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第40話:王妃の力と過去



『ふーむ、彼らに普通の生活を、か』

「ああ、アディス」

 夜、魔導器を使って会話をしているレイオスと、アディス、マリオン、エドモン、カイルが居た。

『んー、今はちょっと無理だな、俺の所。スノウの妊娠が分かったから領民達も外から来る輩にはかなりピリピリしているし』

『マリオン侯爵の所は奥方様の人気が凄いですからね』

『そそ、ただなぁ。安定期までは村人にも漏らさないようにと言っていたのに執事の奴うっかり喋っちまったらしいのよ、それで領地がわー! となって、その上でお祭り騒ぎになってから沈静化したと思ったら「奥方様に近づく悪者は許さん」となった訳』

「それでは受け入れられないな」

『今すぐじゃなければ四、五年位待てば受け入れられそうだけどな』

「それでは時間がかかりすぎる」

 レイオスは首を振った。

『私の所もちょっと難しいな、今まで領民に色々強いて来てしまったから』

「エドモンも駄目だな」

『なら、消去法ですが私ですね』

 カイルが言う。

「いいのか?」

『はい、ただ住居を用意しなきゃいけないので少しお時間を下さい』

『良い、その間に私の方で色々と準備をしよう』

「アディス陛下、カイル侯爵、申し訳ない」

『いやいや、彼らのような存在に気付かなかった私にも落ち度がある』

 アディスは首を振った。

『それに彼らは酷くか弱い存在になっている、気を遣わねば』

『そうですね』

『あと思想調査もしないとね、念の為』

「レイラ王妃」

 レイラはアディスが映っている場所に割り込んできた。

『万が一はあってはいけないもの』

『そうだな、そうしよう』

「では、そちらもお願いできますか?」

『勿論よ、思想読み、思考読みの魔法は任せて』

『レイラのその力には頼りっきりだな』

『これで、反逆者達と手を組んだのをあぶりだしたんだもの。二度とあの事件は起こさせないと決めたから』

「……」

『──ああ、そうだな』





 百年間のあの日。

 アディスを裏切った参謀は、アディスの恋人だった。

 レイオスはティアを失い、アディスは信用していた参謀と恋人を一気に失った。

 不信に陥りかけたアディスの尻を叩いたのがレイラだった。


『裏切るような参謀を縁切れて良かったと思いなさい! これからは私が貴方を支えるわ! 貴方を裏切る者全てを私があぶり出してあげる!』


 そう言ってまだ行動に移していなかった裏切り者達を全てあぶりだし、処刑したのだ。

 レイラは相手の思考や思想を読み取る。

 サトリと言われる力を持つ。

 普段は封印しているが、封印を解けば相手の考えを丸裸にできる。

 なので、アディスもレイラを裏切ることはしない。

 レイラもアディスを裏切らない。

 二人は戦友になり、そして夫婦となった。

 この魔族と人が住まう広大な世界の統治者となったのだ。





『じゃあ、しばらくはお茶会無しになるから、アイリスちゃんと仲良くするのよ?』

 そう言ってレイラは姿を消した。

『あの、良いかレイオス』

「どうしたエドモン」

『どうやら、君のお陰──と言うか、アイリス夫人のお陰ということで我が領地で祝いのパーティーをしたいと領民とサーシャが言っているのだ』


「意味が分からんのだが」

 レイオスは眉をひそめる。

『王命で好きでも無い相手と結婚させられたが、漸く私はサーシャと結婚できた、それもこれもお前のお陰だ』

「いや、どちらかというと私の所為で、アイリスはお陰だろう」

『だが、お前はサーシャとの結婚を後押ししてくれた』

「……分かった、いつ行けばいい?」

『来週末、屋敷で食事を用意して待っているぞ』

「わかった」

『では、今日はこれにて解散だ』

 映像が全て消える。

 レイオスはふぅと息を吐き出して、寝室に戻った。


 寝室ではすやすやとアイリスが眠っていた。

 レイオスはそっと頬に口づけをして隣に横になり、眠りに落ちた──




「え、辺境伯様からのお誘い?」

 朝、朝食が終わるとレイオス様からお話をされた。

 パーティをやるから来て欲しいと言われた、と。

「ああ、そうだ。サーシャ夫人の件で君にはかなり世話になったからな」

「……サーシャ様には何かしましたが、辺境伯様には何かした記憶にないのですが」

「……向こうがそう言い出しているのだから其処は気にしないでおこう」

「レイオス様?」

 レイオス様に問いかける。

「向こうも謝罪したいことがあっただろうし」

「謝罪?」

「既に貰っているが、君が誘拐された件だ、アレが無ければエドモンはサーシャ夫人と結婚できなかっただろう」

「ああ……私があの女に腹蹴られた件ですか」

 私はちょっと意地悪に言う。

「それはすまない、守れなくてすまなかった」

「冗談ですよ」

 私はレイオス様に抱きついて言う。

「それまでにドレスを新調しようか?」

「そうですね、また背が伸びて、バストのサイズも……」


 うん、胸も控えめだったのが、日々成長している。

 お母様はそれなりのサイズだったから、それに似ているのかな?

 だったら私の胸もそれなりに大きくなるのかなぁ……?


「……」

「君に失礼かもしれないが全体的に少しだけ余裕を持たせて作ろうか」

「はい、そうしましょう」

 レイオス様の私の体への提案で間違ったことは無かったので従います。



 そして当日──

「……余裕を持たせてよかったですね」

 胸大きくなり、余裕があったものがフィットしていました。

 体のほうもフィットしています。


 ドレスに着替えて、そしてレイオス様と共に馬車に乗り込み、移動をしました。


 数十分ほどで、辺境伯様の領地の屋敷に到着しました。

「レイオス伯爵様、アイリス伯爵夫人、ようこそいらっしゃいました」

 サーシャ様が出迎えてきました。

「レイオス、アイリス夫人ようこそいらっしゃった」

「エドモン辺境伯様、サーシャ辺境伯夫人、お招きくださり感謝の極みです」

「中庭で準備をしている、来てくれ」

「分かった」

 そう言って案内されました。

 中庭は美しい造りになっており、また用意された食事はどれも美味しそうでした。

 ちょっと食い意地がはっていますね、いけないいけない。


「サーシャがアイリス夫人に楽しんで欲しくて料理の監督を取ったのだ」

「まぁ」

「アイリス様、貴方様のお陰で勇気を出せたのです、有り難うございます」

「いえいえ」

 私は首を横に振ります。

「では始めようか」

「そうですね」

 葡萄ジュースをグラスに注いで貰い、掲げます。


「「「「乾杯‼」」」」


 さぁ、楽しいパーティの始まりです!







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