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閑話 ヴァルト更生施設




 わたしは闇の精霊王様にお仕えする闇の中級精霊の一柱。名前はまだない。

 名前を付けられるのは、わたしがどこかの精霊術師に召喚されたときだけらしい。

 闇の精霊と相性の良い精霊術師ってあまりいないと聞くから、わたしに名前が付くことは無いだろう。たぶん。

 最近、闇の精霊王様がアーロンという美味しそうな霊力を持った人族の子供と契約を結んだ。

 闇の精霊王様が契約を結んだ時は上から下まで大騒ぎだったけど、今では落ち着いてる。

 闇の精霊王様が幸せで楽しそうだから、わたしたちも幸せな気持ちになっているからだろう。


 最近、アーロンがヴァルトの地下に更生施設というものを作った。

 普通の平民の家と比べると殺伐としてるけど、トイレは凄く快適そうだった。

 アーロンは闇の精霊王様にこの更生施設に入ってくる暗殺者たちを従順になるように夢で精神操作して欲しいと依頼してきた。

 昼は元奴隷の人族で洗脳スキルがある者たちが暗殺者たちを教育するから、夜、夢を通して操作して欲しいと。

 闇の精霊王様は、精神破壊は簡単だが、精神操作は難しいから1年は必要だとアーロンに応えた。

 アーロンは承諾した。

 闇の精霊王様は、アーロンから依頼料として、霊力を多めに貰って、依頼を手伝う予定のわたしたちにも分け与えてくれた。

 アーロンの霊力は大層美味しいので、わたしたちは狂喜乱舞しながら味わった。


 更生施設での生活はちょっと退屈だ。

 昼間はアーロンが描かれた大きな絵画を洗脳スキルを持つ人族が暗殺者たちに見せて、どれだけ偉大な人かを説いている。

 わたしたちは見てるしかないから、退屈だ。

 暗殺者たちも普通なら退屈だろうけど、洗脳スキルのお陰で真剣に見てる。

 逃げ出す奴は1人もいない。

 逃げても逃げ切るのは難しいだろう。

 だって、暗殺者たちの首には魔封じの首輪、手にはスキル封じの手枷、足には行動制限魔法が付与された足枷が嵌められているから。

 夜になったら、わたしたちの出番。

 夢の中に入って、アーロンがどれだけ素晴らしく、どれだけ暗殺者たちに良い環境を用意しているかを見せたり、アーロンに暗殺者たちが褒められる夢を見せて、その時に精神をちょっと幸せに感じるように細工したり、色んな夢を見せる。

 これは、闇の上級精霊たちと一緒に行うから、不安は感じない。

 ただ、楽しいだけ。


 1年後に暗殺者たちはアーロン至上主義になって出てくる。

 ちょっと気持ち悪いくらいアーロンを崇拝してるけど、まあ、害はないから良いと思う。

 わたしたちは、他の闇の精霊たちとバトンタッチして、更生施設から出る。

 また、3年後くらいに戻らなきゃいけないだろうけど、あの霊力を食べられるなら、更生施設で1年遊ぶのも良いかもしれない。

 さてと、今日からどこに行って、遊ぼうかなぁ。





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