わたくしはマグノリア・ミーティア・エレツ。
エレツ王国の第二王女ですの。
産まれた頃からそれはもう大事に育てられてきましたけれど、礼儀作法と王族としての心構えだけはきっちり教え込まれましたわ。
少し経験が物足りませんが、王女らしい品位を持てていると思っております。
そんな、わたくしも初めての恋をしましたわ。
恋をした方は、ヴァルト男爵令息であり、オルジュ伯爵のアーロン・フォン・シュタイン様。
黒曜のような黒髪に、まるでサファイアのような瞳を持つ麗しい美少年ですの。
側にそれはもう美しいエルフが
だって、わたくしよりも美しい殿方なんて、嫌ですし、年上は趣味ではないんですもの。
ちょっと隙があって可愛らしいアーロン様の方が何万倍も好ましいですわ。
最初の頃は、初めての恋にかなり積極的にアーロン様に接してしまいましたが、今では控え目に接するようにしましたの。
その方がアーロン様とたくさんお話できると気づきましたから。
最初に戻ってやり直したいくらいですが、誰しも間違いはあるものですわ。
日々、精進ですの。
わたくしが日々、魔法や歴史、礼儀作法など様々な勉学に励んでいると、侍女がある本を持ってやってきましたの。
恋愛小説、というものらしいですわ。
その本を手に入れた夜は恥ずかしながら遅くまで読んでしまいましたの。
そして、翌朝、侍女リリア・フォン・ローレンスに相談しましたわ。
「わたくしも、この小説のような恋愛をしたいわ。何か良い案はないの?」
「本日、アーロン様が魔導列車の件で王城に登城されます。転移門のあるお庭で偶然お会いになったら、デートに誘ってみてはいかがでしょう?」
「でも、アーロン様が断ったら?」
「……では、条件を付けてお誘いになられてはいかがでしょう?」
「条件?」
「ええ、殿下はこの前、アラバスター学園の入学試験を受けられましたよね?」
「そうね」
「その入学試験で1位を取ったらデートをしませんか?とお誘いするのです」
「ええっ、でも、1位を取れているかなんて分からないのに?」
リリアは笑顔を浮かべましたわ。
「大丈夫ですよ、殿下は今までたくさん勉強して、たくさん魔法や剣術の訓練をしてきたじゃないですか。絶対1位ですよ」
確信しているリリアにわたくしは嬉しくなって思わず笑顔になりましたの。
「そうね、そう思うわ。わたくし、アーロン様を誘ってみるわ!ありがとう、リリア」
わたくしはリリアの手を握ってお礼を言いましたわ。
「殿下のお役に立てたなら、嬉しいですわ」
リリアは花が咲くように笑いましたの、リリアがわたくしに忠誠や友愛の情を抱いてくれているのが伝わってきましたわ。
リリアが本当にわたくしの幸せを願ってくれているのだな、と思いましたわ。
とても嬉しいし、絶対に幸せになろうと思いましたの。
だから、わたくし、アーロン様の心も射止めてみせますわ!