レイオス達がレラの隠していた書類や手紙などを解析、またトラップ解除を開始して一ヶ月が経過した。
「これで最期だ‼」
レイオスが最期のトラップを破壊する。
そして出て来た核に文字を入力し、開ける。
「これで最後の手紙だ」
レイオスはアディスに防護や時止めの魔法を使って手紙を渡した。
「よくやってくれた!」
「ああ、これで最期だ‼」
「これでサーシャに会える!」
「まだよ、解読がおわるまで会えないわよ」
「そ、そんな……」
エドモンがレイラの言葉にがっくりとうなだれる。
「エドモン、これをさっさと終わらせて帰ろう」
「ああ、レイオス」
レイオスはエドモンを励まし、最期の工程へ向けてなんとか立ち上がらせた。
「あ~の~お~ん~な~‼ 私の名前を使ってこんな事までしていたのね‼」
解読中怒髪天をつく勢いで、レイラは手紙や書類を見ていた。
それらは、全てレイラの名前でやりとりされ、作られたものである。
「処刑させろー!」
レイラが怒りで我を忘れるように声を上げる。
「お、王妃様! レラ元辺境伯夫人は既にマリオン侯爵様に処刑されております!」
「私直々に処刑したかったー!」
「レイラ、これを援助していた父母の処刑は我らがやっただろう、それで少しは冷静になれ」
「なれるかー!」
うがーっと、レイラは叫ぶ。
「しかし、酷い内容だな」
「全くだ」
「この怒りを誰にぶつければいいー!」
レイラがじたばたと駄々をこね始める。
「……アディス」
レイオスはアディスに視線を向ける。
「こうなったレイラは私の手には負えん」
そう言ってアディスは指を鳴らす。
少しして、老齢の騎士が姿を現した。
「ゼスティック爺!」
レイラの顔色がぱぁっと変わる。
「レイラ様、この爺やで良ければ憂さ晴らしの相手になりましょう」
「うん、爺やなら本気になっても安心だもの!」
「ほっほっほ、照れますな」
そう言って二人は外へ出て行った。
「2時間もすれば帰って来るだろう、1時間ほど私達も休憩だ、食事にしよう」
そう言ってエドモンには普通の食事、レイオスには溶岩などが提供された。
「……」
「どうしたレイオス」
「アイリスとの食事が恋しい!」
レイオスは嘆きを口にした、妻との、アイリスとの食事がそれほど恋しかったのだ。
「すまないが、今は効率を重視した、許せ」
アディスの言葉に、レイオスは、はぁとため息をついて溶岩をすすった。
一ヶ月を半月が経過しました。
大分時間が経過していましたが、レイオス様はまだ迎えに来ません。
「何か今までの書類整理とかも含めてすげぇ手間取っているみたいだよ」
侯爵様はそうおっしゃいました。
その間も私は成長を続け、髪も伸び、胸のサイズも少し増え、侯爵様とスノウさんのご厚意で新しいドレスを作り着せて貰いました。
スノウさんと部屋を散歩しながらぼんやりとしていました。
「アイリスさん、やはり心配?」
「はい、だって一ヶ月と半月も会っていないのですもの。それに……」
「綺麗な亜麻色の髪も大分伸びましたものね、ドレスも新しいものになりましたし」
「スノウさんと侯爵様には頭が上がらないです」
「気にしなくて良いのよ、だって私と貴方は親友でしょう?」
「親友……」
「いやだったかしら?」
スノウさんは首をかしげました、私は慌てて首を横に振ります。
「い、いえ。まさかそう呼ばれるとは……嬉しくて驚いてしまいました」
「本当? ふふ、嬉しいわ」
スノウさんは品の良い微笑みを浮かべて私の手を握りました。
「アイリスちゃん、吉報だ」
「え」
何かあったのでしょうか?
「レイオスが帰って来る、全部終わったらしい」
「本当ですか⁈」
私は思わず声を上げてしまう。
「本当本当、だから──」
「──邪魔だ」
「ぎゃ!」
侯爵様が踏み倒されます。
そして部屋にレイオス様が入って来て私に抱きつこうとしたので、スノウさんが離れました。
「アイリス……!」
「レイオス様……」
久しぶりにその腕の中に抱かれ、暖かさに心地よさを感じます。
「あ、あの、侯爵様は?」
「邪魔だったから踏んだ」
「「レイオス様⁇」」
スノウさんと、私の声が合わさります。
「……マリオン、すまん」
少し不満そうでしたが、レイオス様は謝罪をなさりました。
「いでで……いいよ、一ヶ月半も奥さんと会えないのは辛かっただろうしな」
「助かる……それにしてもアイリス、そのドレスは?」
見慣れないドレスを指刺します。
「ここに来てアイリスさんのドレスのサイズが合わなくなったので新しく作らせていただきました」
「スノウ夫人、感謝を」
レイオス様は頭を下げて感謝を伝えておりました。
「では、帰りましょう、レイオス様」
「ああ、そうだな」
レイオス様がそう言うと、侍女の方々が私の荷物をまとめるのを手伝ってくださり、私は馬車にレイオス様と乗って帰りました。
そして久しぶりの我が家に帰ることができました。
使い魔さん達はぴょんぴょんとはねて喜んでいる用でした。
「さっそくだが、食事にしよう」
「はいレイオス様」
同じ食事を友に味わいます。
レイオス様は量が多いですが「君との同じ食事ほど楽しいものは無い」とおっしゃっていました。
私もレイオス様との食事が楽しくて仕方なかったです。
そして、久しぶりに一人の夜から、一緒に寝る夜が訪れました。
レイオス様の温かい体のぬくもりを感じながら、私は眠りに落ちました。
翌日、ドレスのお礼として侯爵様とスノウさんに何をお渡ししようかと放しているとチャイムがなりました。
「何方でしょう?」
「知らない魔力だ……」
「私が出ますね」
「ああ」
私は玄関に行き、扉を開けます。
「初めまして、アイリス伯爵夫人」
「は、初めまして。あの、何方でしょうか?」
「これはこれは失礼、私はリーゼン。爵位は伯爵。ルズ元子爵の領地を統治をするように国王陛下から依頼されたものです」
「……」
私は警戒します。
何故、今頃?
「あ、アイリス。さ、さがって」
「これはこれは、英雄伯爵様。人見知りが激しいと聞いていたが、噂は本当でしたか」
「な、何の用だ」
レイオス様は私を庇いながら言います。
「いえ、私は──」
リーゼン伯爵様は、私を見ます。
「アイリス夫人にお礼を言いたくてここまで来たのです」
「お礼?」
一体何のことなのだろうと、私は悩みながら、私達に会釈をするリーゼン伯爵様を見ていました──