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第106話 こども食堂について考える

 師匠が来てくれた夜営業が終了して、みんなで夕食を食べながら休んでいた。


 今日はシチューが残っていたのでシチュー丼を食べているところ。これがお気に入りの女性陣はご満悦だ。リツとイワンも嫌いではないので黙々と食べている。


「リュウさん、別の街にもこども食堂できるんですかね?」


「うーん。国王様が言っているからな。できるのかもしれないな」


 今日の国王の発言が気になったようだ。他にもこども食堂のようなところが必要だというニュアンスのことを言っていた。


 早急に協議をすると言っていたから早い段階で動きがあるかもしれないな。


「私は賛成ですわ。同じような境遇の人はいると思いますし」


 アオイは同じようなところを作ることに賛成のようだ。サクヤも別に反対しているわけではないと思うけどなぁ。


「ウチも反対しているわけじゃないよ? ただ、ここはリュウさんだから成り立っていると思うの。他の人が同じようにやってできるかな?」


 そう褒められると俺も照れるのだけど。俺はただ、困っている人たちを助けたいと思うから動いているだけだけど。そのくらい奉仕の気持ちがないと、ということだろうか。


「困っている人を助けたいと思う人はいるんじゃないか? あとは、どう運用していくかだけど、飯が作れればいいわけだし。同じように食堂でやる必要はないと思うけどな」


 自分の気持ちを話したのだが、サクヤとアオイはこちらをみて呆れたようにため息を吐いている。何か間違ったことを言っただろうか。


「ここはリューちゃんだからできてるんだよ?」


 大人組の話へ急に入って来たのは、ミリアだ。最近、いろんな言葉を覚えたりして成長が著しい。子供の成長ってのは早いものだ。


 ただ、ミリアの言っている、俺だからできることだというのはいまいちわからない。


「その通りですわ。ミリアは、流石によくわかってますわ」


「わかっていないのは、本人であるリュウさんだけ……」


 なんだか置いて行かれた気分だ。


「なんだよ? 俺じゃなくてもこども食堂はできるだろう?」


「はぁ。みすぼらしい格好をしていた子供を店の中へ招き入れて、いきなりご飯をご馳走するなんて。そんなお人よしがそこらにいると思いますか?」


 サクヤは鋭い目で俺の意見を指摘する。


「そんな人がいるんだったら、私たちは困っていませんでしたわ」


 アオイが追撃してくる。痛いところをつかれた。たしかに、同じような思いの人がいるならもっと前にサクヤとアオイ、イワン、リツに救いの手を伸ばしていたことだろう。


 でも、この街にも助けたいと思っていてもできない人とかがいたのではないだろうか。


「でもよ、みんなにも色々事情があるだろう? 思っていてもできなかったんじゃないか?」


 俺に向けて人差し指を向けるサクヤ。


「それです。リュウさんは、自分の事情はそっちのけだったじゃないですか」


 そう言われればそうだけど。ちょうどご飯を作るのが好きだったし、食堂を運営するところだったから丁度よかったというかなんというか。


「それに、支援してくれた人たちはリュウさんだから支援してくれたんだと思いますわ」


 嬉しいことなんだけど。信用できる人だとわかれば他の人へも支援はしてくれるだろう。困っている人へご飯を提供するんだ。それに賛同してくれる人もいるはずだ。


「ありがたいよな。でも実際、ご飯を提供するのは買ったものでもいいと思うんだ。作らなくてもな。ただな、人が集まって気軽に話せる場所っていうのは必要だと思うんだよ」


 片親の母親がこの前来たみたいに、困り果てて助けを求め。他の人のアドバイスを聞くことができる場所。それがこの『わ』だったんだ。


 この場所を気軽に集まれる場所にしたい。場所の空気を作っているのはサクヤ、アオイ、ミリア、ララ、イワン、リツ。こども食堂を利用しているみんなだ。


「俺はな、場所を提供しているだけ。人が集まってくる空気を作っているのは、皆だと思うぞ?」


 その言葉にみんな唸って考え始めた。


「リューちゃんがえらんだら?」


「僕も、それがいいと思うな」


 リツとイワンの急な提案に驚いた。話を聞いていて二人も考えていたのだろう。


「こども食堂を運営する人をか?」


「そうだよ。それがいいじゃん! そしたら、だーれも、もんくなし!」


 いやいやいや。そんなの国で選ばないと責任が……。


 そうか。こども食堂を広めるっているのは責任が伴うよな。運営する人を選んでもうまくいかなくて、苦しくなる人だっているんだ。


 困る人が増える可能性だってあるってことを認識しておかないとな。


「俺が責任をもって選ぶっていうのも考えるか」


「こくおーにいおう!」


 リツが元気に提案する。国王はそう簡単に会える人ではないから、カミュさんへ提案をしておこう。きっと国王はカミュさんに接触するはずだから。


 カミュさんの選定眼も俺は頼りにしているんだ。あの人は人となりを見る目があると思う。これまでの経験と感覚からどういう人かもわかるみたいだし。


「それは難しいから。接触するであろうカミュさんへ伝えておこうか」


「それがいいですわね」


 アオイが頷くと、サクヤも続けて頷いた。


「リューちゃんが、ふたりいればいいのにねぇ」


 分身はできないからそれはちょっと無理かなぁ。


「ぷっ! たしかに! ……そうしたら、アオイと喧嘩にならないしゴニョゴニョ」


 サクヤが何やらブツブツ言っているが、後半は聞こえなかった。


「明日は、休みにしようと思う。これまで、連日よく頑張ってくれた。働き詰めじゃあ疲労がたまる一方だ。ここらで一旦体を休めよう」


「「「やったー!」」」


 みんな一斉に声を上げた。やっぱりちょっと疲れていたのだろう。そう思ったのだが。


「あまいものがたべたい!」


「ぼくも!」


「僕はパン食べたい」


「リュウさん、ちょっと買い物付き合ってくれません?」


「私もリュウさんと行きたいところがあるんですわ」


 なんだか人気なのは嬉しいんだけど、俺、分身できないんだわ。


 ちょっと話し合いが白熱してしまい。

 最終的にみんなで出かけることとなった。

 なんか忙しい休日になりそうだ。

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