「そろそろ陽前軍と合流しないとな。内部はどうなってる?」
「軍人たちは精鋭みたく、中々善戦しておる。時間も掛からず制圧を追えるだろう」
「ふむ。とりあえず動くとするか」
「話し合いは終わりましたか?愚弟」
「はぁ…直々に出てくるとは探す手間が省けたぜ、愚姉」
声の方、屋敷の一角へ視線を向けると、蛇の仮面を着けた男女が三人を見下ろしており、龍の仮面を着けたモミジが見上げる。
「まさか、貴方自身が変装をして彼是動いているとは、私の想像力も地に落ちたものです。少し考えれば優れた根源の才を持つ者など、二人三人と用意できるはずがありませんから。どういう道具を用いているのです?」
「教えると思うか?想像力尽きてるだろ」
「腹違いとはいえ、姉にそんな口を聞いてはいけませんよ、義弟くん」
「テメエは黙ってろ、義弟になった覚えはねえ」
「振られてしまいましたね…」
「…、こんな事をしてなけりゃ、義兄と呼んでも良かったが。水蛇に関与した時点で決裂してんだ」
「関与した、というのは間違いです。ふふっ、私とキンカンの二人で創り上げたのですから」
「そうか。そうかよ。チッ。俺の甥っ子と姪っ子は何処にいる?」
「リンゴとクルミの事ですか」
「二人には先に天冥へ昇ってもらいましたよ。事を起こしてしまえば、子どもたちには苦しい生活を強いなければいけませんから」
「――――」
絶句、である。
「二人は貴方に懐いている節がありましたから、園遊会にも行きたがってしましてね。残念な限りでした」
「君の何が良いのか、理解に苦しみますがね」
「ええ、本当。ただの化け物ですのに」
「ああ。安心していいですよ。しっかりと銀の鳥を用いて、苦しむことがないよう天冥へ送りました。何れ貴方とも会うことになりましょう」
善行を語るかのように口を開閉させる二人を見たモミジは、額に手を置き首を振るのみ。理解が出来なかった。
「クラバ…聞くに堪えません。討伐の許可を」
「いいや。目的は拘束だ、そこは変えん。洗いざらい全て吐き出してもらわねば困るからな」
「…承知しました、承知…しました」
「強者がおればいいが」
三人は得物を構え、樋五夫妻の拘束へ乗り出す。
「それじゃあスモモ、後のことは任せますよ。私は此処で役目を果たしますので」
「ええ、お願いします、あなた」
スモモが真っ白な、骨材で出来たような杖を振るうと断層の入口が出来上がり、内部に侵入すると同時に入口が消え去る。
そしてキンカンは鳥の魔導具を首に刺し、その肉体を変容させていく。
(わけのわからんもんを彼是と。二年の潜伏で力を蓄えさせてしまったか、クソッ!………、すまないリンゴ、クルミ)
変容が終わる前にモミジが斬りつけるも、鱗で覆われた片腕で刃を防がれてしまい、顔を顰める。
「準備の最中に殴り掛かるとは、風情がありませんね」
「煩え。黙れ」
「ふむ、硬いのう」
「そして珍妙。悪徒が龍に変容するとは、気に喰いません、ねッ!」
三対一で攻め込むも、キンカンの全身には鱗が生え揃っていき、顔も龍のそれになってしまい。
「討ち取られる前に仕事は終えないといけませんね。こほんっ、……ヴォォォォォオオオオオオオオ!!!」
「うわっ!
耳を
「さあ断層より現れし如何物たちよ、星の
「星の緒、」
「おや、知っているのですか?」
「知らねえよ、
三人で何度も斬りつければ、鱗の一部が罅割れキンカンは口端を持ち上げた。
「さあ私を天冥に送ってくれ、三人とも。私は真なる楽土を踏みたいのです」
(反撃をしてこないのは、そういうことであったか。当方も天冥に帰りたいという願望はあるが、…つまらぬ男よ。クラバ殿の目的通り、拘束に勤めるとしようか)
「
「なっシャクナゲ!?」
抜刀剣術を模倣するシャクナゲに驚いたモミジだが、そこから繰り出されたる光さえ斬り裂く一撃に目を白黒させた。
剣先に反射する陽光は斬り裂かれ一線の影を作り出し、キンカンの両足を切断する。
「呵々。ヤナギ、氷を。クラバ殿は封印の準備を」
「は、はいっ!」
即座に刀を鞘へ戻しては同じ技を再度行っては、片腕を斬り落とすとヤナギは傷口を凍結させて、モミジが封印魔法でキンカンの動きを封じた。
「…、てっきり、殺されるものかと、思っていた…のですが」
「デカい情報源だ、殺してたまるかよ。死ぬより痛い目に合いやがれ」
「はぁ…、甘いですね。ぐふぁ!」
キンカンの体内から無数の刃が現れて、彼自身を串刺しにしてしまった。
「……、せいぜい、がんばってください、わたしたちは、あなたのてんてきですよ」
「
悪態がてら死体斬りでもしようかと思ったモミジだが、顔を
「…。…次の仕事だ」
「休憩をしたいのですが…、厳しいようですね」
「外にも如何物共が出回っておるぞ?」
「ヒイラギと合流して意見を仰ぐ、行くぞ!」
「はいっ!」「おうよ!」