食事を終えた
それによればまず商人は兵士の案内で検査官のいる部屋に通され、そこで素性の調査や商う物品の確認を行うという。
「検査されたら商人じゃないことがすぐに判明してしまいます。夜を待って宮廷に侵入した方がいいと思うですぅ」
【
「そんなコソ泥のような真似は出来ぬ。それに
「まさか、真正面から飛びこむつもりですかぁ?」
「その方がおもしろいだろう?」
「たしかにそっちの方が楽しそうですね」
悪だくみに乗る悪漢のような
そして二人は店を後にすると、ほぼ手ぶらのまま
大路の先に悠然とそびえる宮廷に入る前には、およそ五十段はあろうかという大階段を昇らなければならない。
そして階段を昇り終えた先に宮廷の門が開かれ、両脇の門柱の前では
「では行くぞ」
階段を昇り終えた
「申し訳ございません。私どもは珍品を取り扱う商人でございます。
兵士の前で
彼の芝居っぷりに驚嘆しながら、
「珍品だと? だがお前たちは何も持って来ておらぬではないか?」
当然の
「はい。私どもが取り扱う珍品は猛獣──虎でございます」
「何、虎だと?」
「はい。それも
驚き目を
「なるほど、それはたしかに珍品だ。もしかしたら
兵士は嘆息を漏らし、しきりにうなずいた。
「よかろう、案内させよう」
兵士がそう言うと、門柱の裏側──門の内側から別の兵士が二人現れて、
「ではまずは検査を受けてもらう。ついて来るが良い」
そう告げると男たちは
ここまでは作戦どおりだ。
しかし、
──
太后とは現王の母親のことであり、
しかし、先ほどの兵士は
普通であれば何よりも優先されるべきは『それを王がどう感じるか』、であるはずだ。
新王が立ったばかりのこの国は、強国でありながら自分が思っていた以上に危うさを
そうこう思考を巡らせている内に、二人は案内係の兵士たちに付いて通路をひたすら突き進み、本殿付近に建つ小さな小屋の中へと通された。
どうやらここが検問所のようだ。
「行商人がここで商売をしたいとのことです。検査の方をお願いします」
兵士たちが小屋の前に屹立して
その背後を、
「そなたらは行商人とのことだが、何を商っているのだ?」
小屋の中央で一台の卓を前にして椅子に座している一人の
「はっ。我々は異国から取り寄せた世にも珍しい猛獣を扱う者でございます」
怯むことなく恭しい口調で答える
「猛獣だと?」
怪訝な面持ちで首をかしげる
「はい。もしも
そう言って、肩に下げていた麻袋を下ろしてその中身を取り出す。
「これは……虎の毛皮か?」
「いかにも。虎の毛皮でこしらえた
フサフサとして滑らから毛並みに手櫛を通しながら、
この虎の毛皮で作られた
しかし今回、それを惜しげもなく手放すつもりでここまで乗り込んで来たのだ。
ただそのためだけに。
官吏はひとつ大きくうなずくと、
「良かろう。
そう言って外に控えている兵士を呼び出し、
そして兵士が戻るまでの間、
「ふむ、何も怪しいものは持ち込んでおらぬようだな。二人とももう服を着て良いぞ」
筋骨隆々な男と未成熟な娘の裸体を観察していた官吏は、再び大きくうなずいてそう告げる。
こうして二人は官吏を