魔法の種類は大まかな三種に分けられている。
風や水、炎といった現象に作用する
モミジの多用する封印魔法や魔法障壁等の、上記の二つとは異なり魔力を別の形の変換することなく運用する原始的な魔法である
魔導具技術が発展するまでは操作系統と生成系統の二種類が
「根源系統が下に扱われているなんて不思議よねぇ、モミジを見ていると」
「使うだけなら誰でも出来るからな」
「根源系統は扱うだけであれば万人が使用でき、適性を有していなければ十全な運用が難しい操作系統と生成系統と比較して、使用者の
「意外とモミジも普通なのね」
誰でも使用できる魔法を極めたに過ぎないモミジの評価を改めたサクラを目に、侍女は難しい表情を露わにした。
この根源系統、誰でも使用できるのだが、高い適性を持てる者は非常に限られており、極める土台に立つことすら難しいというのが実情。特に上等な封印魔法を用いる魔法師は各方面から重宝され引っ張り
モミジが補足する様子もないので、「今はいいか」と侍女は魔法のお勉強へ戻っていく。
「それでは系統のお話しもしましたし、サクラ様もお待ちかねの適性検査と致しましょう」
「やった!私はどこに向いているのか気になっていたの」
「兄貴とザクロが生成系統で義姉貴が操作系統。どっちに偏っても、どちらに偏らなくても美味しいな」
「根源系統をさらっと外したわね」
「珍しいし埋もれやすいんだ。根源系統ってのは適性が高くなり
「私も根源系統の適性が秀でておりますが、それでも中の下。モミジ様程の適性は有史以来初だとも言われております」
「えー、なにそれ、すっごい特別ってこと!?いいなぁ!」
「恰好良いだろ」
「うん!私も根源系統がいい!」
「そうだな、根源系統だったら俺が色々と教えてやるよ。封印魔法とか魔法障壁とか」
「こちらは『
「ああ、いいが、受け止める準備だけはしておけよ?」
「承知しております」
「?」
首を傾げるサクラを置いて二人は魔法適性の検査を行う。モミジは管々棒の両端を掌に乗せ、床に屈んでから侍女が持ち場に着くのを待つ。
そしてモミジが魔力を込めると管々棒は彼の掌を離れて浮き上がり、天井を目指していく。それを受け止めるのは侍女の役割で、別の木の棒で両端を抑え浮き上がらないよう維持すれば、垂れ下がっていた竹管九本がカラカラと音を鳴らし始める。
「根源系統を読み取って重力に反発し浮いているらしいが、一定以上になると適性を測りきれないのが管々棒の難点だ」
「普通は天井に着くことなど有り得ませんので…。カラカラと鳴っている竹管の本数が魔力生成量と保有量の…、沢山鳴っていると魔力が多いということですね」
目を燦かせているサクラはすんと真面目な表情へと変わって、モミジを見つめる。
「魔力が多くて具合悪くならないの?」
「安心しろ、俺は大丈夫だ。生成した魔力を十全に受け止められる器を持っている。それにミモザも最近調子いいだろ?」
「うん」
宥めるように頭を撫でれば、サクラは笑顔を取り戻す。
ミモザは生成魔力に対して保有魔力総量が低い為、身体に異常をきたし体調不良や合併症を引き起こしやすい、傾魔症を生まれつき患っている。
「それではサクラ様もどうぞ」
「わかったわ!」
浮々と管々棒の両端を掌に乗せたサクラは、一呼吸置いてから魔力を流し込み変化を待つ。
「………。何も変化がな――」
サクラが言葉を終える間際、竹管が六つカランカランランと鳴り響き、モミジと侍女は顔を見合わせ視線をサクラへと戻した。
「まったく変化がなかったのか?」
「うん」
「重くなったり軽くなったりの変化が起こるはずだったのですが」
「なんにも。持ってみる?」
差し出された管々棒を受け取ると確かに変化はない。
「凄いなサクラ、全適性だぞ。俺よりも珍しい」
「えっ!?そうなの!?」
「はい。総ての適性が均等に同じ場合のみの現象で、一切の重量変化がなく音のみ鳴るのです。鳴った本数と適性が同じになるので、三系統の適性と魔力量が中の中程になると思われます」
「真ん中ってことね?」
「そうだな」
「…適性って高いほうがいいんでしょ?真ん中だとどうなの?」
「中の中だと…努力と杖とかの魔法補助具次第で、無詠唱魔法を使えるはずだから、サクラの頑張りに応じて結果が伴うだろうな」
「!」
発破を掛けてみれば分かりやすく瞳を爛々輝かせ、机に広げられた教本に目を向ける。
身近に規格外の魔法師がいることで、自分も彼に並び立てるほどの魔法師になれるのではないか、と期待せずにいられないサクラは魔法の道へ一歩踏み出す。
「ねえモミジ!これって根源系統も一番高いんでしょ、魔法を教えてくれるんだよね?」
「齢七つで弟子持ちとはな」
「よろしくねモミジ師匠」