「……え? 今、何とおっしゃられました?」
「今よりそなたを
それでもまだ首をかしげる
「と、突然そのような事をおっしゃれても困ります。第一、兄上は──
困惑をあらわに問う。
「
「し、しかし……」
気にするな、と言われたところで簡単にそう出来るはずも無かった。
廃嫡という行為は国家の一大事であり、忌避すべき事象である。それが原因で国に乱れが生じ、滅亡へとかたむく危険性を大いに
「この事はすでに重臣たちにも伝えており、彼らの承認はすべて得られております。
そんな不安を感じ取ったのか、
「それでも……私に時期国王が務まるのでしょうか?」
どうしても脱ぐい切れない不安を吐露する
自分には何も無い──
そう感じていた少年に突然舞いこんだその
それこそ、真っ白に染まってしまった頭の中で今すぐに答えを出すことなど出来るはずもない。
「務まるか務まらないか、では無い。やるかやらないか、答えはそれだけだ」
しかし、
「やるかやらないか……」
冷酷な言葉ではあったがしかし、
病弱で部屋に引きこもりがちで、常にひとりで書物を読み
将来的に王となればこれまで以上に自由が利かなくなる半面、立場上から
それは強国の王かも知れないし、国の中核を成す名将かも知れない。敬愛する
これは、絶対に日の目を見ることは無いと思っていたそんな彼に舞いこんだ数奇な運命であり、
「まあ、これほど重大な事柄を今すぐ決めろというのは酷というものです。数日じっくりお考えいただき、その後に──」
「かしこまりました」
「そうそう、かしこまりましたとお返事をいただい……って、えぇッッッ! 今何とおっしゃられましたか⁉︎」
先ほどと打って変わっての積極的な少年の言動に、助け舟を出したはずの
「映えある【
呆けた
しかし、
「微才の身ではありますが、
まるで刃を交えているかのようなその真剣な瞳から確かな覚悟を感じ取った
「……分かった」
ただひとことだけ言い残し、
「母には逢わないのですか?」
去りゆく父の背中に、
「……
振り返ること無くそう言い残し、再び歩み出す。
その後を、
「父上……」
男の背中から父親としての不器用な愛情を感じ取った