況で大技を出して、相手を倒して優越感に浸りたい器の小さな魔女なのは私も理解していますが、格好つけてないで早くしてください。勿体ぶって逆にダサいですよ?」


「誰が優越感に浸りたい器の小さな魔女だって!?そんなんじゃないわよ!うるさいわね!あんたは巻き込まれないようにそのお得意の防御魔法でも使ってなさいよ!」


「……使っていますが?」


 使って……るけど!コイツ本当にムカつく!誰が誰を理解してるって!?というか……やっぱり使うしかないのか……仕方ないわね……私は大きく深呼吸をして、魔法を詠唱し始めるのだった。

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