入学式から一ヶ月が経ち、中間テストの時期がやってきた。
アーロンは放課後の図書館で仲間たちと共に勉強するようになっていた。
仲間は、錚々たるメンバーだ。
第二王女マグノリア、エスト公爵令嬢イザベラ、エスト公爵令息ジェイド、ノルド公爵令嬢シルヴィア、そして、赤髪に金の瞳を持つ色香のある美少女と、短めのアッシュブロンドと銀の瞳を持つボーイッシュな美少女がメンバーだ。
赤髪の美少女は南のスール公爵令嬢メイヴィス・フォン・ラヴィーン。
アッシュブロンドの少女は西のザフト公爵令嬢サーシャ・フォン・イストワール。
四大公爵の令嬢が勢ぞろいで、図書館にいる周辺の男子生徒たちは妬むようにアーロンを密かに睨んでいた。
アーロンは感じる視線に苦笑しつつ、優秀な5名の学生たちに勉強を教えてもらっていた。
日々の忙しさにかまけて勉学を疎かにしていて入試の筆記が12位だった為、勉強に力を入れることにしたのだ。
因みに、入試で筆記が12位だったのに、2位になれた理由は、実技がぶっちぎりで1位で、2位との差がかなりあった為だった。
「んー、歴史上に出てくる人物名を覚えるのが大変だね」
アーロンは呟いた。
「まあ、それなら、その人物が何を成したかということを調べると覚えやすいと思いますわ」
マグノリアがアドバイスを言う。
「だね。ボクはアラン・ドイルさんとアレン・ドージさんがごっちゃになることが多かったから、色々調べたよ。因みに、アラン・ドイルさんは有名な建築家で、アレン・ドージさんは有名な薬師だよ」
サーシャが横から顔を覗かせた。サーシャは珍しいボクっ娘だ。
「確かにアラン・ドイルさんとアレン・ドージさんは間違い易いですわ。流石は筆記5位ですわね」
筆記3位イザベラが扇で口元を隠しつつ、お上品に言った。
「ねえ、それって褒めてるの?貶してるでしょ絶対」
サーシャはカチンときたのか、イザベラに突っかかった。
「まあまあ、僕なんて実技はさっぱりだし、ましな筆記もザフト嬢より、下の6位だったんだよ、宰相の嫡男なのにさ、ははは」
ジェイドが暗い表情を浮かべたのを見た二人は慌ててフォローしようとした。
「こ、今回は調子が出なかっただけですわ、お兄様!それに、実技は今度、アーロン様に教わるでしょう?もっと順位が上がりますわ。きっと」
「そ、そうだよ。イザベラの言う通りだって、エスト卿なら大丈夫だって!」
2人に励まされたジェイドは、ちょっとだけ、明るい表情を浮かべた。
「うん、二人とも、ありがとう」
筆記12位のアーロンは、慰めるようにジェイドの肩をぽんと叩いた。
「僕も頑張るよ」
「ああ、そうだね、一緒に頑張ろう、友よ!」
2人はがしっと固い握手を交わした。
それを微笑みつつ見守っていたシルヴィアが口を開いた。
「……そういえば、アーロン様」
「なんだい?」
「今週の実技の勉強会は何をされるのでしょうか?」
「この前、剣術をやったから、今週は魔法だね」
「まあ、楽しみですわ」
シルヴィアの横にいたメイヴィスが小さく手を上げた。
「魔法……私も楽しみです」
色香のある見た目と違ってメイヴィスはとても控え目で大人しく初心だったりする。全員そのことを知っているので、メイヴィスの控え目な主張は穏やかに受け入れられる。
「メイヴィスは魔法が好きなの?」
「魔法、大好きです。魔法の知識が増えると、とても楽しいです」
メイヴィスは入試の実技で剣術があまり良い評価ではない中、魔法によって4位を取るくらい魔法が好きなので、アーロンの勉強会を楽しみにしていた。
因みに、シルヴィアは実技3位で筆記2位、総合3位だったので、密かに燃えている。
「じゃあ、実技の勉強会も楽しめるように頑張るよ」
「アーロン様、ありがとうございます。よろしくお願いします」
その後も、図書館が閉まるまで勉強会は続いた。