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第47話:罪人に相応しい罰



「本当、嫌な事件になったわ」

 屋敷に来訪なさっていた王妃様が盛大にため息をつかれました。

「王妃様、あの、こう頻繁に来訪なされて宜しいので?」

 私はそれが心配でした。

「レイオスの屋敷ならいいってアディスが」

「アディスめ……」

 レイオス様が凄く嫌そうに呟いています。

 まぁ、王妃様に何かあったら自分の責任になるから嫌なのでしょうけど。

 と、私は思いました。


「何が嫌な事件になったのだ」

「ルイーズが嫌がらせで作っていた映像はあれだけじゃ無かったのよ、他の令嬢の映像もわんさか出て来たのよ」

「わぁ」

 思わず行ってしまいました。

「何件だ?」

「五十」

「それはやになるな」

「ルイーズが結婚式に招待されたときに流してやろうとしていた動画だから全部未遂でおわったけど、娘の監督がダメなのと、反省の色は見られないだろうとして無期限の禁固刑から死刑、親は爵位没収、ルイーズが悪いことをしていると訴えていた長男に子爵の称号を与えた。長男家族が爵位おちた家を継ぐけど、親には援助しちゃダメって言っているの」

「な、何かごちゃごちゃしていますね」

「私もそう思うわ」

 私が思わず言ってしまった言葉に王妃様は同意なされた。

「取りあえず、ルイーズが死刑になったのだろう」

「まだ、明後日刑の執行日」

「……何であんな事をしたのでしょう?」

 私は思わず呟いた。

「聞いた話だと自分がされたからだってさ」

「え?」

「ルイーズは性格が悪くて同じ学校にいた女子生徒をいじめていたりしたそうなのよ」

「なるほど……」

「男子生徒も気に入らなきゃいじめていた、その被害にあった方達がルイーズの婚約の日に、貯めに貯めていた証拠をぶちまけてせっかくの良縁だったのに、ルイーズの婚約は破棄。しかも原因はルイーズ側だから賠償金とられるし、いじめていた側も証拠を元に賠償金をとった」

「……」

 それは、そうなるでしょうねと思いました。

 私は母の元で勉強していたのですが、学校に行っていたらどうなっていたのでしょうか?

 ……いえ、学校に行きたい訳ではありません。

 もし今行きたいなんて我が儘を言えばレイオス様を困らせてしまいますし。

「まぁ、そういうこともあってルイーズには悪評がつきまくった、でも全部が事実だったから、彼女の元に来る釣書はルイーズ的にはお眼鏡にかなうものが一個も無かったか、そんな時に、結婚したアイリスちゃんの事を聞いて調べて、アイリスちゃんが伯父であるアルフォンス子爵のところに行ったときに変装して姿を見て、それを変化してあんなことしたみたいよ」

「なんですそれは?」

「『自分はこんな目にあっているのに、たかが人風情が英雄伯爵と名高いレイオス様と結婚するなんて調子に乗っている!』って」

「……」

 レイオス様の炎が赤くなっています。

 いつもよりも紅く、紅く。


 分かります。

 とても、怒っていらっしゃいます。

 今の王妃様が言ったルイーズの発言に。


「私が処刑致しましょうか?」

「⁈」


 丁寧な口調になっています‼

 ガチギレです、絶対!


「貴方が処刑したら、生きたまま燃やすでしょう、みんな嘔吐しちゃうからギロチンでずぱっとやるわよ」

「ああ、そうか」

「でも、殺しておしまいはどうかと思います、それだけの事をしたのに死んで終わりだなんて……被害者が報われないのでは」

 思わず言ってしまった。

 私なんかが意見をするなんてだめじゃない!


「……言われてみたらそうよね」

「え?」

「ちょっとアディス達ともう一度討論するわ」

 そう言って王妃様はお帰りになりました。

「あの……」

「まぁ、生きて苦しむなど魔族にはもっとも屈辱的だろう。人もだが」

「わ、私余計な事言ってしまったでしょうか?」

「いいや、君は良いことを言った」

 レイオス様は炎を黒くして微笑まれました。


「君を侮辱した者に死んで償わせるなど簡単な罪にならなくしたことだ」


「……」

 なんか、私不味いこと言っちゃった見たいです。





 そして次の日、また王妃様がいらっしゃいました。

「はぁい! アディス達と話をして最底辺の娼館で死ぬまで働く事になったわ! その時稼いだお金は全部賠償金にあてられる事になったわ!」

「うわぁ」

 思わず声が出ました。

 えげつない空です。

「魔法封じの腕輪と逃亡防止の首輪着用で、外せないようにしておくことになったの!」

「関係者の男達が面白半分で指名しそうだな」

「そうねー」

「あの、レイオス様は行きませんよね?」

 腕を掴んで不安げに私はレイオス様を見ます。

 レイオス様は微笑みました。

「行かないとも」

「アイリスちゃん、そこら辺は大丈夫。何せレイオスこの百年の間娼館にも行かなきゃ娯楽施設にも行かない筋金入りの引きこもりだったから」

「レイラ‼」

 レイオス様が怒りました。

「何よぉ、事実でしょう?」

「君は一言余計なのだ!」

 多分ひきこもりの所に怒っていらっしゃるのでしょう。

「レイオス様」

 怒っていらっしゃる、レイオス様を宥めるように声をかけます。

「娯楽施設も娼館も興味が無くて嬉しいです。ですが、二人で色んなものを見ましょう、これからは」

「──ああ、そうだね。アイリス」

 レイオス様は私を抱きしめてくださいました。


「レイオスは本当、アイリスちゃんに甘いんだから、過保護とも言うけど」

「何か問題でも」

「ううん、じゃあ私は帰るわね」

 王妃様はそう言ってお帰りになりました。


 私達は室内庭園をゆっくり眺めその日を過ごすことにしました。





「何で、何で私がそんなことをしなきゃならないのよ!」

 ルイーズを護送馬車に乗せながらゼスティックが言う。

「死刑からそれでは軽すぎるという意見が多数でたのだ、貴様は生涯をかけてそれを償わねばならぬ」

「なんで、なんで私だけぇ! 他にも同じ事をしている奴はいっぱいいるのに!」

「ならば、答えて貰おうか、そのいるもの達を」

「そ、それは……」

 ゼスティックはルイーズの指の骨を折った。

「ぎゃあああああ!」

「答えぬなら、全部の指を折っていくぞ」

「ごめんなさい、ごめんなざい! 嘘です! 知りません!」

「余計な事を言わねばよいものを、つくまで貴様は黙れ」

「──⁈」

 ゼスティックはルイーズの声を一時的に封じた。

「さぁ、行くぞ」

「──‼ ──‼」

 何か罵倒するような言葉を喋ろうとしているルイーズを無視して護送馬車は走り出す。


 そして国有の罪人が働く最底辺の娼館の主に引き渡され、声を取り戻したルイーズは叫ぶ。

「放して! 放してよぉ‼」

「貴様は死ぬまで此処で働き賠償金を払い続けるのだ」

「いやぁ!」

「さぁ来い!」

 館の主に引きずられ、連れて行かれたルイーズを見ると、ゼスティックは馬車に乗り込みその場を後にした。


 こうして、一人の罪人が裁かれ、罰を受けることになった──




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