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第40話 アリシア、ラダリィと目が合う?

「ナタヌのスカート狙うのは危ない……。やっぱり脳筋プリーストだから暴力的だ……」


 また急に蹴られたりしたらたまらない……。

 となると――。


≪本命のラダリィさんですね≫


 うむ……。

 透明ポーションの効果をちゃんと確かめられていないのが若干の不安要素ではあるわけだけど……。


≪さきほどナタヌさんに蹴られても、それがアリシアだとはバレなかったでしょう? 透明ポーションの効果はちゃんと発揮されています≫


 んー、まあ、そう言われればそうなのかな?

 透明ポーションの効果さえばっちりなら、わたしが犯人だとは気づかれまい! じゃあ、いよいよラダリィのメイド服のスカートを豪快にめくりあげてやりますか!


≪行っちゃいましょう! ほら、見てください。チャンスですよ。スークル様と立ち話をされています。今なら一気にめくりあげられるのではないでしょうか!≫


 おお、たしかに!

 イメージトレーニングだ!

 背後に回り込んでしゃがみ込み、肩幅よりも広めに手を広げて裾に手をかける。それから一気に……こうだ!


 よし、この作戦ならいける!


「透明ポーションカモーン!」


≪何が出るかな。何が出るかな。はい、出ました! ゴーヤ味です!≫


 またですかぁー?

 ホントにちゃんとランダムなの?


≪私を何だと思っているんですか? ロボはいつでも公平です≫


 ちょっと信用できないなー。

 ちなみにどういうふうにランダムになっているの?


≪目をつぶって袋の中に手を入れてつかみ取ったものを出しています≫


 ふーん?

 その袋ってどんなもの? ちょっと見せてよ。


≪サーチされると困るので見せられません≫


 えー、ケチケチしないで見せてよ!

 どうせわたしが直接引くことなんてないんだし。


≪いけない! 立ち話が終わってしまいそうです! このチャンスを逃したら、一生ラダリィさんのスカートをめくれないかもしれませんよ!≫


 ん、それは困る!

 仕方ない、ゴーヤ味の透明ポーションを飲むしか……。


≪2杯連続で飲むと――≫


 はいはい、一生透明のままなんでしょ。わかってますって。じゃあゴーヤ味じゃないやつに変えて!


≪それでは次に取り出した味と混ぜるということで≫


 それ大丈夫なの……。


≪出ました。キュウリ味です≫


 ゴーヤ&キュウリ……。イチゴを混ぜるよりはマシか……。


≪混ぜて半分ずつに分けて、はい、どうぞ≫


 色は……緑のまま……だね。覚悟を決めて一気飲みだ! ええい、まずい! もう1杯!


≪残り60秒≫


 よし、無駄な時間は1秒も過ごせない!


≪レッツゴー!≫


 ゴー!



「それで私がジャッジ役を買って出たわけです」


『それは助かるよ。アリシアもそういう調整役がいたほうが、逆に大胆に行動できるだろう』


 よしよし、まだ2人の立ち話は終わっていないね。それにしても何の話だろう?


「ええ、私もそう思います。ある程度のルールという囲いがあったほうが、アリシアは自分を出せるようなのです。何もないと逆に委縮してしまっているのが見えましたから」


『よく見てくれているな。これならオレがついていなくても大丈夫そうだ』


「ですがアリシアが本気で暴走したら、私には止める術はありません。止められるとしたらエヴァ様だけですが、もともとアリシアの作ったロボットですし、協力してくれるかどうか……」


『いざそうなった時には、オレが出ていくことにするよ。安心しなさい』


「スークル様、お気遣いいただきありがとうございます」


 なんかトラブルメーカーみたいな扱いされているような気がする……。

 本気で暴走って、それこそエヴァ……。


≪エヴァシリーズは完成しています。暴走などありえません≫


 はいはい。


≪残り20秒≫


 あー! つい会話に聞き入ってしまったぁ!

 よし、わたしはやるぞぉぉぉぉぉ!


 背後に回って……。


 ラダリィの後ろにしゃがむ。


 裾に手を――。


「なんですか?」


 えっ?


「アリシアはそこで何をしているんですか?」


 えっ?


「わたしのことが見えて……?」


「見えるも何も? いったい何ですか?」


 え、エヴァちゃん⁉


≪残り10秒。透明ポーションの効果は有効です≫


 でもバッチリ目が合っていて、会話が成立しているんですけど……?


≪残り5秒。一度その場を離脱してください≫


 ラジャー!


「じゃ、じゃあそういうことでー。しっつれいしましたーーー!」


「はぁ……?」


 愛想笑いを浮かべながら全力ダッシュで離脱!


「ちょっとエヴァちゃん! どうなっているのさ⁉」


 今、ラダリィからは完全に見えていたでしょ!


≪そんなはずはありません。透明ポーションの効果は有効でした。完璧に時間内でした≫


 でも目もあったし、「アリシア」って名前呼ばれたし!


≪おかしいですね……≫


 おかしいね……。


≪やはりスキル外スキル……なのでしょうか≫


 でも『構造把握』では何も見えないんだけど……。

 どこからどう見ても普通の人なのに何でなの⁉ そういえば『ハイディング』は見破ることができる訓練を積んでいるって言ってたけど、透明ポーションは『ハイディング』とは違うし……。


≪スカートをめくっている場合ではありませんね……≫


 そう、ですね……。

 本気で調べてくれる?


≪承知いたしました。しばらくの間、ラダリィさんを超重要観察対象としてマークします≫


 頼みましたよ。

 ラダリィの謎、すべて暴いてやるんだから!


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