夕陽で赤く染まった王城の上階にある謁見の間。
窓から夕陽の光が差し込み、部屋にいる男達を薄っすら、
男達は既に血で赤く染まっている。
玉座に座る元国王は己の血によって赤く染まっている。
その前に立つ剣を持った二人の男は、返り血で赤く染まっていた。
「……エルド」
辛うじて金髪だと分かる整った顔立ちの男が元国王の頭から王冠を取って、隣に立っている黒髪の精悍な顔立ちの男──エルドに渡そうとした。
「いんや、それはお前さんに相応しい。我が友、アーサーにな」
「冗談を、君には正統な血が流れているだろう」
「反乱を起こした時点で、血統なんぞ関係ない。リーダーのお前が責任を取るべきじゃないか?それに」
エルドは北の方向を見つめた。
「俺は、
「だが、初代国王は、この地に王都を築いたじゃないか」
「
「まさか」
「そう、俺も神託を受けた。俺は
「……分かった。君が行くのは、極北の名もなき大地だろう?」
「ああ」
「では、僕にその土地と土地の名と爵位を、我が友に贈らせてくれ」
「男爵にしてくれ」
「!?」
「俺は庶子だがこの腐った王の血を引いてる。お前を慕って付いてきた奴らが文句を言うだろうからな」
アーサーは溜息をついた。
「エルド……、はあ、分かったよ」
「分かれば良い」
二人は笑い合った。
「ああ、そうだ、俺に新しい苗字も付けてくれ。前の苗字はもう名乗れんからな」
「了解」
アーサーは真剣な表情を浮かべ、暫し考えた。
決まったのか、顔を上げたアーサーは、口を開いた。
「ヴァルト、極北の大地は古い言葉で森を意味するヴァルトにするよ。それから、エルドの苗字はシュタインだ」
「ありがとう」
「エルド」
アーサーの目配せで分かったエルドは苦笑しつつ、跪く。
アーサーはエルドに目を向け、剣を床に突き立てた。
「エルド、君は新たな王国を建てる為に多大なる貢献をしてくれた。その功績を称え、僅かばかりの爵位だが、男爵位と極北の大地、ヴァルトを与える。また、シュタインの苗字を与える」
「有難き幸せ。我が友と新たなる王国に栄光あれ」
言い終えると、エルドは立ち上がり、アーサーは剣を鞘に収めた。
「もう、行くのか?」
「ああ」
エルドは微笑みを浮かべて、友に背を向けた。
「君の行く先に、幸運があらんことを」
アーサーの言葉に、エルドは手を振って応えた。
これは、今から三百年程前のこと。