14. ツンデレ魔女様
時間はお昼をまわったころだろうか。私は街の近くの草原でギル坊とルナの指導をしている。
「ギル坊!もう少し早く魔法陣を描きなさい、あとルナは周りをよく見て!」
なんだかんだ2人の師匠的な存在になってしまった。別にいいけど。ディアナは相変わらず無表情のまま本を読んでいる。さて、少し休憩にしましょうかね。この2人には話すことがあるから。
「少し休憩にするわよ!」
「はーい!」
「ふぅ。疲れましたね」
2人とも息があがっている。そんなに動いてないのだけどなぁ。まだまだね。それにしても、ディアナは無言で本を読み続けている。というより、昨日の事を早く言えみたいな圧を感じるわ。
「ねぇギル坊、ルナちょっと話があるんだけどいいかしら?」
「なんですか?話って?」
「もしかして最強の魔法とか教えてくれるのかな!」
「違うわ。大事な話なの」
私は深呼吸をして覚悟を決めた。きちんと話してギル坊とルナには決めてもらいたいからね。
「あのね。今までの『黒い魔力』あれは、魔女の魔力。つまり魔女が何者かに襲われているの。魔女狩りってやつかしらね。そしてこの件は魔族が絡んでいるのかもしれない」
「そっそうなんですか!?」
「えぇ~!!魔族がぁ!?」
「それで、これからどうするのか聞きたいわ。もし、あなた達が危険だと感じるなら、ここに残ってもらってもいい。私だって魔女だしいつ襲われるかは分からない」
私はそう告げる。これはこの子たちのこれからにも関わってくる。ギル坊とルナがどんな答えを出しても私は受け入れる。それだけの気持ちはあるつもりだ。
「ボク……ボクは強くなりたいです!このままじゃいけない気がします。だから、お願いします。ボクを強くしてください!」
「私も強くなりたい!!私は魔法都市に行って有名になるんだから!」
「答えになってないけど……?つまりこのまま私と旅を続けるってことかしら?」
「「はい!よろしくお願いします!!」」
真っ直ぐな目で私を見るギル坊とルナ。この子たちは強くなるだろう。私は直感的にそう感じた。
休憩を終えてギル坊とルナはまた特訓を続ける。私は遠くからその様子を見る。ふとディアナに視線を向けるとディアナと目が合う。
「なによ?」
「別に。すごく嬉しそうな顔をしていたので。あなたはツンデレなのですね」
「べっ別にそういうわけじゃないわよ!!ただ、ギル坊やルナが強くなってくれたらいいなと思っただけ……」
しまった。つい口に出してしまった……でも嘘ではないからいいよね?うん。大丈夫。恥ずかしくなんてないし。
「……顔赤いですよ?まだ酔ってるんですか?」
「そっそうよ!まだ酔っぱらってるの!もう昼寝するわね!」
「……やっぱりツンデレですね」
「うるさい!」
私はそう言ってその場で寝転ぶ。少し照れてしまったせいで余計に眠たくなってきた。そしてなぜかディアナも寝転んでくる。
「何してんのよ?」
「私も眠くなっただけです。少し眠ります」
「あっそ。好きにしてちょうだい」
何なのよこいつ。でも……こんな日常がずっと続けばいいのにと思いながらそのまま眠ってしまう。しばらくして2人が戻ってくると
「あー疲れた!喉乾いたぁ~」
「ルナさん。し~っ」
「え?あっ。」
二人の目の前には仲良く広々とした草原で昼寝をする魔女と聖女の姿が見える。とても微笑ましい光景。
「なんか二人って結局仲良いよね?」
「そうですね。」
「ねぇねぇギル君。私たちも一緒に昼寝しちゃう?」
「そうしたいですけど、この二人を守らないといけないですから。ルナさん一緒に二人を守りましょう」
「うん!そだね!」
2人はお互いの顔を見て笑いあう。そして2人もその場に座り込む。
それから数時間後。日が落ちてきた頃二人は目を覚ました。起き上がると隣にはギル坊とルナが仲良く寝ている。私はその光景を見て微笑んでいると聞きたくない声が聞こえた。
「そんな嬉しそうな顔をして。やっぱりあなたツンデレですね?」
「うるさいわね!」
「静かにしたほうがよいのでは?二人が起きますよ?」
誰のせいだ。私は立ち上がり伸びをしてからディアナのほうを見る。するとディアナは私に向かって手を差し出してきた。
「は?なんの真似?」
「起き上がらせてください。私も仲間ですよね?」
「……はぁ。分かったわよ」
断ると面倒臭そうだし、私はディアナの手を掴み、引っ張り上げる。そのタイミングでなぜかギル坊とルナは起きてしまう。
「あれ!?ロゼッタ様とディアナ様仲良しだぁ!」
「本当ですね!仲がいいのは良いことですね!」
「ちっ違うわよ!?」
私は慌てる。慌てる必要もないけど、相手がディアナだからかもしれない。
「照れてるロゼッタ様!ディアナ様のこと好きなんだね!」
「まったく素直じゃないですね。ツンデレですかロゼッタ様?」
その言葉を聞いて勢いよくギル坊とルナにアイアンクローをきめる。
「誰がツンデレよ!!あんたら2人とも私の爆炎魔法で消し炭にするわよ!!」
「痛い痛い!!ごめんなさいぃぃ!!」
「謝るから離してぇぇ!!」
私は手を離すとギル坊は頭を、ルナは肩を押さえて涙目になっている。私はため息をつく、そしてディアナの方を見ると無表情ながらもクスッとしているように見えた。こいつ……あとで覚えておきなさいよ……
「はぁ……さっさと帰るわよ」
私がそう言うとギル坊とルナは表情を変え元気良く返事をした。私はこの子たちを守りたい。強くなってほしい。そのためならなんだってしよう。そう心に誓ったのだった。