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 1年生最初の夏休みが始まった。

 夏休みが始まる前に、賢者たちがアーロンの作った魔導トイレを解析して、魔導トイレを完成させ、売り出すことが決まった。

 アーロンには技術提供料として、売上の3割がギルド連合銀行に振り込まれることとなった。

 これにより、貴族との会談が激減したので、アーロンの負担が減り、アーロンは内心小躍りした。

 アーロンは、夏休みに国中のダンジョンを攻略しようと決め、ヴァルトバングルのマップを開いてどこから攻略するか思案し始めた。

 アーロンが何故、ダンジョン攻略に力を入れるのかといえば、ヴァルトダンジョンを攻略したときのペトラの伝言が気になっているからだった。

 そのとき、ガイドがホログラムウインドウで語りかけてきた。


[ダンジョン【深き岩の洞窟】のペトラから連絡がありました。『ダンジョンの機能が拡張しました』とのことです]

「へえ、機能拡張かぁ、深き岩の洞窟に行ってからダンジョン攻略するか……」


 アーロンはそう呟くと、冒険者風の服に着替えて伯爵家の地下室に向かった。

 王都にあるオルジュ伯爵家の地下室にこっそり造った転移門でヴァルトに転移したアーロンは、ヴァルトバングルのエリア転移機能でスノウと共に深き岩の洞窟のコアルームに転移した。

 スノウは最近成長期に入ったのか、普通の中型犬くらいの大きさになっている。

 コア──ペトラの近くまでやってきたアーロンの前にホログラムウインドウが現れた。


[早速お越しいただき、ありがとうございます主様]

「うん、ペトラ、早速だけど教えてくれる?」

[かしこまりました]


 ペトラはホログラムウインドウに拡張機能の説明を載せた。

 拡張機能は下記の通りだ。


【拡張機能】

・ダンジョンメニューがいつでも開けるようになった。これによりダンジョンの改造がいつでも可能。※これは全ダンジョン共通

・増設できる施設の追加

・施設で使用できる通貨にエレツ王国貨を追加

・ダンジョンボス討伐報酬の種類の追加


[最初の拡張機能は二神のテコ入れの結果です。他は、ダンジョンに入場する冒険者などの人数が増え、ダンジョンレベルがUPした為、可能となりました]

「二神って、眠っているという話を聞いたけど……」

[最近、眠りから覚めたようです]

「へぇ、二神ってどういう神様なの?」

[男女の神だと知識にあります。それ以上は知識にありません]

「そう、なんだ」


 謎のヴェールに包まれた二神が気になりつつ、アーロンはペトラに聞きながらダンジョンメニューを開いた。

 ダンジョンメニューは、口にするか、念じると開くようになっている。

 アーロンは恥ずかしいので念じた。


「うわ、こんなに施設が作れるんだ」


 施設は海、温泉街、遊園地、高級レストラン、花畑が増えている。

 ダンジョンボスの討伐報酬はアイテムが超級ポーション、スキルが気配察知と危険察知が増えている。

 アーロンは、気配察知と危険察知のスキルを取得した。

 施設の設置はダンジョン内に人がいるので、後日、告示してから設置することとした。

 ダンジョンを出たアーロンは、ヴァルト領を久々に歩き回り、顔見知りの領民と話し、新領主館に泊まることとした。


「ローナさん、この手紙を魔導列車便の速達で送っていただけますか?」


 明日、攻略しに行くダンジョンがある領地の領主宛に手紙をしたためたアーロンは、メイドのローナに送って貰うように依頼した。


「はい、かしこまりました!」


 ローナは切手の貼られた手紙を受け取ると、早足で玄関に向かった。

 しっかり者なローナ。転ぶことはまず無いだろう。


(貴族って、面倒だなぁ)


 自由に行き来できないことを歯痒く思うアーロン。


(前世みたいに自由に行き来できれば良いのに)


 なんてことを思いつつ、アーロンはローナが用意してくれた紅茶を一口飲んだ。


「うん、美味しい」


 アーロンは紅茶を楽しみつつ、ヴァルトバングルのマップを開いて、攻略するダンジョンの順番を決めていく。

 どんな魔物と戦えるか楽しみに思いつつ。





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